第5話-3
何かと言うと駅前だなって言わないでくれ。
地方で、車を運転出来ない中高生が遊びに出る所なんて駅前くらいしか無いんだ。
さてそんなわけで今回のメンバーは、
美香って誰とでもすぐ仲良くなれる資質があるからな。
そのお陰で
ちなみに
「
「ちぃーっす」
最初に着いて待っていた
寧音は膝上丈のショートパンツにTシャツとスポーツブランドのジャージと言う、如何にも体育会系と言った感じの見た目だが、そのスポーティーさがショートカットの髪と合ってて可愛い。
ちなみに今日の
カテゴリー的には膝が完全に出てる時点でミニスカートらしいんだけど、これはミニって感じではないかな。
クローゼットを見たらもう如何にも「ミニ!」ってのもあったけど、それはちょっとまだ穿く勇気が無いし、そもそもまだ穿く季節でもないだろう。
まぁ、年中ミニの女性もいるけどさ。
そう言えばスカートなんだけど、やり直し初日でいきなり制服を着させられての日々が続いたので「スースーして
慣れたらむしろ楽で良いかも知れないとすら思った。
でも、最初の体育の授業で少数派のパンツだけ組だと気づいて以降は黒いショートパンツも重ねて穿くようにしてるけど、これ夏になったらどうするんだろ? 直に穿くのか? それとも生パン?
なんか面倒臭いな。
だからって「パンツくらい見られてもいいよ」って思考には
恥ずかしいと言うよりは、なんか勿体無いと言うか、
いや、金貰っても見せないけどね。
「
二人で待ってるといきなり寧音が聞いてきた。
「え? ううん、演劇部(って設定)だけど、どうして?」
背も低いし、どうしてそんなこと思ったんだろ?
そもそも
「ムッチリしたフトモモしてるから」
そもそもこのフトモモ、運動で作られた筋肉じゃないから。
ただのムチムチ脂肪だから。
つかこの体、幸いにも腹周りはキュッとしてるけど、それ以外は全身ムチムチぷにぷにだから!
「お待たせー」
そこで美香と綾乃が揃って到着。
「じゃ、行こっか」
今日の目的は夏物衣服の物色だ。
あくまでも物色。
すごく欲しいのがあったら買うかも、程度の軽さ。
とりあえず
◇ ◇ ◇ ◇
女性の買い物に付き合わされたことがある人ならわかってくれると思うけど、男から見ると非効率的だ。
男みたいに「○○を買いに来たぞ。見つけたから買うぞ。はい終わり」なんてことはなくて「それさっきも見たでしょ」ってのに戻ることも度々だ。
しかも買い物よりも見て回る方をメインとなればなおのことだけど、勿論それを責めるつもりは全く無い。
俺は男の心として「それはそう言うものだから仕方ない」と思いつつも、女として生きていくための修行として文句を言わず不機嫌な顔もせずに付き合っていた。
とは言え全然楽しくないと言うこともなく、それなりに楽しんでもいたけど、やっぱり現役女子高生とおっさんとの世代の差は感じてしまう。
「あっ、水着も出始めてるね」
「本格的に出るのは来月からでしょ」
そう言って水着を見に行く美香と綾乃。
展示スペース自体が手狭だったのもあって、
「あたしも今年は遊ぶ用の水着買おっかなー。今まではスク水だったけど」
「うん、高校生としてそれは許されないと思うよ」
寧音につっこむ
むしろ中学生でもあまり許されはしないと思うが。
「んー、でもどんなの買お。
とは言え夏を迎えるにあたり
それとは別に学校の水泳の授業もあるし。
まぁ、スク水はみんな同じ物を着るんだしそこはいいんだけど、それよりも、はたして
これは水泳の授業が始まる前に確認しておいた方が良さそうだな……。
「まだ大人向けのばっかで、いい感じの無かったー」
「海水浴用のではなかったよね。ホテルのプール用って感じで」
そう言いながら戻って来た美香と綾乃。
女子高生ももう大人だとは思うけど、言わんとすることはわかる。
水遊びと言うよりは魅せる用ってことだな。
それにしても
電車で連れ立って行くのか? それ結構大変だろ? どうするんだろ?
