第12話 お泊り会

今日は家に木之助さんのお友達が三人ほど泊まりに来る。

仲の良い友達が来るという事で美味しいご飯を作る事にしたのである。

最後に「愛情」という魔法も散りばめて♡

(ちちんぷいぷいのぷい!)


____


「こんにちはー!お邪魔しますー!」

木之助さんが友達を連れて帰ってきたようだ。元気よく挨拶してくれる。とても清々しい。

高橋さん、石田さん、山野井さん。やんちゃ三兄弟みたいに仲良くて元気な三人。

その声を聞くと田中さんが一番に玄関まで迎えに行く。

「ワンワンワーン」

さぞかし田中さんはお友達が沢山来た事が嬉しいのでしょうね。

対するウーワンさんは人見知りの為、壁の奥に引きこもる・・・。

そして安全が確認出来るとゆっくりと皆の周りにある程度の距離は保ちつつ近付いて来る。___まるで獲物を狙うゴルゴ13のように・・・。


「皆さんー、今日は吉成家へようこそ!」


「はーい!」


「では最初に皆さんにご飯までの間、おやつを出しますよー!さて、何が出てくるか分かる人ー??」


こんな時は国民的朝のテレビ番組ぽく聞いてみたくなるのである。


「ケーキ!」


「お菓子!」


「アイス!」


皆さんが思い思いに意見を述べる。楽しいわー・・・。


「ぶぶーーー!違います!!今日のおやつは!!じゃじゃーん!干し芋ですー!」


「・・・。」


「えーーー?どうしたのかなー?お芋さんですよー!栄養がありますよー!」


横では木之助さんだけ喜びの舞いを踊っている。

(干し芋干し芋!いえーーーい!嬉しいですーーー!)


「木之助さんのお母さん、一言宜しいでしょうか?」


高橋さんが一言あるらしい。


「どうしたのですか?」


「お母さん、今時、子供たちが喜ぶものはそういうおやつではなく、最初に僕達が言ったような軽めの物なんです。干し芋は・・・おばあちゃんちに行くと出してくれるようなものなので、おやつではなく・・・、ねーねー、皆、何て言ったら伝わるのかな・・・?」


と、高橋さん、石田さん、山野井さんで議論になっている。すると石田さんが、


「あ、はい!干し芋は子供に喜ばれるおやつというジャンルにあらず。そして美味しいのですが・・・食べると喉が渇きます。そんな事から僕達はアイスなどのおやつを好んでいるのです。」


(むむむ・・・。干し芋をそのような扱いにしているのですね!せっかく買ってきたのに。)


すると横で喜びの舞いを踊っていた木之助さんが急に踊るのをやめて皆に伝える。


「皆、干し芋という事はの・み・も・の・・は?」


「ジューーース!」


三人は気持ちを切り替えドリンクに期待を寄せ始めた。流石だ木之助さん。ナイスレシーブ!と、私は心の中で叫ぶ。すると、山野井さんが、


「それでは、お母さん。干し芋にマッチする飲み物とは・・・是非そのお心をお聞かせください!」


「ではまた質問です!飲み物は何が出てくるでしょうかーー?」


しつこいようだが、こんな時は国民的朝のテレビ番組ぽく聞いてみたくなるのである。  (何が出るかな?何が出るかな♪)


「オレンジジュース!」


「アップルジュース!」


「コーラー!」


改めて皆さんが思い思いに意見を述べる。楽しいわー・・・。


「ぶぶーーー!違います!!今日のジュースは!!じゃじゃーん!健康第一ミネラルたっぷり麦茶ですー!」


「・・・。」


「えーーー?どうしました?皆さんミネラルですよ!み・ね・ら・る!」

案の定横で木之助さんが喜びの舞いを踊っている。


「あの、良いでしょうか、お母さん。」


高橋さんが先陣を切る。


「どうしました?」


「ジュースというのは僕達子供の間では、甘いものをジュースと言います。その為、麦茶はジュースとは言わないのです。」


「え・・でも干し芋と言えば一番マッチするのは・・・やはりむ・ぎ・ちゃ・・・だと思うのですが。」


すると石田さんが手を上げる。

他の人達がどうぞどうぞみたいに手を出す。


「お母さん、麦茶というのはですね、おばあちゃんちに行くと決まって冷蔵庫から出てくるものなんです。ポットで沸かしてそれを冷ましてから容器を変えて冷蔵庫に入れるんです。なので麦茶はジュースではなく”お茶”なんです。ジュースは容器を入れ替えないんです。」


