第74話 ムキッ☆男だらけの手作りアクセサリー教室
突然始まった、男だらけの手作りアクセサリー教室である。
指導はド素人の俺だけどね。
本来なら本職のジェリーさん指導の下でやるべきなのだが、繊細な編み込など出来る野郎はここにはいないので仕方ないのだ。
よって検証のために簡単に作れる俺方式のストラップを作ることになった。
アマンダ姉さんやチェリッシュが起きて来ないかなぁ……。
工作教室ならともかくとして、何が悲しくて野郎ばっかでアクセサリーを作ってんだろうね? 俺がやれって言い出したんだけどさ。
こういうのはもっと大人数でやって検証するべきだと思うので、メンバー全員巻き込みたい。
「おはよーっす。マスター、いつものお願いするっす~」
女性ではなく、もう一人の野郎が起きて来ちゃった。俺らの部屋は直ぐ明るくなるから、目が覚めやすいんだろう。
しかも俺の要望通りに、テオが「マスターいつもの」を挨拶代わりに口にした。
朝食を頼む際に、そう言う決まりになっているからだけど。(俺が決めた)
「いつもの」と言えば野郎は和食で、女性は洋食になる。いつもじゃない時は逆ってことね。
「いつものねー」
作業を中断して、俺はテオに和定食を出すことにする。
おかずは潰したジャガイモに片栗粉を混ぜて枝豆を練り込んだお焼きに、お取り寄せで購入しているシャケフレーク(缶詰タイプで賞味期限三年)、そして玉子焼きと野菜スープである。朝食だからこんなもんだよ。
テオは甘い玉子焼きが好きなんだよね。ディエゴとギガンは出汁巻玉子だけど、この二人は完全に酒飲みの好みだからな~。
やっぱここに味噌汁を加えたい気がしてくる。でもみんな飲めるかなぁ? (俺は自分だけインスタントの味噌汁をたまに飲んでいる)
「たべたら、いっしょにつくってねー」
「何をっすか? というか、みんな何してんすか?」
「アクセサリー作ってんだよ」
「あ、お邪魔してます」
「どもっす。って、誰っすか?」
テオが挨拶をするジェリーさんを見て首を傾げている。
お兄ちゃん説明よろしく~。
カウンターに野郎が並んで、ちまちまとアクセサリーを作っている姿は滑稽だけど、気にしたらダメだ。
これは崇高なる実験なのである。だから笑ってはいけない。笑ったらタイキックをお尻で受け止めることになるからね!
「すまない! 入ってもいいだろうか!」
テオがご飯を食べ終え、俺の指導の下アクセサリー作りを始めようとしたその時、シャバーニさんとトレーニー仲間であるGGGのみなさんが来訪した。
「遅くなってしまって申し訳ない! 旅の間の食事とプロテインのお礼に、デミドラゴンの肉を受け取って欲しくて持ってきた。昨夜渡しそびれていて、早朝になってしまったが、いいだろうか?」
「え? あ、うん。ありがとー」
律義な人だな~。デミドラゴンのお肉って、物凄くお高いのに。それをお礼としてくれるなんて、この人たちってやっぱすごく良い人だな~。
「あ、そうだ」
もし俺たちみたいに休養日なら、ついでだからシャバーニさんたちにも協力してもらおう。
お礼はお昼ご飯でいいかな?
それと朝ご飯はもう食べたかな?
ディエゴお兄ちゃ~ん。アクセサリー作りが面倒なら、お客さんの相手して~!
実験のためにアクセサリーを作っていることを伝え、協力して貰えるか聞いてみると、「よろこんで!」と、居酒屋のような返事が返って来た。
マッチョの店員さんが、筋肉をムキムキさせながら店内で働いているような、そんな映像が思わず浮かぶ。そういうお店か職場があったような?
店舗内には、商品を陳列する大きなテーブルがあって、そこで作業をして貰うことにする。お礼はお昼ご飯だけどいいかな? って言ったら、「ナイス!バリバリ!」と、物凄いやる気を出してくれた。
そうして彼らを巻き込むことで、野郎密度がさらに濃くなったアクセサリー教室は、アマンダ姉さんたちが起きてくるまで続いたのだった。
「ふぅ~ん。それで、こんなに沢山あるのね?」
「そんな面白いことやってたんだぁ~!」
お昼近くになって、やっと女性たちが起きて来た。
ベッドが心地好く、部屋が快適すぎて起きたくなかったんだって。枕やクッションの使い心地が良く、俺には合わなかったけど、彼女らにはフィットしたみたい。
そして起きて来た彼女たちから「いつもの」という注文を受けたので、パンケーキセットを出すと「お部屋で食べたぁい」と、チェリッシュが言い出した。
お洒落なティータイムを演出したテーブルが気に入ったのかな?
