第18話 田中さんとウーワンさんの一番大好きな寝床

基本的に田中さんもウーワンさんも散歩が嫌いなのである。

世の中に歩くのが嫌いな・・・いや、散歩の嫌いな犬がいるというのを知らなかった吉成家。毎日のようにテレビ画面には飼い主と可愛い犬が楽しそうに散歩をしている様子が映し出されている。そんな映像からは、まさか田中さんとウーワンさんの二人共が散歩をするのが嫌いだなんて想像もしていなかったのである。

ご飯以外の時間は常に「眠る」事を一番大切にしているお二人。

木之助さんと木治郎さんさんが、「散歩だよー!田中さーん、ウーワンさーん!早く行こう!」と声を掛ければ家の中で二人は逃げ回り勝手に鬼ごっこ状態が始まる。まあ、これで彼女達の運動は十分であると言えば十分なのかもしれないが、やはり散歩しながら一緒に町の様子を見たり、空を眺めながら良い天気ですねーとか言いながら散歩を楽しみたいのも本心である事には間違い無い。

ところが、木之助さんと木治郎さんの二人は何を勘違いしているのか分からないが、田中さんもウーワンさんも、この追いかけっこ状態が好きだと思っているらしい。私から見ると、田中さんとウーワンさんは、ただひたすら木之助さんと木治郎さんという悪魔の化身から逃げているようにしか見えないのに。

そう、それは逃走劇のように・・・、あるいは「警ドロ」のように、なのである。

まあ、それでも四人で楽しんでいるならば、それはそれでいとあわれなり。

最終的には、田中さんもウーワンさんも木之助さんと木治郎さんにガッツリと捕まり一緒に散歩に行くというのが流れとなっているのもいつものパターン。。

そして全員が散歩から帰ってくると、木之助さんと木治郎さんのテンションとは違い、田中さんもウーワンさんもかなりぐったりして疲れ切っている状態となり二人して放心状態となるのである。

なので、家に帰ると「コテン」だったり「バタンキュー」で夕飯まで眠りに落ちる。

たとえ、我が家に配達の人が「こんにちはー!お届け物でーす!」と、お届け物をしに来たとしても「ワンワン!」とも言わず無視して眠り続ける事が出来るくらい”ゆとり世代”の犬なのかもしれない。

こんな感じから番犬には絶対になれない二人なのであると確信したのである。


そして夜になり木一さんが仕事から帰ってくると、みんな揃ってご飯の時間となる。

田中さんもウーワンさんもご飯の時間には起き上がり、むしゃむしゃと美味しそうにドライフードを食べてくれる。食べ終わった後に毎回お皿を舐めまわして綺麗にしてくれるお二人は本当に綺麗好きなのである。

吉成家の夕飯が終わると、木一さんはテレビ前のソファでゴロンとするのがお約束のコース。ソファ全体を使い、トドのように木一さんが横たわる。足元にあたる部分のひじ掛けに両足を乗せるそのお姿は乾電池がフィットした目覚まし時計の裏蓋の中のようである。

その様子を見ると毎回私が木一さんに、「ご飯の後にゴロンとすると豚になりますよーー!」と言うと、決まって木一さんは「ブヒブヒ」と返してくれる。

本当にこの返しがいつも秀逸な木一さんなのである。ついついこの「ブヒブヒ」が聞きたくて同じ事を何度も木一さんに言っている私がいる。そんな木一さんのお腹はブヒブヒ感が出てきたのは言うまでもない。若い時と違い、そのお腹の”ぷにょぷにょ”した感じが触ると気持ち良いのでそれもいとあわれなりなのである。


そしてソファに木一さんが寝転がると、田中さんもウーワンさんも「待ってました!」と言わんばかりに木一さんの横まで凄い勢いで走ってくる。

ソファに横たわった時の「ギシッツ」という音に敏感な二人。遠くにいてもその音を聞き分けられるのである。

木一さんも横たわると段取りが決まっていて、片手で先に小さいウーワンさんを自分の胸の上に乗せる。そしてウーワンさんは木一さんの顔を向いてペタッと腹ばいになると木一さんの顔を一回ペロリと舐める。そして田中さんは少しだけ重いので両手で持ち上げて足の上に乗せる。ただ、田中さんに関しては元気が良ければそのまま木一さんの体に走ってきた勢いのまま飛び乗ったりもする。

田中さんはどのように乗せても決まってお尻を木一さんの顔に向けるので乗せ方は気にしない。とにかく乗せるだけなのである。

上から見ると、木一さんの上には木一さんを向いて胸の所に寝そべるウーワンさん、ウーワンさんのお尻にお尻を向けて木一さんのつま先に顔を乗せている田中さんがいるという図式になるのである。木一さんの事を真上から見ると毛皮を毛布にして寝転がっている状態。

私はこの状態を上から写真で撮るのが凄く好きなのであるが、田中さんとウーワンさんの毛の長さによってしか写真に変化が無いのも面白いのである。

その後数分で木一さんが眠りにつくと三人とも深く眠りに入り、それぞれがだらしない顔になってくるのだが、それが本当にきゃわぃいぃいのである。

結局二人は木一さんのお腹のぷにょぷにょが一番気持ち良い場所なんだという事が分かっているのである。まるで雲の上で寝転ぶかのように、その場所は田中さんとウーワンさんの一番のお気に入りスポットとなったのである。

特に三人が口を半開きにしてよだれを垂らしながら寝ている姿は超絶、悶絶ものである。

皆さんにも届けたい、この写真を・・・。

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