第31話
『聖気を感じれば気付くはずよ。変換したらすぐに魔力銃へと向かわせなさい。』
「分かった。いつでも良いぞ。」
エリーゼが聖なる腕輪オルゴーの魔力を使って聖気へと変換すると、俺は急いで魔力銃へと聖気を送っていく。
「ガァアアア!!!!!!」
聖気に反応したアンデットキマイラが咆哮を上げたこちらを見ると、起き上がり走り出して向かってくる。
「速いッ!?」
アンデットキマイラが横になっていた草原から森の境目までの距離は20メートルはあっただろう。
それなのに既にアンデットキマイラは俺に攻撃が行なえる範囲まで接近していた。
目測だがアンデットキマイラは高さ3メートル、体長は5メートルくらいだろう。それなのにこんなに速く移動することが不自然に感じる。
そんなアンデットキマイラが俺に向けて腕を振り上げているのがスローモーションで見えている。
これは走馬燈なのではないかと思うが思考だけで全く身体を動かすことが出来ない。
『アカメ!動きなさい!!』
エリーゼが俺が身に着けていた魔導具の魔力を聖なる腕輪オルゴーに使って聖気に変えると、変換した聖気を使って結界の応用である聖なる障壁を俺とアンデットキマイラの間に作り出した。
ドンッ!!ミシミシミシミシ、ビシッ!!!と聖なる障壁に当たったアンデットキマイラの攻撃に寄って聖なる障壁は軋みをあげてひび割れが出来る。
俺はそれを見ながらエリーゼの叱咤に寄って身体を動かせるようになり、その場から森の中へと逃げながら魔力銃をアンデットキマイラに向けて引き金を引いた。
放たれた聖気の弾丸は真っ直ぐにアンデットキマイラに向かい、アンデットキマイラの濃密な瘴気を削りながら腐った肉体に命中する。
そして聖気の弾丸が破裂してアンデットキマイラの身に纏っていた瘴気が浄化されて、アンデットキマイラの瘴気に寄って隠されていた姿が太陽の下で完全に露わになった。
その全身の腐った皮膚に絶望した人間たちの顔があるのが視界に入ると、あんまりな姿に顔を顰めてしまう。
『次弾の聖気は出来ていますよ!』
エリーゼに言われて聖なる腕輪オルゴーに聖気の力を感じ取り、俺は急いで聖気を魔力銃へと移動させて聖気の弾丸を射出する。
最初の聖気の弾丸を受けても纏っていた濃密な瘴気のせいでダメージは皮膚を少しだけ浄化して焼け爛れたようにしただけだったアンデットキマイラに2発目の聖気の弾丸が命中する寸前にアンデットキマイラの身体に異変が起こる。
アンデットキマイラの身体の一部が膨張して聖気の弾丸が膨張した肉体に命中したのだ。
膨張したアンデットキマイラの肉体は他の部位よりも耐久力が低いのか、肉体の中を貫いて破裂する。
その結果起きた破裂でばら撒かれた聖気はアンデットキマイラの膨張した肉体を浄化するが、アンデットキマイラの本体には浄化の力がそれほど届かずに頭部と胸部の腐った肉体を浄化で消滅させるだけだった。
それでもまだアンデットキマイラは生きており、それどころか頭部や胸部の骨が露出していた部位が腐った肉で覆われていく。
「なっ!?再生までするのか!!?」
『アンデットキマイラは今まで吸収したアンデットの肉体を使って再生や回復に利用してくるわ。でも浄化の力のお陰なのでしょうね。再生速度が遅いわ。』
「あれで遅いのか!?」
目に見える速さで骨を覆う腐った肉の様子に驚愕したが、それ以上にあれが再生が遅い状態なのはもっと驚いてしまう。
それよりも再生をしている時はこのアンデットキマイラは動きを止めている。その間に俺は次弾の聖気の弾丸の準備を行ないながら森の中へと更に移動する。
そして俺が森の中に姿を完全に隠した時には再生を終えたアンデットキマイラが森の木々を破壊しながら移動してくる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます