第34話

 ログアウト後、俺はびっしょりと汗をかいていたので夕食の冷凍食品を温めている間にシャワーを浴びることにした。


 シャツが肌に張り付くほどに汗をかいた原因はアンデットキマイラ戦が影響していると思う。


 あそこまでの大きな身体を持つ不気味なアンデットキマイラに精神的に緊張してあれほど汗をかいたのだろう。


 そしてシャワーから上がり冷凍食品を食べてお腹いっぱいになると、テレビを横になりながら見ていたエリーゼがこちらを向いて話し掛けてきた。


 『食事も終わったから魔導具作りよ!』


 「良いけど本当に作れるのか?」


 『もちろんよ!アタシに任せなさい!!』


 自信満々に言うエリーゼだが本当に出来るのかどうか疑わしい。


 現実世界ならばエリーゼも聖なる腕輪オルゴーから抜け出せるが、幽霊のエリーゼにそんな魔導具作りなんて出来るのだろうか?


 「それでどうすれば良いんだ?」


 『オルゴーからアンデットキマイラのドロップアイテム2つ。それとショップで買った手甲を出しなさい。』


 言われた通りにアンデットキマイラのドロップアイテムである怨恨の塊を浄化して出来た魔力の塊とアンデットキマイラの魔石(ブレス)、そしてショップで事前に購入していた手甲を聖なる腕輪オルゴーから取り出してテーブルの上に置いていく。


 『次に聖なる結界を張るわ。出した3つを囲む程度の小規模な大きさで良いわ。サポートするからやってみるわよ。』


 「ああ、分かった。」


 エリーゼにも協力して貰いながら内部の魔力を外へと逃がさない様に設定された聖なる結界がテーブルの上の3つのアイテムを囲んで形成される。


 『結界はこれで良いわね。次は魔力の塊を傷付けて魔力を放出させるわ。魔力を手に纏って握れば潰れるはずよ。』


 次に俺はエリーゼの言う通りに手に魔力操作で魔力を動かして纏わせると、魔力を纏わせた手で魔力の塊を握ると簡単に魔力の塊は砕けて魔力に変わっていく。


 聖なる結界の中には魔力の塊が砕けたことで発生した濃密で大量の魔力が渦巻いていているのが魔力感知で分かる。


 『ここまでは順調ね。次はアンデットキマイラの魔石に結界内の魔力を流し込むわ。この時に注意するのは魔石に魔力を流し込み過ぎて破裂させないことよ。でも、魔導具作成はアタシがメインでやるからアカメはアタシの言う通りに動きなさい。』


 「分かったよ、エリーゼ。」


 こう言うのは魔導具を作成するスキルも持っているエリーゼが魔導具作りをした方が性能が良い魔導具が出来上がるのはなんとなく分かるから、俺はエリーゼから言われた通りに行動していく。


 慎重になりながら聖なる結界の中の渦巻く魔力をゆっくりとアンデットキマイラの魔石に流し込む。


 これはエリーゼのサポートありきでなんとかなっているが、こんな繊細な作業は今の俺には出来ないだろう。


 そんな慎重に繊細な作業を時間にして30分経った頃にようやく聖なる結界の中で渦巻いていた魔力をアンデットキマイラの魔石に入れ終わる。


 既にアンデットキマイラの魔石は大量の魔力を注がれたことでいつ爆発を起こしても可笑しくはない状態になっていた。


 『ここからは魔石を手甲に触れさせて魔石の魔力を今度は手甲に移すわ。』


 先ほどよりも繊細な作業で魔石の魔力をゆっくりと手甲に染み込ませるように流し込んでいく。


 そしてようやく出来た魔導具がこれだ。


魔力ブレスの手甲

階級5

保持魔力量24

ミスリルメッキの手甲

階級分だけ魔力を使って前方に魔力ブレスを放てる

【魔力ブレス】


 エリーゼがほぼ作成過程でメインで行なってくれたからこそなのだろう性能だ。


 本来ならもっと良い性能の手甲であれば保持魔力量を増やせたとエリーゼから愚痴を言われてしまったが。


 「これって聖気でもいけると思うか?」


 『聖気も魔力の一種だから問題ないわ。これで範囲攻撃も出来る様になったわね。』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る