第4話 新しい家族_こんにちは!

傷心で悲しんでいる表情を見せていた木之助さんを想い、家族で出した答えが、

我が家に・・・なんと、「子犬を」お迎えしよう!という事になったのである。

そうです我が家に!!新しい家族が増える事になったのである。

木一さん、私、木治郎さんの三人で話し合い、この決定に至りました。

木治郎さんは自分の下に弟か妹が出来たくらいの気持ちで興奮しているようです。

そして、私と木一さんで”保護犬”を検索してまだ小さいメスのトイプードルを見つけ、我が家に迎え入れる事が決まりました。


2歳になったばかりの薄いベージュ色をしたトイプードル。

良く可愛いと言われているトイプードルの写真と見比べると、その可愛いの範囲からは少しだけはみ出した雰囲気の顔の持ち主かもしれないが、とても愛嬌があるように思えたので、家族にしようと思ったのである。


そして木一さんと私で家に連れて帰り、木治郎さんと木之助さんを待つ事に。

まだ6歳の木治郎さんが先に帰ってくる。幼い子供は学校が終わるのが早い。

木治郎さんはその子犬に会った瞬間から仲良く遊び、妹が出来たと大喜びしていた。

顔を舐められると木治郎さんも舐め返す。

本当に可愛い仕草も全てが木一さんそっくり。


「名前は何にしたらいいんでしょうか?トモ子さん?」


という木治郎さんに、「それは木之助さんに決めてもらいましょう」と伝えると、

木治郎さんは名前ではなく「妹さん、妹さん!と呼んで戯れていた。」


そんな時間を過ごしていると玄関の扉が開き、元気のいい声が聞こえてきた。


「ただいま!」


木之助さんだ。きっと、子犬を見たら驚くぞ!と三人で声を潜めて部屋で待つ。

ついでに木治郎さんも何故か子犬が声を出さないように子犬の口を押えている。


部屋の扉が元気よく開いた。


その瞬間、子犬ちゃんが木治郎さんの腕からすり抜け木之助さんの元へ走り寄る。

驚いた木之助さんが一瞬後退りするが飛びついてきた子犬ちゃんをキャッチする。

その勢いで尻もちをつく木之助さん。

「はははは、びっくりしたー。」

・・・まるでドラマによくあるシーンだと皆が関心する。


「え??どうしたんですか?この子犬ちゃんは!」

いつものキョトンとした顔で皆を見渡す木之助さん。

瓜二つですよ。木一さんと。


「サプラーイズ!!!」

三人が笑顔と共に大きな声で叫ぶ。


「え?どういう事ですか?」


その驚いた木之助さんの顔はまさしく木一さんそっくりです。

本当にどこもかしこも似てしまうものなのですねと、昔の木一さんの驚いた顔を思い出し、クスっとしてしまうトモ子さん。

すると横から手を上げて僕が言う!という感じで木治郎さんが説明を始める。


「この子犬ちゃんは木之助さんが”恋の病”から立ち直る為に、三人で考えて我が家に迎え入れましたー!なので木之助さんが名前を付けてくださいー!」


可愛らしい声を出す木治郎さんは本当に可愛い。


「え?本当ですか?木一さん、トモ子さん。それならば物凄く嬉しいです!僕と木治郎さんの妹になるのですね!!」


良かった。木之助さんが笑顔を取り戻したようである。


「そうだよ、木之助さん、君が名前を付けなさい。任せるから。な、皆さんも良いですよね?」


木一さんがニコニコしながらトモ子さんと木治郎さんに(良いよね?)と言う顔を見せる。

また、その時に見せる木一さんの古臭いウィンクがたまらないのである。


「もちろんですよ、木之助さん、決めてくださいね。」


「有難うございます、では僕がいくつか子犬ちゃんに名前を呼んでみます。それで(ワン!)と言った名前にするというのはどうでしょうか?」


「良いですね!最高のアイデアです。子犬ちゃん自ら選ばせるなんて、木之助さんもやはり大人の階段上ってますねー!」


