第30話

 30分ほどの休憩をしていた間に数体のアンデットモンスターが襲って来ることはあったが、レベル1のアンデットモンスターだったお陰で警戒するのに疲れただけで身体を休めることは出来た。


 そして休憩後、俺は森の中を移動して行くことになる。


 「なあ、エリーゼ。この森ってまだ続くのか?」


 『ん〜どうかしら?時もだいぶ経っていて分からないのよ。』


 「そうか。一体どこまで続くんだろうな、この森は。また居た。」


 唸り声を上げながらふらふらと移動して来る人間のゾンビを俺は魔力銃を向けて引き金を引く。


 それだけで頭部を弾けさせてゾンビは地面に倒れて動かなくなるが、はっきり言ってここから次の作業がゾンビ系アンデットモンスターを倒した後の苦行だ。


 顔を顰めるほどの臭いに耐えながら魔石だけを回収して移動を開始する。


 「本当にこの臭いだけは勘弁して欲しいよな。」


 『アタシ、アカメとは嗅覚を共有しなくて本当に良かったって思ってるわ。』


 「味覚は共有するのに嗅覚は共有しないんだよ。お前も味わえ、この苦しみを!」


 『嫌よ!ほら、また次が来たわよ!』


 また進行方向にアンデットモンスターがいた。次のアンデットモンスターはスケルトン系のアンデットモンスターだったのは数以外は良かった。


 最高がレベル2のスケルトンビーストが1体だけだったので簡単に片付いて魔石を回収する。


 スケルトン系アンデットモンスターは倒した後は楽で良い。魔石だけを回収するだけで良いのだから。


 もっと魔力を潤沢に使えるようになればゾンビ系アンデットモンスターから魔石を回収するのも楽になるのにな。


 でもそうなると毎回魔力を聖気に変えるのは大変かも。そんな事を思っているとようやく森の境なのだろう切れ目を発見する。


 「ようやく森から抜け出せる!」


 『待ちなさい!』


 「な、なんだよ?」


 走り出そうとした俺をエリーゼが制止する。俺はその声に走り出しそうな身体を止めてエリーゼがなんで止めたのかを聞いた。


 『魔力感知を2つ分しか使ってないから気付いていないみたいだけど、この先に高レベルのアンデットがいるわ。』


 「エリーゼが止めるほどのアンデットがいるのかよ。」


 あの時に走り出して森の外に出なくて良かったと俺は安堵する。もしエリーゼの制止を振り切っていた場合は、そんなエリーゼが止めないと行けないくらいのアンデットモンスターといきなりの戦闘になっていたのだから。


 「それだと準備が必要だな。魔力用の魔導具を出して置くか。」


 『その方が良いわね。あとはアタシが聖気の準備をするわ。アカメは変換した聖気を使ってこれからは攻撃しなさい。』


 「ああ、そうさせて貰うよ。それと結界の方も頼んで良いか?もし俺に攻撃が命中しそうになったら貼ってくれ。」


 『そうね、分かったわ。』


 それから俺たちは強力なアンデットモンスターと戦う為の準備を行なうと、ゆっくりと木々を壁の代わりにしながら森の境目を目指して移動する。


 そうして時間を掛けてようやく森の境目にたどり着いた俺は森の外に視線を向けた。


 「なんだアイツ?」


 『かなり危険なアンデットよ。周りのアンデットを取り込んで自身の身体にしてしまうアンデットキマイラ。それがアイツの名前よ。しかもレベル5もある。本当に不味い事態よ。』


 ゾンビ系アンデットモンスターで肉を、スケルトン系アンデットモンスターで骨格を作っているのだろう。


 その身体は獣系アンデットモンスターをベースにしているのか身体は獣であるが、その毛のない身体中の皮膚には大量の人間の苦痛や絶望に満ちた表情で埋め尽くされており、時折りその顔から呻き声が発声されているのも気持ち悪い。


 右手に持った魔力銃の銃口を何故かまだこちらに気付いていないアンデットキマイラへと向けて構える。

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