第2話 木一さんの教え
我が家の夫、木一さん(46歳)の教えは単純で面白い。
私も彼の面白い所に惹かれて結婚したのだが、マジで面白いのである。
元々結婚したら”笑顔に溢れた家庭を”が望みだった私だが、それを遥かに超えていた。
”大笑い過ぎた家族”だったのである。
木一さんは本当に昔から変わらず私を笑わせてくれる。
付き合ってからだとかなりの歴になる。
木一さんのプロポーズの言葉も最高だった。
「トモ子さん、一生笑わせます。笑わす以外考えていません!どうぞ宜しくお願いします!一緒に楽しい家庭を築いて下さい!」
という言葉と一緒に差し出してくれたのは、テレビドラマでよく見かける指輪でもなく花束でもなく・・・黒のボールペンだった。
本人曰く、”これで婚姻届けの用紙に名前を書いてもらいたい”という願からだったと言う・・・。実に面白い・・・。私はそのボールペン一本で木一さんに靡いてしまった。世界一安い女となった事で自信がついた。
最終的に木一さんは指輪をくれたが寧ろ指輪はいらなかったくらい、そのボールペンを愛してやまない今日この頃。
元々真面目な彼は嘘が付けない。笑わせます!という約束をしたら間違いなく笑わせてくれると私も信じた。
その結果、本当に何年経っても笑わせてくれるからうちの家には笑顔しかない。
そしてそんな家庭に生まれてきた子供がツマラナイ訳がない。
これがまた超面白いのである。
まさしく木一さんのDNAなのか・・・、生まれた時から本当に面白い。
大体、生まれたばかりの子供の写真を友達から見せられると、何とも言えない感情になるのは私だけだろうか?
「ねえ、この子が我が家の息子。可愛くない?」
と言われて、心の中では(いやいや、エイリアンみたいとか、しわしわで怖すぎる)とか、そんな気持ちが正直あったのである。
でも、我が吉成家に生まれてきた木之助さんは本当に面白かった。
(しわしわでエイリアンみたいでフガフガ言っていて本当に不細工だった)のだ。
最初に助産師さんに、
「可愛い男の子が生まれましたよー」
と言われた時、木一さんも私もはっきりとした口調で答える。
「まだ、可愛くは無いですね。」
と、正直に言ってしまったのが真実。
でも、その後可愛くなったのでその時に改めて二人で「可愛いなー」と言ったのを覚えている。
次男の木治郎さんに関しても同じく、助産師さんが、
「可愛い男の子が生まれましたよー」
と言ってくれる。
「いや、顔は可愛くは無いですね。サルよりもまだどちらかというと怖い顔していますね・・・。」
と、二人で語り合ったものだ。
その時の助産師さんの「え!!??」の顔は最高でした。
長男と同じように、その後、可愛くなってきたので「可愛くなったねー」と、その時に伝えてあげたが、相変わらず「フガフガ」言っているだけだったので本人は覚えていないと思う。
そんな感じで月日は過ぎていき、二人共ある程度成長したある日の事だった。木一さんが家族会議を開くと言ったので皆で食卓に集まる。
当時木之助さんが5歳、木治郎さんが3歳。
「えー、今日から我が吉成家では決まり事を皆さんに伝えます。」
その木一さんの一言で私含め、三人が目をお互いに合わす。
伝えられた内容は以下に記す事にします。
①家族の名前には皆が「さん」を付けましょう。
②常に面白い事を言いましょう
③お互いに敬語で話しましょう。
④学校に行き始めると決まって「親なんてうぜー」みたいな事を言う人が現れますが、その時は自信を持って「僕は親が大好きです!」と言いましょう。
⑤僕はいつでもトモ子さんを大好きです、と言い続けますので、木之助さんも木治郎さんもトモ子さんを大好きと言い続けてください。
この上記④については、さらに木一さんから私に説明がある。
(ある程度年齢がいくと、決まって親の事をそのように言う人達が出てくる。その言葉に流されるのは本当にカッコ悪い。だからこそ、そのカッコ悪い事は言わせない様に釘をさしておきましょう)という事でした。
木一さん曰く、先回りして話しておけば他の友達に言われても親の悪口には乗らないはずです、という事だった。
さすがは木一さん。私の事を思っての行動だと理解したのである。
そんな事で成長しても木之助さん、木治郎さんは二人共が私の事を”トモ子さん”と呼び、”いつも大好きです”と言ってくれる。
木一さんの作戦は大成功でした。
本当に楽しく明るく仲の良い家族である。木一さんと結婚して良かったと毎日思う。
笑顔が一番、食欲二番、眠りが三番。そして改めて大笑いが4番。
それが木一さんの教えである。
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