そして店内のカウンターや中央のテーブルを見れば野郎がミチミチムキムキしていたので、俺も彼女たちは部屋でモーニングを食べた方が良いなと思い、自室に持って上がるのを了承した。
そんなこんなで。朝食を食べ終えた彼女たちが降りてきて、今現在は俺たちの作ったアクセサリーを眺めているところである。
「つくる?」
「これだけあるのに、まだ作るの?」
「じっけんだからねー」
「そう? だったら、作ってみようかしら?」
「わーい! こういうの、やってみたかったんだ~!」
チェリッシュは喜んで協力してくれるようだ。
アマンダ姉さんもこういうのを作ってみたかったみたいで、ちょっと嬉しそう。
「あの~もしかして、みんなこちらにいらっしゃるのかしらぁ~?」
「す、すみません。い、いらっしゃいますかぁ?」
おっと。今日は訪問客が多いな。
お隣のオネーサンとロベルタさんまでやって来たぞ。
もしかしてみんな休養日なのかな?
「みんないるよー」
「やっぱりぃ~? そうだと思ったのよねぇ」
「は、はいっても、いいでしょうか?」
「いいよー」
どうぞどうぞ~。ついでにアクセサリーも作ってもらえるか聞いてみよう。
お兄ちゃ~ん! そこでシルバをもふりながらノワルに突かれてる(サボってるから)なら、お仕事して~。ノワルは良い子だからジャーキーをあげよう。
「アクセサリーを作っているの? いいわねぇ~、やってみたいわ~」
「あ、アタシも、やってみたい、です!」
「おひるだすねー」
「あら~いいのぉ?」
「いいよー」
「あ、アタシも、ですか?」
「うん」
シャバーニさんもいるし、大量にお昼ご飯が必要だね。
でも大丈夫。俺のリュックは優秀だからね! こんなこともあろうかと、以前エアレーの肉を仕入れた時に、ディエゴとローストビーフを大量に作っておいたのだ。
本当は晩酌のおつまみ用だったんだけどねー。
あ、お兄ちゃん。暇してるならパンを大量に買ってきて~。シルバも着いてって見張ってね~。
俺はその間にもう少し品数を増やすべく、カウンターで調理するからね。
ペペロンチーノと、バジルソースパスタならすぐに作れるし。
オネーサンがスパイスの相談のお礼にって、珍しいカエルである『ガンプラーナ』のお肉を10キロ程手土産に持って来てくれたので、それで何か一品作ろうかな。
ガンプってだけあってのろまで巨大なカエルなんだけど、動いているモノなら何でも口に入れる習性があって、しかも自分は動かないのに素早い舌の動きで獲物を捕らえる。その舌に捕まらないように斃すのが大変なので、見かけても近付かない冒険者も多いのだとか。それを倒して手に入れた貴重なお肉なので、これまた滅多に市場に出回らないのだ。(素材のドロップ率も低い)
お肉は鶏肉みたいなんだけど、物凄く柔らかくてジューシーなんだって。
から揚げにしようかな? ギガンが砕いてくれたナッツを衣にするのもいいね。
丁度良いから、料理の方はギガンに手伝ってもらおーっと。
不器用なテオやGGGのみなさんはアクセサリー作りに苦労しているようだ。
ジェリーさんが俺の代わりに指導しているのだが、そこにアマンダ姉さんたちも加わって、やっとまともなアクセサリー教室になったような気がする。
さてさて。
この実験の結果がどうなるのか、俺も楽しみなんだよね。
俺の作った方のストラップなんだけど、おかしなことに一瞬だけ虹色に光る。
ジェリーさんも光ると言えば光る。
完成時に一瞬だけなんだけど、ボワッて感じに淡く光る色が俺とは違っていた。
俺としては、お守りなんだからこういうこともあるんだろうなって、特に気にしていなかった現象なんだけど、こうして見ればみんなと違うことに気付いた。
俺が虹色なら、ジェリーさんは黄色っぽいというか金色みたいなんだよね。
そしてその他の野郎は光ったと思えば白っぽく、逆に何の反応もなかったりする。
ディエゴなんか不気味な感じで、黒い煙みたいなのが出てた。
器用さが関係しているのか、魔力のせいなのかどうなのか。同じように作っている筈なのに、どういうことなんだろうね?
だがその結果のお楽しみは後にするべく、俺は鑑定虫メガネで確認していないし、ジェリーさんもトンボメガネを外している。(視力は悪くない)
全員が作り終えてから確認しようということで、お昼ご飯を食べてからのお楽しみだ。
結果は吉と出るか、凶と出るか。
本当におみくじ効果ばかりになったら、それはそれで面白いんだけどねー。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます