第6話 吉成家ドライブに行く

今日は木一さんの提案で、家族皆で海までドライブに行く事になったのである。

もちろんそこには”田中さん”も含まれている。


楽しみのあまり・・・、木之助さんと木治郎さんは前日から水着を着て寝る始末。

・・・まあ、なんて可愛いのでしょう。我が子ながら”ズキュン”であります。

布団からはみ出る足が”もごもご”と動く姿がいとあわれなり・・・。

と思ったら、木治郎さんさんは漫画のように布団から出ている右手に浮き輪を抱えて寝ているじゃありませんか。

抱えながら”ムニャムヤ”言っている姿も本当に漫画のような光景。

そして木之助さんは仰向けで寝ながら右手だけが頭の上に真っすぐに伸びています。

すでに夢の中で背泳ぎしているんですね。


ダラーンとしている田中さんには専用の浮き輪を寝床の横に置いてあげたら、真ん中の穴にスポッと入って満足気に寝ているのである。顔は浮き輪に乗せて至高のヒトトキのようです。不思議と犬はいつも顎をどこかに乗せたがる・・・。これが可愛いんですよね。

さらにさらに、夫婦の寝室に戻ると木一さんまでもがまさかの水着着用だったので、

驚きながらもついつい私も先走って水着を着て寝てしまったのである。どんな水着か?というのは秘密なのですが・・・かなりセクシーとだけお伝えしておきます。

久し振りの海への旅。すでに夢の中から旅は始まっているのですね。


朝起きると・・・まあ何と可愛い事でしょう!木治郎さんだけ海から上がったような状況で海パンを濡らしていたので別の海パンに変えて差し上げました。

夢の中でも水の中で泳いでいたのでしょう・・・。

気持ちがすでに海の中だったのでしょうね。

___


「しゅっぱーつ!」


車内では全員が楽しそうにはしゃいでいますが、田中さんも初のドライブという事もあり、一緒になって後部座席でワンワン言っています。

窓を全開にしている車には心地よい爽やかな風が吹き込み、車内を異世界へと誘う。

吉成家全員の髪の毛は風になびき、私に関しては口に髪の毛が入りまくってあまり話す事が出来ない状況。男子達の髪の毛は映像的にはヒーロー達が必殺技を出す前に「うおーーーー」となって髪の毛が立ち上がっているような光景。

皆さん、アニメの中にいるようですね。いとあわれなり・・・ですわ。


「木一さん、海まではあとどのくらいですか?」


木之助さんが尋ねる。


「あと30分くらいで着く予定です。その場所はトモ子さんとの想い出の場所でかなり穴場なんです。人にあまり知られていないから吉成家のプライベートビーチとなる事間違い無しですよ。」


木一さんが自慢げに話しているその姿は、鼻の広がった馬の様で本当に可愛いです。


「早く海が見たいですー!プライベートビッ〇ですー!」


言葉を少し間違えるだけで意味がかなり変わるのだと思い、そこは木治郎さんを訂正する事に。


「木治郎さん、プライベートビッ〇ではなく、ビーーーーーチと伸ばしてくださいね。意味が良くありませんので。深い意味に関しては大人の事情がありますので木治郎さんが成人してからにしましょう。」


”キョトン”顔する木治郎さんであったが、かなり物分かりの良い子。


「分かりました!深い事は聞きません!きっと子供には教えてはいけない言葉もありますもんね!”大人の事情”ですね!プライベートビーーーーチですー!」


瞬時に”大人の事情”も理解出来る子・・・。世の中の子供のほとんどが知らない事があると「なんで、なんで?どうして、どうして?」としつこく聞いてくるのに対し、木治郎さんは本当に空気の読める男の子です。(それって子供には説明が難しいやつですよねー)みたいな時は直ぐに察してくれる。我が家の子供達は本当に賢い子である。

この年齢から「スルーをする」事を覚えている・・・。あらやだ、変なダジャレを言ってしまいましたわ。


(ん?気付くと横で木一さんが鼻歌を歌っている・・・。本当にご機嫌なんですね・・・分かります。私も超ご機嫌です。でも・・・、少しそのメロディは季節的に間違えているような・・・。)


「フン・フフフン♪ フンフ・フーン♪」


(それは絶対に・・・(恋人はサンタクロース♪)になっていますよ。木一さん。この真夏に、そして今から海に行くというのに・・・。きっと何の曲か覚えていないけどなんとなく頭に出てきた曲なんでしょうね。(あるある)というやつですね。

でもここは訂正なしでスルーにするーとしときましょうか。気分が良いというのは良い事である。本当に皆さん明るくて素晴らしいですね・・・。ほんとうに何度もダジャレを・・・。すいませんたろう・・・。)