そもそも海水浴なんて親に連れられてでも小学生くらいまでしか行ったこと無い俺にはわからない。
勿論、高校時代に行ったことなんて無いし、前回でも会社の同僚に貴重な休日を潰されて無理矢理付き合わされた挙句に浜辺で貝とか焼いて食った程度の思い出しか無いぞ。
とは言え、それを今聞く空気ではないので
◇ ◇ ◇ ◇
駅ビルを出て、駅前の別のファッションビルに移った
「……ん?」
そこで
まさか、あいつは……。
「あれ?
綾乃が、エスカレーターを上がって行く小津に気づいて言った。
「ここって男性向けのショップあったっけ?」
「ひゃ、100円ショップに用とかじゃない?」
「なるほど」
美香に
そう、このビルにはアニメグッズ系の店が入っていたのだ。
小津のやつ、高校デビューのガードが甘過ぎるだろ……。
そこで買い物を終えた小津と遭遇しなかっただけ最悪の事態は避けられたけどさ。
美香たちはそれきりで小津のことなど秒で忘れたかのように再び自分たちの興味の赴くままに店内散策を開始する中、
そんな
運が良かったな小津。
て言うか
だったら、この分の元は取らせて貰わないとな……。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日の月曜日。
生理も先週で終わり完全復活した
積極的に美香以外の女子の輪にも入って行ってとりあえず話して友好度を上げる。
ただ女子同士は早くも微妙に
幸いにも『美香グループ』と例えはしたけど美香自身にそう言う意識が希薄なのか他のクラスメイト女子たちとも普通に絡みまくっているので、そのおこぼれにあずかっていくと言う姑息な作戦ではあるんだけど。
ただしそれはすぐ綾乃には見抜かれて「そんなに頑張らなくても大丈夫だから」と言われてしまった。
もっとも、続けて「
美香も綾乃もこんなにイイヤツだなんて前回は気づきもしなかったし、初日にその二人から声をかけてもらえたことはどえらい幸運だったのかも知れないな。
さて、それはそれとして俺は昨日の『貸し』を回収しなくてはならない。
タイミングを見計らっていた
「ねぇ、小津くん」
「え? 桜庭さん?」
「昨日、アニ
「!!」
勿論そこまで追いかけてはいない。ちょっとカマかけてみただけだ。
さぁ、どう誤魔化してくれる?
「そ、そうなんだ。だ、だったら声をかけてくれれば、よかったのに……」
アニメ的に例えると汗をダラダラ流してるような表情で小津はなんとかそう絞り出した。
「なんか真剣に探してる感じだったから悪いかなって」
「い、いや、面白いって教えて貰った漫画が書店には置いて無くて、あそこだったらあるかなって……」
「そうだったんだ」
「う、うん、そうだから……」
そうだから? 自分はオタクではないと言いたかったけど言い切れなかった感じか?
もしかしてこいつ根が良くて嘘が吐けないタイプか? そんなんでよく高校デビューしようと思ったな。
「じゃあ次からは私や
「そ、そっか。じゃあ次からはそうするかもね……、そ、それじゃ……」
小津はもう限界とばかりに胸に手を当てつつフラフラとその場を去って行った。
地道な種蒔き、上手くいくといいな。
さて用は済んだし教室に戻りますかと
「えーと、ノリちゃんだっけ?」
「そうですけど、ノリちゃん呼びはやめてください。
そこにいたのは
「あっ、ごめんなさい。姫ちゃんがそう呼んでたから、つい」
「やっぱりノリちゃん呼びでもいいです」
意味がわからんっ!!
「……で、何かな?」
「今ここでと言うわけではなく、貴女にお願いしたいことがあるので放課後に時間をもらえればと」
「い、いいけど……」
これってまさか呼び出しってやつ!? いきなり怖いんですけどっ!?
何? 絶対これ椿姫絡みだよね?
この週末に一体何があったんだっ!?
【第5話 終わり】
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