第6話-2
服飾部から解放され、ふらふらと漫画アニメ同好会の部室に辿り着いた
「あっ、
いや誰のせいでこんな目に遭ったと思ってるんだ。
「うん、
一応、
「そうなんだ。結莉ちゃんお人好しだね」
それって悪口じゃないよな? ないんだろうけど、お人好しなことを利用されてるようで引っかかる。
そもそも俺はべつにお人好しではないんだ。
ただ中味33歳おっさんとしての分別で周りに気を遣ってしまうだけなんだ。
ここが高校生らしくはない所なんだと自覚はあるが、だからと言って高校生っぽく振る舞える自信は無い。
普通に難無くこなしてるように見えるかも知れないけど、俺としては『女子』をやってるだけでもう常にキャパオーバーなんだ。
「
席で一息つくや部長が言ってきた。
「ゲームイベント、ですか?」
「東京のビッグサイトで来月あるソシャゲメーカーが集まるイベントなんだって」
瀬戸先輩が補足する。
「そのチケットを姫ちゃんから?」
「うん、事務所の先輩がトークショーに出るから、そのコネで招待チケットを貰ったの。私は事務所の人と行くから皆さん良かったらどうぞ」
「なるほど……」
「ちなみに結莉ちゃんは強制招待だぞ☆」
「それ『招待』じゃないよねっ!?」
「部長さん、結莉ちゃんは私と一緒に金曜の夜から前乗りするから、その分のチケットは他の人にあげてください」
「しかも一緒に前乗りってどう言うことっ!?」
「ホテル代は私が出すから心配しないでいいよ」
「むしろ逆に色々と心配になってきたよ!」
「ふむ、では残りの一枚は誰か心当たりがあれば誘うと言うことで」
部長は正に他人ごととばかりに話を締めてるし。
「せっかく東京に行くなら、イベントの後、色々と見て回りたいですね」
「ああ、そのあたりは瀬戸くんに任せるよ。辻蔵くんも希望があれば瀬戸くんに伝えてくれたまえ」
「は、はい、考えときます」
「ちょっと待ってください! ナチュラルに私をハブってませんか?」
俺だってこの時代の東京で行ってみたい所は色々とあるんだけど?
「でも桜庭くんの予定は霧山くんの意向次第だろ?」
くぅっ……まるで
「くふふっ♪ 結莉ちゃんを私のモノにする外堀が着々と埋まってるね」
「それは思ってても口に出すな!」
◇ ◇ ◇ ◇
部活を終えた
その
最後尾のベンチシートに、
椿姫は
「そう言えば高坂さんに聞いたんだけど、来週の水曜に誕生日なんだって?」
何も知らない
「うん、4月23日生まれ、牡牛座のB型だよ。
あー、椿姫ってやっぱりB型なんだ。
血液型別の性格なんて
「私は9月9日生まれ、乙女座のA型」
「ぼ、僕は1月15日生まれ、山羊座のA型」
「えー、二人ともA型でおそろいなの、ずるーい」
「いやA型は多いから」
日本人の四割はA型だからな。
つか
「てわけで、プレゼントいただきます♪」
「要求するんかい!」
「その日は誕生パーティーするから結莉ちゃんは強制参加ね」
「そしてまたそれかい!」
まぁ、さすがにそれに航は呼ばないか。
と言うか、コスプレを披露することになってる
「て言うか、面倒なんでもうズバリ聞いちゃうけど、椿姫はプレゼントって何が欲しいの?」
「結莉ちゃん」
「て言うか、面倒なんでもうズバリ聞いちゃうけど、椿姫はプレゼントって何が欲しいの?」
「時を戻した!?」
当たり前だ。そんなお約束のボケに一々付き合ってられるか。
「んー、私のことを思って買ってくれた物ならなんでも嬉しいけど」
「じゃあスーパーで
「結莉ちゃん、私で沢庵が浮かぶの、さすがにどうかと思うよ……。辻蔵くんは真似しないでね」
「あ、う、うん」
椿姫にため息まじりに返されてしまった。
ん? でも、さりげなく航にもプレゼントを要求してる? ……それって大丈夫なのか?
