第1話-4

 部活を美香たちと見て回り、俺はお昼過ぎに帰宅した。

 さすがにいきなりお昼ご飯食べて帰ろうとはならなくて、ホッとしたやら残念やら。

 ちなみに部活は、結局どこにするかは決まらなかった。

 軽率に決めて失敗するのも嫌だしな。


 さて、帰宅して早速俺は、机の引き出しをあさり……。


「あった!」


 2mまで計れるメジャーを見つけ、早速気になってた身長を測る。


「……ひゃく……150!? やっぱり低めだった!」


 結莉おれの身長が気持ち低めなのは美香たちと一緒に部活巡りをしている時にも感じていた。

 美香や綾乃は、決して背が高くは見えないのに、結莉おれは、その二人より一段、少なくても5、6センチは低かったからだ。


 結果、150か。

 まぁ、確かに低めではあるが、顔立ちが大人びてる分、そういう印象は持たれづらいかも知れない。

 それにほら、まだ成長期だし…………でも乳はこれ以上育たなくていいからな?

 おっと、そうか。現状把握は必要だし、バストサイズも測って……。


「いや、それはブラを見ればわかるだろ」


 すぐ気づいて俺はクローゼットからブラを取りだした。

 自分のバストを測るのって地味に面倒臭そうだし、助かった。


「うわ、ブラでっか……えーと、サイズは……」


 ホック付近にしまわれてたタグを引き出して見る。


「……G60?」


「G60っ!?」


「Gカップっ!?」


 思わず連呼してしまった。


 えーと、G60ってことは……バスト85くらいか?


「もう結莉おまえグラビアアイドルになっちゃえよっ!」


 勿論冗談だけど、選択肢の一つとして持ってはおこう。

 いやしかし、おそれいりました。

 神様は何を考えて、なんちゅー体を俺に与えてくれたんだ……。

 とりあえずこのブラはしまって……。


「あっ、そうか」


 今日ブラしないで入学式に行ったことが親にバレたら、ちょっとマズいな。

 着けてはいないけどこれは洗濯に出しておかないと。


 と、そこで俺はひらめいた。

 むしろ、正に今がブラ着け練習する時なのでは? と。


 俺は早速スマホで『ブラの着け方』の動画を検索する。


「えーと……いや、盛りとかはいいから……なるほど……いけそうだな」


 一通り動画を見たら、いよいよ実践だ。


 制服のスカートを脱ぎ、Yシャツも脱ぎ、そして、タンクトップに手をかける。


「15歳など所詮は俺の半分も生きてないお子さまに過ぎない」


「ならば、恥じらう必要も躊躇ためらう必要も無し!」


「勿論、よこしまな気持ちも無し!」


「いくぞ、おりゃっ!」


 俺は勢いよくタンクトップをめくり上げた。

 結果、ぶるんっと勢いよく弾む乳。

 俺は思わず鎖骨の下辺りに手を当てる。


「いててっ……なんかここら辺が引っ張られた……これが、巨乳の受難か……」


 なんだっけ、これ?

 確か『クーパー靭帯』とか言うヤツだっけ?


 て言うか、勢いつけて脱ぐ必要は無かったよな?

 反省。今後は乳をいたわりながら脱ごう。


 反省した後、俺は改めてパンツ一枚の姿で全身鏡スタンドミラーに向き合う。


「改めまして、でっか!」


 中味は33歳おっさんだし、付き合ってた彼女だっていたしで、生乳なまちちなんて珍しくはないけど、こんなデカい生乳なまちちは見たこと無かったよ!

 しかも、これでまだ高一なんだぜ……。


「いや、それは置いといて!」


 結莉じぶんの乳に見入って本来の目的を忘れるところだったと反省して、俺は動画を反芻しつつ見返しつつで、ブラと悪戦苦闘したのだった……。



 ◇   ◇   ◇   ◇



 さて、なんとか無事にブラも着け、反復練習もして装着タイムも縮め、部屋の色々な所を漁って結莉おれの設定のヒントも集め、をやっていて気づいたら夕方になっていた。


 そして夕飯も済ませ、一息ついた後、俺は今、浴室バスルーム内にいた。


 完全な全裸状態すっぽんぽんになるのはこれが初めてだけど、もはや、だから何? としか思わない。

 繰り返すが俺は33歳のおっさんだ。

 美少女の全裸程度で動揺するわけなどない!

