13 領主の息子到来!それにしても時間が経つのは早いね!


 最近の話をしよう。もうすぐ成人になる俺は最近ますますモテてます。ようやく生まれた俺より下の世代の男児は5人ほど、最年長は3歳でまだまだ結婚云々うんぬんはない。


 俺より年下の世代の女の子は俺との結婚をと考える家門も多いけど、正直34人いる子全員となると――多い気がする。


 そこでアルセウスが外部集落との交流を提案をしてきたから、平和な集落を探してと言っておいた数日後、本当に見つけてきてはくれたものの俺はある事実に気が付いた。


 男が少ない。平和で良い村だとは思うけど、こちらと同条件では意味がない。俺が引き受ける女の子の数が増えるのは無しにしてもらいたい。


 その後もしばらくアルセウスの探索が続き、ようやく見つけた程よい交流相手は聖教国家アブレラルという国で、海を渡った先の大陸なのだそうだ。


 アルセウスさん……海越えはムリポ。船で交流する距離なんて男女比率の解消には繋がらない。


 次の案はアルセウスが惑星の中から孤児を強制的に集めるというものだった。それすなわち拉致らち!それはやり過ぎ!


 俺が反対ばっかりするものだから、とうとうアルセウスさんも提案が雑になってきて、しまいには村の男の若返りを提案された。


 宇宙統合機構基準法で艦長以外のオス型個体へのナノマシン投与が禁止されているため、もちろんその提案も却下された。でも俺的にはなくはないと思ってた。しかし、法が許さないのならしかたがない。


 しばらくして俺とアルセウスさんの考えとは別にこの村と積極的な関わりを持ちたがる人たちが村を訪ねてきた。まさに予想外、領主の一族が関わりを持ちたがるとは思いもよらなかった。


「初めまして、私は領地アクセラの領主バルグリフ=デイゼが嫡男ちゃくなんセルフィンソン=デイゼです」


 門番は初め何事かと身構えたが、名乗った男の後ろからタノモンが現れるとようやく言葉を信じた。


 もちろん俺やアルセウスはそれを知っていた。ただその訪問理由までは知らないため、もちろん透明化したドローンを傍へと展開しておいた。


 セルフィンソンはタノモンが案内された時と同じ場所、同じ状況になったが彼の目の前には美女ではなく筋肉の隆起りゅうきした美男たちが座っていて、前回の様子を聞いて知っていた彼は少しガッカリした様子で話す。


「どうやら私は歓迎されていないようだ、前回は美女たちが迎えて話をしてくれたとタノモンに聞いていたのだが」


「確かに、前回は我々家長衆かちょうしゅうが狩りに出ていて不在だったために老人たちが出張ってくれたが、今回は我々が最初からいたのでこうして対応することになったのだセルフィンソン殿が事前に知らせを送ってくれていれば多少違いましたが」


「どうぞ、私のことはセルフとお呼びください、私も短く読んでもらえた方が楽でいいのでね。で、今回の方が通常の出迎えであることは分かりました、なので失礼に思われたのなら謝ります」


 対応をする俺の父アデジオは、「謝罪は無用です」と言ってむしろ頭を下げた。もちろんセルフの誠実な対応への感謝の会釈えしゃくだ。


「ではさっそく本題に入りたい、実のところ今日来たのはこの村の女性に関してタノモンからいい報告をもらったからなのだ。二年近くのやり取りでこの村の女性は賢く自身で考え男と対等である、そう聞いてね、ぜひ私の屋敷で働いてもらいたいと思ったのだ」

「屋敷の働き手を求めているのは分かりました、ですが女性とは?あまりに抽象的すぎますね」


「メイドなどとは言わない、資料をまとめ領地を運営する手伝いをしてほしいのだ」


 この惑星の識字率は低く、当然学も無い者がほとんどで、この村の女性の賢さと女性の多さに目を付けたといったところだろう。


「この領地は戦争で疲弊しているのに加え、私のような新参の領主によって運営されているのだが、タノモンのような官僚に徴税官として徴税させるほどに人材にとぼしい。ゆえにこの村の賢い女性の力を借りたい」


