第20話 家族でカラオケに行くの巻き
我が家は二か月に一回はみんなでカラオケに行って思い切り歌うのである。
田中さんとウーワンさんには申し訳ございませんが、お二人にはお留守番をしてもらう事に。そして今日が吉成家の二か月ぶりのカラオケなのである。
この日に限っては夜ご飯の用意もしなくて良いので私にとっても楽しい時間である事間違いなし。
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夕方5時に家を出てカラオケに向かう我が吉成一族。
横を歩く木一さんは、カラオケのお店に着くまでの道のりを子供のようにはしゃいでいる。鼻歌交じりに歩いているその様子からもその全てが見て取れる。更に横を歩く木之助さんは握りしめた手を空に突き上げ歌の練習をしている。
迫力あるその動きからも今日の一曲の為の練習であるのは間違いないようだ。
木治郎さんに至っては、ちょこちょこと歩きながら可愛らしく子供達に人気の「あるこう」を大きな声で歌い始めている。そうなのだ、吉成家のカラオケタイムはお店に向かっている道中から既に始まっているのである。
それぞれの思いを胸に、いつもの駅前にあるカラオケ店に到着。
会員カードをさっと出し、好きなメーカーの機械が入っている部屋をお願いする木一さん。受付を済ませ、部屋番号を確認すると家族で高ぶる気持ちを抑えながら廊下を突き進む。夕方5時だと若者が学校帰りや部活帰りに来ている事が多い為、お店の廊下にも若者が歌っている声が度々聞こえてくるのである。
その聞こえてくる音楽に”流石若者、今流行りの曲が歌えるのだね”と思いながら渡されたプレートに書かれている部屋へと向かう吉成家。
木治郎さんと木之助さんはその番号に書いてある部屋を見つけるとすぐに扉を開けて中に入り、ソファに座るとお尻で軽めにジャンプをする。
もう二人は気持ちが抑えられないようだ。
そして木一さんが部屋の中に入ると決まって一番にする事がある。
それは自分好みに照明の明るさを調節する事である。なにやら自分の好きな”丁度いいい照明具合”があるらしい。その日もメイン照明を切り、チカチカするライトだけ点灯させる。この照明は音楽に合わせて光の具合が変わるから気持ちがマックスまで引き上げられるそうなのである。
そして子供に1台、夫婦に1台リモコンを置き、先にメニューのページから食べ物とドリンクをオーダーする。
全ての一連の行動は吉成家伝統の行いである。
フライドポテト、から揚げ、ピザは必須で歌いながらでも食べられるアイテム。
そしてドリンクは夫婦は共に生ビール、子供たちはウーロン茶を頼む。
これで歌うまでの準備は完了したのである。いよいよ始まる吉成家のコンサート。
吉成家の歌う順番は、年下からと決まっている為、木治郎さんから始まる事になっている。勿論、木治郎さんの最初のチョイスは、
「さんぽ」by 井上あずみ
画面をリモコンで操作するとマイクを両手で持ち、立ち上がる木治郎さん。
「あー、あー、テストテスト。」
木一さん譲りのマイクチェック。でもこれが無茶苦茶可愛いのである。
毎回木治郎さんはマイクチェックをするのにいつも下を向いて恥ずかしそうに照れながらやるそのお姿!!が、本当に木治郎さんに胸キュンなのである!
そして曲が流れると同時に家族皆が立ち上がり木治郎さんの歌に合わせてその場で歩く。そして大きく手を振り足踏み。木治郎さんの周りで「あるこー♪あるこー♪」と一緒になって声を出す。
今この瞬間、このカラオケの場は〇〇ドームとなっているのである。
会場が一つになり始めた。木治郎さんのオープニングアクトが終わると木之助さんの出番である。木之助さんの一曲目は勿論こちらだ!
「夏色のナンシー」by早見優
実は木一さんが若かった頃、早見優ちゃんを大好きだったという所から、木一さんがたまに歌うのを聞いているうちに覚えてしまったようである。
木之助さん曰く、この曲は元気が出る曲なんだとか・・・。
曲の出だしから皆で盛り上がる事間違いなしの一曲。
「恋かなー!」と木之助さんが言いながらマイクを皆に向けてくる。
「イエース!♪」と皆で手を上げて叫ぶ!
「愛かなー!」
「イーエースー♪」
この掛け合いの連続で吉成家は一気に興奮マックスへと近付く。
そして曲が終わると私の曲が流れてくる。そうです・・・。私の歌は。
「天木越え」 by石川さゆり
どうしても最初の曲はこれでないと気分が乗らない私なのである。
私にはどうやらこの歌を歌う時に変な癖があるらしいのだが、自分ではあまり分かっていない。
「はまぎーごーえーーー♪」
そう、天木越えを”はまぎごえ”と歌っているらしく家族皆で帰りに私の真似をして(はまぎごえー♪)と歌うのである。
真似されると恥ずかしいのだが、どうしても直らない癖の様で、このまま歌い続ける事にしたのである。
そして会場は大歓声の中、メインのステージが始まろうとしている。
そうです。木一さんの一曲目は勿論この曲!
「モニカ」by吉川晃司
ダンスと言えば木一さん。木一さんと言えば吉川晃司さん。
胸から隠してあったサングラスを取り出すとおもむろにサングラスをかけて気分は本人そのもの。片足を前に出し、少しかがんだ感じの姿勢で音が鳴るのを待つ木一さん。曲と同時に腰を振りながら歌い始める。勿論つま先も少しだけ立っている。
木治郎さん木之助さんも横で同じポーズで腰を振り出す。
3人の男子が手を前に出しては、その手をひらひらとさせている。とてもセクシーな三人が目の前で踊るので私の気分も上がりっぱなし。
そして私はミーハーな追っかけのように黄色い声を上げる。
「オーオーサンクス!サンクス!サンクス!サンクス!モーニカー♪」
サンクスと歌いながら腕をクロスする木一さん。
もはやその姿は吉川晃司さんではなく、”木一川晃司”となっているのである。
コンサートホールは吉成家全員の熱を帯び、興奮状態のまま曲間が空く事も無くどんどんと曲が追加されていく。
それぞれが何曲か歌い終わると、2時間という吉成家ドームコンサートもクライマックスを迎える。
「アンコール!アンコール!」
という声とともに流れ出した曲はこれだ!
「銀河鉄道999」 by ゴダイゴ
画面にアニメーションが流れ始め、私と木一さんの青春時代を思い出させる。勿論そのアニメが子供達にも人気なのである。
全員で大合唱となり興奮冷めやらぬまま、ドームコンサートは終了となった。
最後に木一さんより次回のコンサートのお知らせがあり2か月後の告知がされる。
汗をびっしょりとかいた吉成家。帰り道の風が程よく皆の服を乾かしてくれたのである。
(アーーーーーーリーーーーーナーーーーー!サイコーーーー!)
路上で木一さんが吠えたのである・・・。
吉成トモ子とその家族たち 伊賀ヒロシ @takocher
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