 ……と言いつつ、もう5分くらい浴室の鏡に映った全裸姿を凝視していた。


 いや、「乳でっか」はもう言い飽きたけど、腰がまたキュッとしてて細いのよ。

 なのに尻は結構大きそうで……これは後で測らないとだな。

 バストしか気にしてなかったのは盲点だった。


 とは言え、いい加減、結莉おれ鑑賞会は終わりにして、お湯に入ろう。


「となると、お次はいよいよ巨乳お約束の……」


 ゆっくりと、勿体付けるようにバスタブに身を沈め、そして──


「おぉっ! 本当に乳が浮いてる! 肩が軽い! もう一生風呂に入っていたい!」


 たかが一日で大袈裟なと思うかも知れないが、徐々に育って来た結果こうなったのならともかく、いきなりこんなもん付けられた日にゃ、そう思うのも仕方なかろう?


「ふぃー……」


 俺はずぶずぶと口元まで体を沈める。

 ちなみに乳は湯面にこそ出ていないが、お湯の中でしっかり浮いたままの無重力状態だ。


「……それにしても、文化系を見て回っただけでも結構大変だったな……」


 美香も綾乃も運動系に入るつもりは無いそうで、結果そうなったんだけど。

 美香なんて活発系だからてっきり運動系だと思ったんだけどな。

 綾乃もキャラ的には弓道部とか似合いそうな感じではある。


「なんにしろ女子高生のパワフルさに付き合うのは、この中味おじさんには、ちょっとキツいよ~」


 いや、そんな弱音を吐いてる場合じゃないんだけどな。


「……そういえば、結局あの後、おれはゲーム部に入ったのか?」


 背中を軽く押しはしたけど、あくまでも軽くだったので、どうなったかはわからない。


「とは言え、これ以上、おれに干渉するのも、よくない気が……」


 口を湯面に沈めてぶくぶくと泡を吐く結莉おれ


「……いや待て」


 暫く後に再び口を出して、そうつぶやいた。


「俺はもう開き直って『桜庭さくらば結莉ゆいり』としての人生をやり直すしかないけど、それはそれとして、過去の俺の人生だって多少は良くしてやりたくはないか? だって俺なんだし」


 前回の俺みたいな人生をあいつになぞらせたくはない。

 そこそこの大学に入って卒業して無難な会社に就職して、何度か転職した末にブラック企業で命をすり潰されるような人生だけは、なぞらせたくない。


「……よし!」


 俺はバスタブ内で正座した。

 お湯から上半身は出てる状態なのでデカ乳の重力が復活したが、それに構わずこぶしをグッと握って宣言する。


「やってみるか! 『辻蔵航おれ育成計画』っ!!」


 まぁ、具体的なことはこれから考えるとして、とりあえずは意気込みだけ。


「もういっそのこと、おれのカノジョになってあげちゃうとかぁ?」


 こんなデカパイ美少女に迫られておれが落ちないわけがない。


「って、いや、無いわ。おれには悪いけど、それは無い。つか、男と付き合うこと自体、無いわ」


 想像しただけで悪寒が走ってしまった。


 いや、将来的に俺の心が万一女性寄りにでもなったら、そういうことになるかも知れないけど、少なくとも現時点では絶対に無い!

 かと言って女子と付き合いたいと言うわけでもないんだけど、まぁ、とにかく色気づくにはまだ早いってことで……。


「ふぇくちっ!」


 上半身だけ湯船から出してたので、思わず可愛いくしゃみが出た。

 その際に乳が派手にぶるんっと揺れたのは可愛げ無かったが。


「うぅ~……、とりあえず、このデカ乳は、なんとかしたいな……」


 風呂から上がったら『乳を小さくする方法』を検索してみよう……。



【第1話 終わり】

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る