第46話

 まだこの辺りにアンデットモンスターの気配がしている気がする。あの霧深い瘴気に隠れ潜んでいるのだろう。


 瘴気が濃いせいで魔力感知の効果も100%の力を発揮しない中で、俺は次の石作りの家の中に入っていく。


 「ォォオオオオ!!!!!!!」


 「ッ!?」


 家の中を家探ししていると石の壁の向こうからゴースト系アンデットモンスターがすり抜けて現れた。


 いきなりの登場で身体がビクッとなるなかで、俺はすぐに目の前まで迫って来ているアンデットモンスターに向けて魔力銃の銃口を向けて引き金を引く。


 聖気の弾丸が銃口から飛び出すと、ゴースト系アンデットモンスターの額を貫いた。


 ゴースト系アンデットモンスターは金切り声に近い絶叫を上げながら浄化されて消滅する。


 その場にはゴースト系アンデットモンスターの落とした魔石が石畳の床をコツンコツンと転がっていく音がするだけだ。


 あの絶叫のせいで家の外ではアンデットモンスターがこちらに向かって来ている気がする。


 俺は目の前に落ちている魔石を聖なる腕輪オルゴーの中に仕舞うと急いで家を出て辺りを警戒した。


 幸いな事にアンデットモンスターの姿は見えないのだが、こちらに向かって来ている様な足音が聞こえて来ていた。


 これは不味い事態だと俺は移動を開始するのだが、どこに向かえば良いのかと悩んでいるとエリーゼが話し掛けて来る。


 『アカメ、そこを右に曲がりなさい。そのまま真っ直ぐに進むのよ!』


 「わ、分かった。とりあえずそうする!」


 なんでそんな事をエリーゼが言ったのかは分からないが、それでも俺はエリーゼの言う通りに走り出した。


 その道中で現れるアンデットモンスターを魔力銃から放たれる聖気の弾丸が頭部や胸部を貫いて倒して進む。


 倒したアンデットモンスターを放置する訳にもいかないせいで、ゴースト系アンデットモンスター以外はそのまま聖なる腕輪オルゴーの中に動かない死体ごと仕舞いながら進んでいると、ようやくエリーゼが言った先にある建物が姿を現した。


 そこは大きな教会だ。かなりの敷地面積を誇っていそうな場所だが、そんな教会は神聖さというものが一切ない場所だ。


 「エリーゼ、ここか?」


 『え、ええ。そうよ。私が思っていたよりも荒廃が進んでいるわ。でも、ここなら瘴気の中でもそれなりの規模の聖なる結界が張れるはずよ。その為の魔導具が何処かにあるはず。だから探しましょう。』


 エリーゼの言う通りならば、この瘴気溢れる交易都市ナバーラでも休める場所が作れるはずだ。


 俺の予定では何度も草原の聖なる結界と交易都市ナバーラを行き来する予定だったのだが、この場所を拠点にする事が出来るのならそれはそれで良いかも知れない。


 迫って来ているアンデットモンスターを始末してから俺は教会の中に入っていく。


 朽ち果てた椅子の残骸と思われる物が石畳の床に埃と一緒に積もっている中を進んでいると、何処からかシスター服を着たアンデットモンスターが現れる。


 スケルトン系、ゾンビ系、ゴースト系と様々なアンデットモンスターが俺に向かって迫るのだが、数も多く魔力銃では間に合わない。


 だからこそ魔力ブレスの手甲を使うことにした。この場で聖気ブレスを使うのは濃い瘴気の影響もあって威力を落としてしまうだろう。


 それでも聖気ブレスを使えば俺に向かって集まって来ていてるアンデットモンスターたちに大きなダメージを与える事が出来る。


 「レベル1しか倒せていないか。」


 身体が崩れていたりしているがスケルトン系とゾンビ系のアンデットモンスターはレベル2でも生き残ってしまっている。


 それほどに瘴気が溢れているこの場所では聖気ブレスの効果が薄いようだ。


 それでも重傷を負っているアンデットモンスターたちに向けて3度の聖気ブレスを浴びせる事でレベル4までのアンデットモンスターたちを一掃することに成功するのだった。

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