第116話 嘘発見器
この世界に俺の世界の持ち物(主に電化製品)を出すと、何故か魔道具化する。
しかも電源がなくても電化製品が動くので、その謎をSiryiに鑑定したもらったところ、俺の魔力が全て道具類に流れているのだと判明した。
要するに俺の魔力は、電力や魔晶石がなくとも道具を動かす魔法と考えられる。
魔力はあっても魔法が使えないと思っていた俺だったが、Siryi曰くコレが俺の固有魔法らしい。
とはいえ、俺が俺の持ち物であると認識する必要があるとのこと。そうでなければ影響はないんだってさ。
うん?
もしかしたら、俺が魔動船を俺の持ち物であると認識さえすれば、魔晶石がなくても動かせるようになるのでは……?
いやいやまさかねぇ~。あはははは!
それはともかくとして。
因みに元からある魔道具や電化製品は、電力や魔晶石がなくとも魔法で動かせるようになる。そう言う魔法なのだそうだ。でも普段から意識していないので、俺自身全く魔法を使っているという感覚がないんだよな。
しかも俺が作れば大体魔道具化するらしいので、Siryiに『魔道具を制作してみてはいかがでしょうか?』という提案をもらったが、今のところその予定はない。
適当に作ったアイテム(タリスマン)ですら妙な効果を齎すので、危険極まりない魔法であることは間違いないからだ。
錬金術師という肩書だって重くて面倒なのに、そこに魔道具師というか鍛冶師まで加わるなんて冗談ではないのである。
なので現状、俺自身が俺の持ち物という認識をしなければならない為、基本的に元の世界から持ち込んだモノに限定されていた。
こういうのを知っていくと、益々俺がブラウニーに勘違いされるのも何となく理解できるようになるね。その誤解を解くのが面倒で、放置してしまっているけど。
世の中の不思議も、こうして紐解いていくと「なんだこんなことだったのか」と、やけにつまらない結末を迎えるモノだ。
俺の能力というか魔法が家電や魔道具類に影響を及ぼすと考えれば、ブラウニーと勘違いされても仕方がない気もする。
家に住み着く妖精だから家事が得意な妖精とされるけど、家電を望むように動かせる魔法であれば、家事が捗ってしまうではないか!
子ども向けアニメやマンガでよく見る、魔法使いがホウキを自在に動かして掃除をしているような感じかな? 俺の能力はそれの家電版みたいなもんだ。
確かに現代の家電製品は便利だし、快適な生活に必須の神器である。
だからって家事と鍛冶に引っ掛けて、自ら魔道具を作ってみるように提案するSiryiもどうかと思うけどね。
でもそう考えると、アレクサの方がブラウニーなのではないだろうか?
機械類なら何でも動かしてしまうヤツだし。スマートスピーカーなんだけど、出来ることが多すぎるんだよ。もしやアイツは、座敷童かブラウニーが乗り移っているのではなかろうかと疑いたくなる。
だが待てよ。アレクサは機械類で悪戯をするというか、俺の言う事を聞かないところがあるしなぁ。
ヤツはあれだ。子供の頃に爺さんが見せてくれた古い映画にあった、機械類を狂わせて人間に悪戯をするグレムリンという妖精に近い。
高度に発達した科学は魔法と区別が付かないって言うし、考えてみれば現代の科学技術によって作られたガジェットは、この世界の魔道具のようなモノだ。(Siryiはウィジェットかな?)
きっとアレクサは、高度に発達した科学が生み出した、魔法を使えるAIという名の妖精みたいなものなのかもしれない―――ということにしておこう。
俺の中ではもはやグレムリンだけどね!
この世界に来て、魔法という存在があることで、俺の認識も大分おかしくなっているようだ。
妖精も実在するのではなかろうかと思い込み始めているし、俺自身が妖精と思われているのも納得したくはないけど、納得せざるを得なくなっていた。
まぁ、それについては完全に誤解なんだけど……。
さて。
それらを踏まえて。
ここに俺の持ち物である玩具を取り出す。
半球型で、手を乗せてベルトで固定する、質問に答える形で嘘を吐くとランダムで低周波が流れてビリビリするという玩具である。
「リオン、コレは何だ?」
ディエゴに聞かれたので、俺は念波を送って玩具の説明をした。
「嘘発見器?」
「うん」
とは言っても、ジョークグッズなので本物の嘘発見器ではない。ビリビリ攻撃もランダムだから、実際に嘘か本当かは判んないんだよね。
これだけだと、シュテルさんのゴミアイテムと何ら変わりがない、ただの面白グッズである。
だがしかぁーし! この世界での俺の魔法は、これら
なのでこれは本物の嘘発見器であり、低周波ではなく完全に電気ビリビリ攻撃を受けるお仕置き魔道具なのである。
だから実験としてテオに試してみよう。
「え? な、なんすか? これに手を乗せるんすか?」
「うん」
こういうのは下っ端の哀しい役目なのだ。
よって嘘を吐いてもらうことにした。
ベルトで手を固定し、玩具から手を離せないようにしていく。不思議そうな表情をしているが、相変わらず俺の言う事を素直に聞く単純な奴である。
少しは嫌だって言えばいいのだが、コレがテオのイイところでもあるのだろう。
「テオはおんなのこ?」
「え? ちがうっすけど」
「うんっていってみてー。テオはおんなのこ?」
「え? うん――――ギャァッ!!」
電気がビリビリして、テオは叫んで飛び上がった。
「うむ。じっけんはせいこうだ」
「成功……なのか?」
「うん。うそついたら、しびれる」
「そ、そうか……」
「痺れるなんてもんじゃねぇっす! 痛いっす!」
「ごめんね。これあげるから、ゆるしてねー」
そう言って俺はテオにチャロアイトを渡した。
癒しの効果のあるパワーストーンらしいので、持っていると癒されると思われ。
「あ、この石持ってたら、痛みが引いた気がするっす」
「よかったねー」
ずっと持ってていいよ。まだ一杯あるからね。
お詫びとして俺はテオに癒し効果のあるとされる石を与えた。
「あれ? なんか滅茶苦茶調子が良くなってる気がするっす!」
「そう?」
そんな効果があったかな? と思うが、まぁ調子が良くなったんならいいやと、俺はそのまま放置することにした。
「で、お前さん。この道具を何に使うんだ?」
呆れた表情のギガンに問われ、俺はニヤッと笑った。
「おしおきー」
「お仕置き?」
みんなが首を傾げるのを見て、俺はニヒヒとほくそ笑む。
これを使って、シュテルさんをとっちめてやるのだ。
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