第6話
私は、温かい言葉をかけてくれた佐藤さんと共に食事をすることにした。
落ち着いた雰囲気で次々に食事が運ばれてくる。何も言っていないのに、私の好みばかりがズラリと並ぶ。やっぱり佐藤さんは私のことをいつも理解してくれる。
そう思うと先ほどの緊迫感など忘れ、私はずいぶんとリラックスした様子で彼の言葉を聞いてた。
そんなことがあったんだな。 本来なら高瀬は営業部の人間に新人教育を教えてもらう予定だったよな。それが、人数が足りずに一時的に君が教えている、確かそうだったと記憶しているが。
高瀬には新人マニュアルが渡されていて、それをこなしているハズ。まぁ、質問は多少はあると思うが少々、頻度が多い様にも思うな。
実践じゃなくてあくまでマニュアル。基本的には目を通すだけで理解できる内容になっているんだが。
きっと、嫌。確実に君のせいじゃない。むしろ今までよく頑張ってくれていたね。高瀬のこと今度、俺に預からせてくれないか。もし、君が気になるようなら異動願いも出せるよ。
希望するなら、僕の部署に来てほしい。僕は君の能力を買っているんだ。すぐに決めなくても大丈夫だからね。
佐藤さんに悩みを相談してから、驚くほど早い展開で問題が解決した。あれから高瀬君とは接触がない。
依然として彼と同じ部署だが、私以外の教育係が任命されたのだ。高瀬君は新人教育を受けたのち、各営業所に配属されるらしい。完全な問題解決とはいかないものの、彼の呪縛から解放されたとあって私のメンタルはメキメキと回復していった。
あれから佐藤さんと話す機会がグっと増えた。どうやら今回の件を重く見ているようで、前よりも距離が縮んだ気がする。
佐藤さん、お疲れ様です。
あぁ、高瀬。
佐藤さん、あの日「部長が呼んでいる」って言いましたよね。僕、身に覚えがなかったんですよ。でも何かあったのかなと?思って部長に取り次いでもらったんです。そしたら、会っても「何のことだ」って言われましたよ。あれ、わざとですか?
こっちこそ、聞きたいことがあったんだ。君のアレ、わざとだろ?
なんのことですか?
とぼけるつもりか。彼女の気を引きたいがために、何度も何度も必要のない質問していただろう。
君にとっては、彼女と仲良くなる唯一の方法かもしれないが、相当追い詰められていたんだ。そのことを分かっているのかな?彼女はお前と離れたいがために部署替えも視野に入れていたほどだよ。嘘じゃない。
これからも、会社に居続けたいのなら彼女の事は諦めた方がいいんじゃないかな?
言いたいことは、それだけだ。お疲れ様。
あー、高瀬もバカだな。簡単な挑発に乗って。あんな状況で告白なんて成功するわけないのに。
バカだよな。まぁ若いから仕方がないか。それにしても、高瀬をダシに彼女にうまく取り入れたな。さぁ、じっくりと…距離をさらに縮めていこうかな。
これで、やっと彼女を僕のものに出来る。焦らずにゆっくりと計画を進めていこう。
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