第7話

「これ以上は迷惑をかけられない」そう思った私は佐藤さんからの誘いを断ることにした。

何か言いたげな佐藤さんに気付かないふりをして私は会社を後にする。 「高瀬君は呼び出しで戻ったし鉢合わせることもないだろう」そう自分に言い聞かせて。

自宅が見えてきた頃、やっと私の心は落ち着きを戻していた。今日は色々とありすぎた。ゆっくりと休もう。そう顔を上げた時だった。

いる、高瀬君が。早く、ここから離れないと。そう思うものの、どうして?オフィスに戻ったハズじゃ…色々な疑問が頭に浮かんび体が言うことを聞かない。

と、高瀬君がゆらゆらと体を揺らしながらゆっくりと近づいてくる。

「先輩、どうして僕から離れるんですか?」「ただ話がしたいだけって言いましたよね?」「僕との会話は避けるのに佐藤さんとなら話すんですね」「僕、すっごく傷ついちゃいました」

まるで私の反応を楽しむように顔を覗き込んでくる高瀬君。いつもの口調なのに何もうつさないドロっとした瞳をしていて、感情が掴めない。

「高瀬君がおかしい」「やっぱり佐藤さんと一緒に帰れば良かった」そう後悔しても、もう遅い。

今の彼は話をしたところで分かってもらうことは不可能だろう。何も考えられない。とにかく、とにかく高瀬君から離れないと。

…逃げようとした時だった。私の腕を高瀬君が掴んだのは。振りほどこうとするけれど、男の力には敵わない。

どうにか藻掻く私とは違い、「部屋に入りましょ?」と穏やかで声で高瀬君が言った。

一緒に家に入る?どういうこと?と戸惑う私に「ほらカギを貸してください」と手を差し出してくる。

私の部屋に…?と思っている間に、高瀬君は私のカバンからカギを取り出す。「ダメ」「ダメ」そう思っても無情にもドアが開く。

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