 父アデジオは少し考える様子でセルフに言う。


「……ではその話は女性らとでしてもらわなければなりませぬな、この村では個人の意見が一番重要なこともありますので」


 婚姻は強制だけど基本的に選択肢がある場合は個人の意見を尊重する、この村で限りなく少ない権利の一つだ。


「それは最初の嬉しい回答ですね、ではそちらで相応しいと思える候補者を選んで会わせてもらえますか?」


 そこからはお見合いのように村の女性が次々入っては出ていく。最初はセルフも綺麗な容姿に見とれたけれど、途中からは会話を簡略化させて回転率を上げて事務的に進めていった。


「彼女が最後でしたか?」

「そのようだ、未婚で成人している女でとなると40人くらいだったか」


「いいえ、全部で37人でした。こちらに控えた番号の人が本人希望かつ私が欲しいと思っている方々です」


 セルフは番号と横に丸の記号とその横に縦線を描いた紙を見せた。紙は羊皮紙ではなく木の繊維から作られたもので俺が諦めた文明の利器の一つだ。


 この村も木簡もっかんであることから紙は優先度が高いように見える、だけど紙を作れてもインクが作れなければ意味はない。インクの生成もある程度の工程が必要でとてもではないがリンたちの手柄とするには大掛かり過ぎた。


 そもそもこの惑星も文明のレベルは地域別で様々だし、取り寄せができるものもたくさんある。ただ商品を買う物流と金がないだけの話。


「それにしても年齢が15歳から10歳までなのはどうしてなのですか?18から20ほどが適切な年齢だと思うんですが、精神面でも親の立場でも心配ではないでしょうか」

「いえ、この村では16になると結婚していますし、10には成人していて精神面でも心配していません」


 驚いた様子でセルフはアデジオの言葉に目を見開いた。もちろんそれは成人の年齢に驚いたのだ。


「10歳で成人とはいささか早いですね。我が国全体でも法で17歳が成人となっておりますが、それはやはり男が少ないことが要因ですか?」


「それもありますが、女は7つの頃から他家で嫁修行に入り10にはもう何も学ぶことなく一人で炊事家事ができる年齢であるからこそ成人として認めているだけ。なので女は子どもが産めるからと結婚は16まではさせない決まりで、10になれば大人として認められるだけのこと」


 だから今日紹介に現れた者たちが若かったのか、そうセルフは思いつつその事実を受け入れた。



 連れて行く9人が選ばれ、その後食事を終えたセルフは一泊するために寝るまでの間に村を散歩していた。


 もちろん田舎の風景を歩いていたつもりだっただろう、でも南へ南へと向かった彼はとうとうそれを見つけてしまう。


「これは――」


 明らかに違う形式の建物と地面に敷かれた石畳は他の道と全然違う。それは領地にもない国の首都にある工場のようだ、そう思いつつ彼は建物へと近づいた。


 窓もない建物を回りを歩いてやがて一周する頃には入り口が見つかると考えていた彼は、一周して初めて入り口を見つけれなかったことに気が付く。入り口の形式が分からないだけ、それを想定してもう一度歩き出した彼はようやく見つけた明らかに他と違う模様に触れた。


 開かれた扉、足を入れることはせず扉に片手で体重を預けつつゆっくりと顔を覗かせた。中は外と違い明かりが零れていてあまりに明るいために昼間を閉じ込めたかのようで、知らないことに対しての好奇心からだろうか彼は高揚していた。


 見たこともないものが置かれ並べられ連なっている。


「……っ!」


 ただ、彼がもっとも目を見開いて凝視ぎょうしした未知はエメラルドの髪が光の加減で藍より青く輝いて、スラリとした身長に唐突に飛び出た丸みとそれらを包む布は薄く透けていて、振り向いた姿は何も隠れていない。


