第17話 盆ダンス!

とうとうこの季節がやってきました。

夏と言えば青空!青空と言えば暑い!暑いと言えば心も踊るぜ!”盆ダーンス”!

私、トモ子は小さな時から大好きなのです。そう、”盆ダーンス”!

勿論、木一さんも私の影響を受けて盆ダンスが好きになりました。元々、木一さんに関してはユーロビート、そしてパラパラ好きという事からも分かる通り、ダンスが大好きなのである。そして私達の強力なDNAをもって生まれた木之助さんと木治郎さんもダンスが下手なわけがない。すでに体の中の染色体の形がダンスをしているような形になっていると思う。そうなんです!我が吉成家は、この辺の町内会ではちょっと有名な”盆ダンス一家”なのであーる。夏のフェスティバール!盆ダーンス!当日は吉成家全員で同じ柄の浴衣を着る。そしてその浴衣には全て「吉成」の筆文字が大きく書かれているでのある。浴衣姿で吉成家全員で街を歩けば・・・。


「おい!あの人達って有名な盆ダンスファミリーの吉成家じゃないか??」


「え?マジ!!本当だ!リアル吉成家だ!すげー今日は運が良い日だ!宝くじ買うしかないねー!」


「無茶、やばくない!あの吉成家の雰囲気!心震えるよー!」


「やだー、きゃわぅいーい!歩いている田中さんとウーワンさんとかまじありえなーい!リアルリアルー!」


と、町内がざわめく。すると私達の周りには人だかりが出来るのである。

さらには我が家族にサインを求めに来る人達で行列が出来る程に。

これを世の中的には「もみくちゃにされる」と言うのであろう。

吉成家では夏祭りでアイドル体験をする事が出来るのだ。

まあ、それくらい私達吉成家の華麗なるステップは斬新かつ人の心をギューッと鷲掴みにするのだと察する。

そして去年とは違い、今回は同行者として田中さん、ウーワンさんにも特別に吉成家デザインの服を着せてみたのである。6人で並んで歩く光景に皆が写真を撮りまくる。その日のSNSのハッシュタグには#吉成家#盆ダンス#かわいいの文字が沢山並び、日本の検索ワード上位にも登場するんじゃないかという勢いだ。

特に田中さんとウーワンさんのその姿は可愛すぎてキュンの上にキュンが何回も付くくらい沢山の人達を虜にしたのである。

ついでに#ぶさかわ犬、というのが一番多かったのだが、誰に触られても丸っきり吠えないくらい静かなのが田中さんとウーワンさんの凄い所だ。そんな性格から色んな人達に撫でられてすこぶるご機嫌だったのである。

田中さんは撫でられる度にひょこひょこと喜んでステップを踏む為、会場に着くまでにすでにムーンウォーク状態。

ウーワンさんに至っては常にマイペースでおどおど歩きのままではあるが・・・。

さらに会場には吉成家特別ブースが設けられ、沢山のファンの方達が吉成家グッズを買い求めに来るのである。

今年に限っては田中さん、ウーワンさんグッズが新しく追加された為、二人のグッズは初登場レアものとなり、飛びぬけて売れたのである。特に二人の顔写真の入ったうちわは即完売。皆が浴衣の背中にさしている為、会場全体が吉成家一色と化す。

これを「けーおーすー」と言うのであろう。※カオス

たまに猛烈なファンになると、自分達お手製のうちわを持ってきては”こっち向いて!”や”ウィンクして”、”手を振って”等と書いたものをこちらに向けてくるのである。それに嬉しそうに反応する木一さんは某アイドルと変わらないくらいの笑顔でステップを踏む。また、その木一さんの踊りが一昔前のステップの為、若い子達はその踊りが何の踊りか分かってはいないがイケているダンスだと勘違いし、その踊りを見様見真似で一緒になって踊りだす。すると会場中が木一盆ダンス一色になるのである。大歓声の中、ほとばしる汗、柑橘系の爽やかな香り、木一さんを囲む全てのものが清々しさを皆に届けるのである。

あまりの人の多さに固まっているウーワンさんも色んな人達と出会い、ぺろぺろで返しているからまんざらでもなさそうである。

あっちの方では、木之助さんと木治郎さんの盆ダンスが沢山の子供達の五感を刺激している。皆が輪になり二人に掛け声をかけるのが聞こえる。

(わっしょいわっしょいしょい!わーっしょいわっしょいしょい!)

毎年この夏が来ると私のハートも熱くなる。

あー、我が家族にハートブレイクだわー!

あっという間に過ぎていくこの吉成家の時間・・・。シンデレラタイムは直ぐそこで終わろうとしている。

そんな時だった。私は盆ダンス中に小さな石ころに躓いてしまう!

倒れるとそこにあった水たまりが私の頬を濡らす・・・。


「きゃは!」


「・・・。」


「はっ!!」


そこにはいつもの吉成家の姿があり、私は布団の中にいたのである・・・。

夢で物凄い夢を見るのは木之助さん木治郎さんと何ら変わらないのかもしれない・・・。

そして田中さんとウーワンさんが私の頬を舐めまくっていたのである。

これが水たまりの夢の原因なのね。

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