第2話-1
「おはよう」
翌朝。
教室に入る際に特定の誰かに向けてでもなく明るく挨拶した
それに何人かのクラスメイトたちが振り向いて挨拶を返してくれた。
現時点では知り合いが美香と綾乃の二人しかできてないのだが、これはやはり美少女の恩恵なのかも知れない。
ちなみに今日はちゃんとブラを着けて来たので昨日みたいな
ただ、『大胸筋サポーター』どころか、
それはともかく、
「
「あっ、お、おはよ」
スマホに見入っていた航が、急に挨拶されて慌てた。
「何してるの? ゲーム?」
「あっ、え、えと」
途端にキョドる航。
いや、見せてなんて言わないから安心しろ。
どうせ当時ハマってた女キャラばかりのソシャゲなんだろ? そりゃ女子には見せづらいよな。
なので
「オススメのゲームがあったら私にも教えてね」
「う、うん」
あ、そうだ。せっかくだし、この流れで聞いとくか。
「ところで辻蔵くんは、部活は決めたの?」
「あ、いや、昨日、見学には行ってみたんだけど……」
「けど?」
見学に行っただけでも
一体何があった?
「実は、この高校ってゲーム系の部は二つあって、一つはeスポーツを目指すガチ勢で、もう一つはインディーゲーム作る部で……」
「なるほど。どっちもイメージとは違ったんだね」
こくりと頷く航。
あぁ、そりゃ確かにダメだな。
ガチはキツい。
いや、これからガチになるって選択肢も無くは無いんだけど、そこで無理してもねぇ……。
「じゃあ、仕方ないね」
だから、とりあえず
「う、うん、だから今日の放課後は違う部も見に行ってみようかなって」
「えっ?」
「え?」
「あっ、ごめんなさい。そうだよね、ゲーム以外だって一応見ておいた方が良いよね」
航の言葉に、つい心証が悪くなりかねない
いやだって、
ん? まさか
『高校で新しい友達ができるの楽しみなんだ。辻蔵くんも頑張ってね』
その言葉が、背中を押すどころか、プレッシャーになってしまったかも知れない。
もしそうだとしたら、よくないな……。
「辻蔵くん、私の言ったことなら、気にしなくてもいいんだよ?」
「あ、いや、無理してるわけじゃないから、大丈夫」
おっと、さすがに
33歳の俺視点からしたら高一の
「そっか、それなら、頑張ってね。……あっ」
『しまった。また頑張ってねって言っちゃった』とばかりに慌てて口に手を当てると、航は苦笑していた。
◇ ◇ ◇ ◇
さて本日、俺のやり直し高校生活二日目は、いきなり重大なミッションが発生していた。
「男子は着替えを持ってA組の教室に移動してください。A組の女子が来るので、女子は教室の前の方に固まってスペースを空けてあげてください」
クラス委員の子がそう言うと、クラスメイトたちは各々移動を始めた。
そう、これから高校初の体育の授業で、着替えるためだ。
「いきなり初日に体育とかナシでしょ」
ブレザーの上着を脱ぎながら面倒臭そうに美香が言った。
「今日は体力測定だけみたいよ」
どこでその情報を仕入れたのか、綾乃が言った。
「体力測定……」
この
今から気が重い…………ん?
「!」
そこで美香たちに目をやった俺は、自分の重大な
ちなみに女同士なので着替え中の姿を見ることへの忌避感は無い……と言うことにしおこう。
だってそんなのお互い様だろうし、俺は女子高生の着替えを見てドキドキするような歳でもないし……。
いや、ちょっと嬉しいのは内緒だけど。
で、何に気づいたかと言うと、それは、スカートを脱いだ時のことだ。
俺は慌てて周囲を見回す。
……一人……二人……三人、
まだスカートを脱いでない子や、既に体操服に着替えてしまっている子もいるので正確な数ではないが、殆どの女子はスカートの下にスパッツ(
女子高生の生態をきちんと調べておくべきだった。
今日は体育があると言うことで、体操服を脱ぐ時に『女子は腕をクロスさせて脱ぐ』と言うことしか気をつけてなかったよ。
失敗した。
とは言え美香たちは
そう言う子もいるよね程度にスルーされていた。
どうせ見えやしないからと派手なパンツを穿いて来てたら終わってたかも知れないけど、とにかく、どうやら俺が気にし過ぎたようだ。
「
いや、つっこむの、そっちかい!