 顔の美しさにも胸の大きさにも彼は昼間の価値観が軽く覆る感覚に思わず声を漏らした。


「う、美しい」


「!だ、誰ですか!?」


 女はそこに自分以外がいることはないと考えていた。風呂上りで油断もしていて思わずその手に刻印を浮かび上がらせて膜の盾を展開する。


 警戒心を感じたセルフはその両手を上げて視線を地面へ向けた。


「す、すまない!勝手に入ったことは謝らせていただきたい!私はこの村の客人でセルフィンソンと言う!セルフと呼んでくれると嬉しい」


 嬉しい、そう言ってすぐに自身の異変に気が付いた。だが状況が状況だけに混乱してしまっていて異変の意味までは理解していなかった。


 女は警戒をしつつ自身の身を見て裸同然であることを考慮し、冷静に上着だけを身に着けた。しかし、それは胸を隠すことができるだけで全ては隠せなかった。


「あなたが誰かは知ってます、出て行って下さい、ここは入ってはいけない場所です」

「すまない、いや、すみませんでした。……あの、あなたのお名前を聞いても構わないでしょうか?」


「……だめです、ボク、私はもう人妻です、好意を持たれても興味を持たれてもあなたとは仲良くはできません」

「で、ですが、この村では人妻が名前を言えないという決まりはなかったような気がしますが――」


「これは私自身の決まりです!私は彼以外に名前を呼ばれたくない!だからあなたにも名前を教えない……失礼かもしれませんが、私のことが知りたければ夫のタジン様に伺ってくださいますよう」

「……すみません、失礼します、本当にすみませんでした」


 走り去る彼を見届けてようやく盾を消した女はゆっくりとその場に座って膝を抱えた。


「タジン様、はい、そうですハクラです、はい彼が、セルフィンソンさんが私たちの工房へ来て偶然扉を開けて入ってきてしまったようで、はい、もちろん何も起きませんでした、あっ私の裸を見られました」


 キーンと頭を甲高い音が響いたように彼女は頭を押さえる。通信相手が急に大声を出してしまったことが原因なのは間違いなく。


「そ、そんな殺すなんて、相手はこの土地の領主ですよ、それに私は裸くらい別に、え?タジン様が許せませんか?……なら仕方ないですけど」


 立ち上がったハクラは右側を見て、大きなカガミに映る自分の姿を通信相手に見せながら言う。


「私の裸、興奮しますか?え?本当に?本当にですか?」


 にへらと笑みを浮かべた彼女は上着を脱いでカガミにポーズをとる。


「興奮しますか?」


 それはそれは興奮するポーズだったようだ。



 セルフはその日眠ることはできなかった。目を瞑るとそこに浮かび上がる全裸の美女はまだ鮮明で、何度も何度も思い返すたびに気持ちの高ぶりを感じていた。


 彼女の名前は何だろうか、結婚していると言っていた、つまりあの体も心も全てはその男のものなのか、っく羨ましい!なんと!羨ましい!