そんな一抹の不安をよそにバスは駅に着き、
◇ ◇ ◇ ◇
“桜庭さん 今 ちょっと通話いい?”
珍しく? いや初めてか? 航からLINEが来たので、“いいよ”と返した。
そして数秒後、着信。
『桜庭さん、夜にごめん』
「ううん、全然ー。で、何?」
『あれ? なんか声が反響してる?』
「うん、今、お風呂に入ってるから」
『わあぁっ! ご、ごめんっ!』
「ううん、バスタブに浸かってるから全然大丈夫ー。で?」
ちょうど風呂でSNSを見てた時だったからな。
あっ、一応明言しとくけど、もう毎日はしてないぞ?
生理が明けて数日経ってもうすっかり『賢者モード』になったからな。
いや、そんなことはどうでもよくて!
『じ、実は、霧山さんへのプレゼントなんだけど、何を買ったらいいか全然わからなくて……』
「それで相談に乗って欲しいってこと?」
「う、うん……」
うん、わかる。だって
当時の
だったら……。
「じゃあ今週末、一緒に買いに行かない? 私も買うし」
『えっ? い、いいの?』
「よくない理由、無くない?」
むしろ何がマズいんだ?
一緒に居るところを誰かに見られて噂されたら恥ずかしいとか?
おいおい、こんな美少女と噂されて恥ずかしいわけないだろ。むしろ誇れ。いや冗談だけど。
とにかく
『じゃ、じゃあ、よろしくお願いします……』
「はいはーい。んじゃ、またねー」
こうして航との通話は終わり、週末の約束をしたのだった。
◇ ◇ ◇ ◇
それからの数日、
ただし、放課後だと椿姫に怪しまれるので昼休みにだ。
内緒にしときたいのはわかるけど、多分椿姫にはバレバレだとは思うけどな……。
まぁ、どっちにしろ
そんな日々を送り、遂に土曜日、航との買い物デーになった。
今日の
下はキュロットパンツにするか悩んだけど、スカートに慣れていかないとなってことで。
あと、4月下旬にしては暖かい日和だったので、ストッキングとかは穿いてない。生足だ。
まぁ、無難なところだな。
ただ、セーターが気持ちスリムフィットタイプだったので、なんて言うか、こう、デカ
とは言え、もう待ち合わせの駅前まで出て来てしまったので今さら心配しても遅い。
心配したら乳が
「桜庭さん、ごめん! お待たせ!」
航が
とは言えまだ約束の時間前なんだけどな。
おっさん時代のクセで遅くても10分前には待ち合わせ場所に着いてないと落ち着かない
「じゃ、じゃあ、今日はよろしく──」
「待って」
「えっ?」
「せっかくだし、今日は辻蔵くんの初デートってシチュで予行演習してみない?」
「えぇっ!? そ、そんな、
いやいや、同じ高校生のクラスメイトにそれは無いだろ。
俺の意図としては、地道に少しずつでも航には女子に慣れて欲しいんだ。
せっかく俺が
「と言うわけで、はい、まずは相手の服を褒める」
「えっ、あっ、えーと……さ、桜庭さん、スタイル、いいね」
「それ、人によってはセクハラだから」
「あぁっ! ご、ごめんなさいっ!」
服を褒めろと言ったのに、さては
「はい、やり直して」
「そ、そのセーターの色、す、す、すてきだね」
「ま、及第点か」
「じゃ、行こっか。辻蔵くん、エスコートよろしく」
「えぇっ!? そんなこといきなり言われても……」
「私が相手なんだし失敗なんて恐れず、とりあえずやってみなよ。私は辻蔵くんのこと馬鹿にしたりしないから」
「わ、わかった。い、行こう」
こうして
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