「僕も早く大人の階段上りたいですー!」

と、横から叫ぶ木治郎さん。


「では、呼んでみますね!子犬ちゃーん!こっち向いてね!今から名前をいくつか言うから気に入ったら(ワン!)って言ってくださいね!」


家族全員の視線が子犬ちゃんに注がれる・・・。


「では、いきます。ますはココちゃん!」


「・・・・。」


「違うようですね。」


「いやー、すごく緊張します!ビンゴゲームみたいですね!」

と、トモ子さんが呟く。


「次は、シェルちゃん!」


「・・・。」


子犬ちゃんは足の指を舐め始めている。


「続いて、チャチャちゃん!」


「・・・。」


(プルルルル・・・。)


「あ、電話です。ちょっと待ってくださいね。」


そう言ってトモ子さんが受話器を持ち上げると、どうやら木之助さんの友達からの電話だったようだ。


「木之助さん、電話ですよ。子犬ちゃんの名前選びは一時休憩ですかね。」


木之助さんが受話器を持って話を始める間、家族内には沈黙が流れる。

木一さんは考えている人のポーズ、”腕組で空を見上げる”をしているが、その漫画の様なスタイルが面白い。ついでに私も同じポーズを真似すると続いて木治郎さんもそのポーズをする。結局三人が”腕組で空を見上げる”ポーズをして待つ事に。

そして電話を切ると、また皆の中心へと木之助さんが戻ってくる。


「では、始めましょう。再開です!」


急に木治郎さんが木之助さんに質問をする。


「木之助さん誰から電話でしたかー?」


若い時は誰から掛かってきたの?って気になるのよね。そんな所も木一さんにそっくりな木治郎さん。いつも木一さんも(電話誰からでした?って聞いてきますもんね。本当に家中にDNAをバラまいていますね。クスッ。)


「あ、田中さんからですよ!」


「ワン!!」


「・・・・?」


皆の目が”きょとん”になる。


「え、まさかの田中さんに反応したのですか??」


「ワンワン!」


「という事は、この子自身が決めたのが田中さん?なんですかね?・・・」


皆の目がさらに点になる・・・。


「ではトモ子さんも一度名前を呼んでみて返事をしたらその名前にするというのはどうでしょうかね?」


木一さんが皆に確認の為に聞き返す。


「そうですね、最初に決めた事ですもんね。吉成家は決めた事はぜったーい!王様の言う事もぜったーい!ですもんね。」


「トモ子さん、王様の言う事はっていうと、お子様には刺激が強い感じになりますね。しかも天高く上げた右腕のこぶしも・・・。」


「あ、申し訳ございません。昔の癖が・・・。」


(トモ子さん、王様ってなんですかそれは?みたいな顔の木之助さんと木治郎さんが二人で天高く右の腕のこぶしを突き上げる。)


ここは気をしっかりと持ち直して・・・。


「えー、コホン。ではいきます。・・・。田中さーん!」


(ワンワンワン!)


「・・・・。」


「いあやー参った参った!これは一本取られましたね!では、子犬の名前は”田中さん”に決定です!」


木一さんが大笑いしてお腹を抱えながら子犬ちゃんの名前が決まる事になった。

その古いタイプの笑い方が本当に可愛い木一さん、と思っていたら木之助さんも木治郎さんも横でお腹を抱えて笑っている。もう三つ子ですね・・・。


この家族は本当に愉快だ。皆が笑顔に溢れている。

その周りで田中さんも走り回って喜んでいる。すでに田中さんも木一さんのDNAが取り込まれているのかもしれない。

こんな感じで吉成家にはもう一人家族が増えました。 

吉成木一、トモ子、木之助、木治郎・・・そしてフルネーム、「吉成田中さん」が加入しました。どうぞ宜しくお願い致します。



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