しかし着替える際にYシャツも脱ぐのでバレてしまうのは回避のしようが無い。
いや、Yシャツの時点でバレるだろうけど。
「そんな感じはしてたけど、うん」
綾乃も、そんな感じはしてたのかー。
まぁ、わかる人にはブレザー着ててもわかるよなぁ。
相手がおっぱい星人か一流おっぱい鑑定士だったら鑑定ガード不可に違いないし。
しかしデカ乳へのツッコミ自体は想定済だった
「こらこら、見せ物じゃないよー」
美香と綾乃も、くすりと笑ってこの話題は終了。よし、成功だ!
ちなみに俺のバストスカウターで見るに美香、綾乃ともに多分Cカップだ。二人とも羨ましい。
とにかく、こうして体操服に着替えた俺たちは校庭に出るべく昇降口へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇
「はい、じゃあ柔軟運動をするから二人一組になって」
体育教師がそう言って、ピッとホイッスルを鳴らしたのを聞いた瞬間の、俺の心境を答えよ。
入学二日目にそれは無理でしょ?
地元出身者なら同じクラスにはいなくても合同になったA組の方に知り合いがいたりするかも知れないけど、
いや、
だが、ここでぼーっと突っ立ってても仕方ない。
俺はキョロキョロと、まだ組む相手が決まってなさそうな女子を探す。
「!」
お互いに目が合った。
向こうの女子も相手がいなくて困っていたのか、目が合った瞬間、軽く微笑んだ。
しかも、その目が合った女子は『学校でも指折りの美少女』として俺の記憶にもあった子だった。
この子、A組だったのか。組までは憶えていなかったよ。
とにかく今はそれどころではない。
「組んでもらえますか?」
「もちろん♪」
なので、俺たちは互いに歩み寄って簡単な自己紹介をする。
「B組の
「A組の
そうそう、確かそんな名前だったな。
それにしても改めて美少女である。
「実は高校から
椿姫の眩しい容姿に目がチカチカしつつ、
「そうなんだ。よろしくね、結莉ちゃんっ」
「う、うん……」
手をギュッと握られてそう言われ、俺はひきつった笑顔を返すことしかできなかった。
この子、好意があからさま過ぎて、なんか逆に怖いかも……。
「はい、みんな組んだねー? じゃあ、先生たちに習って柔軟始め。まずは両手をこうやって握り合って──」
結局、一人あぶれた子は体育教師と組まされていた。
あのポジションを回避できたのは幸運なのか、それとも……。
「ねぇ、結莉ちゃん」
「な、何?」
どんだけ体力が無いんだよ?
「結莉ちゃんって可愛いよね」
「き、霧山さんの方が、美人、ですよ」
いきなり授業中にこの子は何を言い出すんだと思いつつも無難に答える。
実際、椿姫の方が普通に背丈もあるので、どっちが美人か皆に聞けば、殆どの人が椿姫を選ぶだろう。
ちなみに椿姫の髪型はポニーテールだが、これは体育の授業だからそうしてるだけで、普段は普通にストレートだそうだ。
多分ポニテをほどいたらその長さは腰近くまであると思う。
「じゃあさ、私たち二人でやってみない?」
「えっ? な、何を?」
も、もしかしてこれって、一緒にアイドルを目指そうとか言う流れか?
「お笑いコンビ♪」
「なんでや!」
「こら、そこ! お喋りしない!」
「すみません!」「すみませーん」
体育教師に叱られて
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