 考えると考えるだけ彼女が彼の中で大きくなっているようで、それに比例して夫に対する嫉妬も増加していった。


「タジン……一体どんな男なんだ、彼女があそこまで信頼しているのだ、きっといい男なのだろうな」


 悶々モヤモヤと夜は一層長く感じてしまうセルフ。脳も男も反応する夜は人生の中でおそらくは無かった経験に違いない。


 翌朝、結局は寝ることができなかったセルフは、朝食を食べたあとに配膳をする少女に声をかけた。


「すみません、この村にタジンという方がいると思うのですが、どこにいるかわかりますか?」

「タジン?タジン様ならおりますが、お会いになれるかは分かりかねます」


「そう……ですか」


 落ち込む彼に少女は言う。


「タジン様は無理ですが、奥様の一人であるヒヒラ様にならお会いになれますよ」


「奥様!の一人?ですか?」

「はい、ヒヒラ様は朝食時間後よく盾の家紋の修学の教鞭きょうべんをとっていると思うので、盾の家紋の修学院へ出向いてくださいますよう」


 会釈をした少女に混乱真っ最中のセルフはつられて会釈した。


 奥様の一人、妻が複数いるのはこの村の常だが、まさかあの美女だけでなく他にも妻がいるなんて。


 この村の常識は外の世界の彼にとっては大きな非常識で、さらに村人全員が美女美男の中でさらにそれを上回る美女がいることが奇跡に思えていた。


 少女の言葉を信じ一縷いちるの望みにかけてヒヒラなるもう一人のタジンの妻のもとへ向かうために盾の家紋の修学院の場所を訪ねて歩くセルフ。もちろん迷うことなくそこへ到着して、その建物のへ入ろうとする少女へ声をかけた。


「きみ、ちょっといいかな」

「はい?なんでしょうか」


 いちいちカワイイ少女ばかりに感心するも頭は昨日の裸美女のことだらけで。


「ここにヒヒラという方がいると聞いたのだが、呼んではもらえないかな」

「ヒヒラ姉さんですか?はい、わかりました」


 テクテク入っていく姿を視線で追うと、開いているふすまの左奥へと消えていく。そして同じところへと別の少女が入ると、中から明らかに少女ではない年齢の美女が現れる。


「あれがヒヒラさんだと!」


 スラリと長い脚が時々長いスカートのスリットから太ももまで覗かせて、歩くたびに胸もたゆんたゆんと揺れて腰まで伸びた髪が馬の尻尾のように左右に揺れる。そしてもちろん顔も飛びぬけて美しい。


 唇がピンク色で薄っすらチークも入っていて、その表情が笑みを浮かべながら会釈すると期待通り美しい声で話だす。


「初めまして私がヒヒラです」


「……あ!初めまして!セルフィンソンと申します!」

「セルフィンソンさん、で、私に何か用ですか?」


「あ、え、い、そ、あの、え~」


 頭の中が真っ白になった理由は彼女の香りによるもので、花の香が鼻孔びこうに優しく香と彼女の背後に花が浮かんでいるかのようだった。


 そんな状態の彼が次に言葉を話せたのは昨日の美女が脳裏に浮かんだからだ。


「あの、ヒヒラさん」

「はい」


「昨日の夜のことですが、私が失礼をしてしまった女性がおりまして、彼女のことでお話が――」

「あ~あなたが昨日の、では彼女のことはお話できないですね、夫より話すなと釘を刺されておりますので」


 そうなることはもちろん理解していた。だが彼はそれで諦められるほどその美女への気持ちは軽くはない。


「で、ではタジンさんに直接会わせてくれないかな、彼に直接聞くのはかまわないと言われたんだけど」

「そうですか、では……工房へ向かってください」


「工房ですか?それは昨日の不可思議な場所のことですか?」

「あれは工房ではなく個人の私室です、工房はこの盾の家紋の一角を使わせてもらっている建物です、私が案内しましょうか?」


 ぜひ、そうして彼はヒヒラと一緒に工房へと向かった。


 工房は煙突があり木製の平屋で一般的な建物のように見えセルフは、まともだ――と声を漏らした。


 そしてようやく昨日の彼女との再会に心を高ぶらせた。だがその建物の中には別の女性が一人と少女が一人いるだけで夫であるタジンさえ見当たらなかった。


「ヒヒラさん、タジンさんも彼女もいないようですが」

「?え?ここにいるでしょ?ね、シャユラン」


 シャユランと呼ばれた女性はこれまた彼が目を見開いて凝視するほどの美女だった。だけどさすがに彼も昨日の美女を想いもう一人の少女へと視線を向けて平静を保とうとする。


 小柄で胸もなく顔は確かに可愛らしいがまだまだ子ども、他の美女を見慣れた彼には全然響かない。そう思っていた彼の前でヒヒラが少女の横へと移動し、その胸を押し当てるようにして抱きつく。


「この方が私やシャユランの旦那様でタジン様と言います」


「……」


 全思考の停止、加えて美女ではないものの美少女だと思っていた人物が男で思い人の夫、生足でスカートを穿いている彼女が彼で彼が旦那で男だけど美少女で、上目遣いで目をウルウルさせている彼女が彼で男で美少女?


「……」

「オジサン、誰?」


 声も可愛くて仕草も女の子で男で何がどうなってこうなって、そして私はこの少女が可愛くて、私は何をしにきたのだろうか。


 完全に困惑してるセルフに対してタジンは生足をわざと絡めて片足を両足で挟む。


「オジサンだぁれ?」

「っくぅ!」


 体が密着しているのに本来あるはずの男の象徴が当たっていない、この子は男ではなく女で私は彼女らにからかわれている?


 混沌こんとんとする彼が知るはずもないが、タジンの体は超科学で体の一部を体内へ隠すことも可能で今は男だけど無い状態になっているだけ。


 からかいが行き過ぎた結果セルフは頭がガクガクと震えだした。タジンはバッと体から離れて自身のやり過ぎを認識した。


「タジン様彼が壊れちゃいますよ」

「……だな、声まで作る必要性はなかったかもな」


 少し反省したタジンはセルフの前で椅子に座るも、まだ少女の振る舞いのままで話す。


「で、オジサンは誰なのかしら?私の妻たちに何かご用?」

「……き、きみは男なのか?」


 タジンは自身の格好を一瞥いちべつすると、ゆっくりとうなづいてニコリと笑って言う。


「これは妻の趣味に付き合っているだけですわ」


「そ、そうなのか、で、ではタジンくん、いやタジンさん、昨日私が裸を見てしまったあなたの妻に謝罪をしたいのだけれど、名前も聞かせてもらえなかったのできみに聞こうと思って探してたんだ」

「昨日の?あぁ、あなたが無遠慮に私室へ侵入して裸を見た挙句に名前を聞いた私の妻のことですね」


 少女?の棘のある言葉にセルフは視線を泳がせた。しかし、今更失敗は覆らないと彼はタジンに視線を向けて言う。


「それを謝りたくて、だから名前を聞かせてほしいのだ」

「え、やだ」


 もちろんそうくることは予想していた彼は頭を下げてもう一度誠心誠意全霊の気持ちを込めて言う。


「私のできることならなんでもする!だからせめて名前を教えてもらえないだろうか!」


 生足を目の前で組むと、「何でも~?」とそれを聞いて悪戯いたずらな少女感を増して言う。


「オジサンってザコなの?ほ~ら私の足を舐めて、ほ~らこれくらいできないと教えられないかな~」


 妙にノリノリの彼女?はどうやら完全に役に入りきっている様子だった。靴を脱いだ足先はやけに女性らしさがあふれていて、それがナノマシンによって変化させているなどとは誰も思うまい。


 セルフは脳内で光速で、「いや女の子の足を舐めるくらい」とご褒美だとでもいうかの如く判断して膝をついて足を手に取って舌を出した。


「ちょいちょい変態紳士さん、私の旦那の足を舐めようとするなんてさせるわけないでしょ、あなたが聞きたい名前はハクラよハクラ」


 完全に怒りを表すヒヒラはタジンを椅子ごと後ろへ下げる。


「だめですよタジン様、性癖が歪んで男に興味が出たらどうする気ですか」

「大丈夫だよヒヒラ、だって精神汚染はどうやっても私には効かないのよ?だからこんな風に話してても男どころかショタにも目覚めることはないわ」


「タジン様ではなくてですね」


 二人がそんなことを話し合っている間、冷静になったセルフは地面に頭をこすりつけていた。


「……くっ!」


 私は今何をしようとしていた!男の足を舐めようとしていただと!錯覚で女の子に見えていただと!舐めていたらきっと立ち直ることはできなかった!危なかった!


「って!今!ハクラと――」


 ようやく分かった美女の名前、裸の姿に名前を重ねてようやく完成した芸術のような作品のような感覚に彼は少しの間固まっていた。

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