「おーーーーー!」


他の皆がその説明に驚き歓声が沸く。

すると横で喜びの舞いを踊っていた木之助さんが踊りを止めて一言。


「まあまあまあ、皆さん苦しゅうないですよ!良いですか。今のこの流れで出てきたのは、干し芋、麦茶と出ましたね!それはどういう意味か分かりますか??トモ子さんのサプラーイズがあるに決まってますよね??違いますか?そうですー。夜ご飯にトモ子さんは全集中しているのですよー!」


「おーーー!僕達はせっかちでした!!すいませんお母様!」


三人から歓声が沸き上がる。まるでオリンピックで金メダルを取ったかのように。

そしてラストクエスチョンが山野井さんから・・・。


「ではお母様。僕達の無礼をお許しください。木之助さんから聞くまでは、お母様の事をおばあちゃまと思っていた所があった事をお詫びいたします。その上で聞かせてください。お母さんの全集中している夜ご飯とは・・・。」


(ざわざわ・・ざわざわ・・・と、皆の心がざわめいているのが分かる。)


「それでは、またまた質問です!夜ご飯は何が出てくるでしょうかーー?」


やっぱりしつこいようですが、国民的朝のテレビ番組ぽく聞いてみたくなるのである。(たららら、何が出るかな、何が出るかな♪)


「カレーライスー!」


「ハンバーグー!」


「シチュー!」


3人は飛び跳ねながら思い思いの食べ物を口にする。


「ぶぶーーー!違いますーー!!今日の夜ご飯はーーー!!じゃじゃーん!」


皆が生唾を飲み込む音がリビングに響き渡る・・・。

そしてトモ子さんは〇〇もんたさんのように、ためてためてなかなか答えを言わない。皆の目をジーっと見つめるトモ子さん・・・。さー、さー、さー、さー!!


(ジャジャジャジャーン・・・)


「今日はビフテキですよー!!」


「・・・。」


横で木之助さんが驚くくらいに喜びの舞いを踊っている。



「え?どうしました?皆さん。ここは喜ぶところですよ??」


トモ子さんもあまりにも皆が「え??」という顔をしている事に驚き、

「え?」返しをしている。すると石田さんから一言。


「お母様、失礼ですが”ビフテキ”とは何でしょうか?」


(え???ビフテキ知らないの??)と瞬間思ったトモ子さん。

すると横から木之助さんがナーイースーアターックー!!


「皆さん、教えましょう。”ビフテキ”とは”ビーフステーキ”の事ですよ!牛のステーキですよ!!!」


少しの沈黙が流れる・・・。


「ウォーーーー!ビフテキビフテキビフテキーー!」


三人は”ビフテキ”が何か分からずフリーズしていたが、ビーフステーキと分かった途端、サッカーワールドカップでゴールが決まった時のような感じで喜びを爆発させる。


「おーれーおれーおれおれーはビフテキー、ビフテキー♪」


山野井さんが膝でリビングを滑り、高橋さんは不思議なステップを踏み、石田さんはその二人に飛びつく。その横で木之助さんは同じように喜びの舞いを踊り続ける。


こうして無事お泊り会は成功し、終了しました。


田中さんは珍しく興奮しすぎている4人を見て地べたに寝そべり、ウーワンさんはじっとその姿を見つめるのでした・・・。

本当に誰が来ても愉快で楽しい吉成家。

実に・・・満足万太郎である。





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