「あ、海が見えてきましたよ!木治郎さん!」


開いている窓から手を出して海を指さす木之助さん。


「本当ですー!海ですー!!わーい!田中さんも見てごらん!あれが海ですよー!」


「ワンワン!」


「おいおいおい、そんなに窓から手を出すと危ないですよ!」


と、笑顔で注意する木一さん。きっとこの光景がさぞかし楽しいんでしょうね。

私も、あの時の木一さんとの想い出の場所に行けるのが嬉しくてたまらないのである。


そして我が家の車は心地良い風に浮かぶ馬車のように、その想い出の場所に辿り着いたのである。


「さあ皆さん、お待たせしました!やっと着きましたよ!」


木一さんが車から降りるとすぐに腕を空に上げて深呼吸しながら背伸びをする。


「うわーーーー!絶好調ーーー!」


昔から木一さんは長い運転から解放されると毎回「絶好調ーー!」と言うのである。

本当にその言葉選びのセンスが抜群な主人なんです。


「わーい、わーい!海ですー!誰もいなくて凄いですー!」


木治郎さんのはしゃぐ様子も可愛いし・・・。


「わーい、海に来ましたー!ヤッホー!!」


木之助さんの喜ぶ顔を見れて嬉しいし・・・。


「ワ・・・ン・・・。」


ん?なぜか田中さんが海を見て怯えているではありませんか??

その土地に足を下ろした途端ブルブルと足を震わせている・・・?

どうした?田中さん・・・?


と思ったら、腰をかがめてウンチをしました。

きっと我慢していたんですね。本当に可愛い・・・。

いつもウンチをする時に腰をかがめて足をブルブルさせるのが本当に可愛くてたまらない。


「木之助さん!今度は僕がウンチを拾いますーー!」


と、木之助さんがウンチ袋を片手に持って拾おうとするが手が小さすぎてまさかの!!ウンチが手についてしまうというハプニング。失敗しちゃいましたねー!木治郎さん!ドンマイドンマイですよ!!


「あーーー、ウンチが指についちゃった!」


と、騒ぐ横で、(どれどれ、僕がやるよ)的な感じで兄貴風をビュンビュンに吹かせている木之助さんが代わりにヒョイッとウンチを拾う。

流石!木之助お兄ちゃん!そしてその自慢げに鼻の穴を広げるのは父親譲り!


「次こそはやれると良いね!」と木之助さんが笑顔で木治郎さんに秘儀を見せる。


ウンチのついた指を立てて頑張る姿勢を見せる木治郎さん。


「じゃあ、服を脱いで水着になるかー!」


皆が浮き輪を持ちながら海へと向かう。

三人の男子が浮き輪に体を入れて腰上で持ちながら走る姿・・・。

昔のデパートの夏のチラシモデルのようでイキイキとしています。

田中さんは疲れたのか浮き輪の中に入って眠りにつきました。きっと初のドライブに疲れたのでしょう・・・。

”Dog is resting chin on swim ring”


「そう言えば木一さんが言っていた、トモ子さんとの想い出とは何なんですか?知りたいです!」


木之助さんは元気も良いけど好奇心が旺盛ちゃんですね!そんな大人の世界の秘密を知りたいとは・・・。


「まあ、実はあの場所がお父さんとトモ子さんがお付き合いするきっかけになったんだよ・・・。なんだかあの時を思い出すなー、ねトモ子さん!」


木一さんがあの想い出の”木”を指さしながらこちらを向いている時の瞳の輝きっていったら・・・。バカバカ!あたしの馬鹿!何考えてるの!!!


「木一さん、本当に懐かしいです!あの時の木一さんたら・・・バカバカ!言わせないでください!」


「なんでトモ子さんはバカバカ言ってるんですかー??」


木治郎さんも好奇心丸出しの顔でこちらを見ている。


「き・じ・ろ・う・さん!そこは大人のじ・じょ・う・・・ですよ!」


顔の前で×をする私を見て、木治郎さんは自分の口を塞いで頭を下げる。

ほんのり赤みがかったほっぺが本当にチェリーみたいで可愛い木治郎さん。


「また、僕は”大人の事情”に踏み込んでしまいましたねー!めんごめんごですー!」


「これは一本取られたな!」


と、木一さんもお腹を抱えて笑っている。


その後、皆で海の中で水を掛け合ったり、砂浜をスローモーションで走ってみたり、とりあえずドラマで見るシーンは全部やってみた。

勿論最後は田中さんも私達の所まで走ってきて一緒に水際を走った。


フリスビーを投げて、「取ってこい!田中さん!」___。


ドラマでは犬が飛び跳ねてフリスビーを口でキャッチするのだが、田中さんに関してはかなり冷静で、完全にフリスビーを無視しているのも可愛くてたまりませんでした。結局投げたフリスビーは木之助さんと木治郎さんがはしゃいで取り合うという。


どちらが人間か分かりませんでしたが飛び跳ねていたのは犬ではなく二匹の我が子でした。


___


帰りの車の中、我が家の三匹は疲れ果てて完全に寝落ちしていました。

そんな中、木一さんから言葉が。


「あの・・・。トモ子さん・・・。」


あらやだ、随分神妙な感じの言い方・・・。


「どうしましたか?木一さん。」


「あの・・・、私はまだ面白いでしょうか?トモ子さんを笑わせていますでしょうか?」


「もちろん!ちょーーーちょーーー、笑っていますよ!」


横で運転している木一さんの鼻の穴はいつもより大きく広がっているのが私からも見えたのである・・・キュン!









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