お兄ちゃん、修行する
第3話 お兄ちゃん、魔族が恐れる快進撃 . 1
エレンちゃんが出発してから、早1週間。
お兄ちゃんは寂しいのです。
一人が寂しいのではない。
エレンちゃんが隣にいないのが寂しいのです。
不安で眠れぬ日も多くありました。
そんなときはエレンちゃんのこれまた三重にして隠蔽も掛けたエレンちゃん危険発音器を密かに抱いて眠るのです。
この一週間、低級の魔族や少しの上級魔族、そして魔獣を行く道行く道で殲滅しまくっていた。
自分用に作った異空間袋は10畳一部屋分は入るように作ったのに、これまたパンパン。
入りきらない素材は焼却するしかなく、もう少し必要な素材を集めればもう一つくらい異空間袋を作れるのに。
そろそろ近場は探査に邪魔ものが引っかからなくなってきた。
警戒して退避したのか、滅んだのか。
そろそろ次の街の冒険者組合で素材を換金してもらわなければ。
必要な素材のみそのまま所持して、ほかはぽいっ。
少し歩き、今いる森を抜けると大きな道に出る。
舗装された道ではなく、馬車や人が何度も踏み固めてできた道。
その道はまっすぐ続き、先には栄えてそうな街が見える。
大きな建物や屋台だろうかいくつも連なって並んでいるのが遠目でもわかる。
人でたいそう賑わって、景気がよさそうに感じる。
まだ距離もあるがたくさんの料理の匂いもしてきそうだ。
「エレンちゃんはまだ途中かなぁ。一緒に美味しい料理でも食べたいなぁ。可愛いお洋服もたくさん買って、疲れたらカフェで一休み。書店で魔導書でも購入して話を咲かせたり。はあ……」
吊り橋を渡り、街の入り口の門番に入場許可を取りに行く。
「こんにちは。街への入場の許可をお願いするわ」
「こんにちは。街へのご用事はどのような?」
「素材の換気と数日の滞在よ」
「ほう。冒険者の方でしょうか」
「ええ。これが冒険の書ね」
冒険の書。その名の通り、小さめな本であり、そこいろいろな記録が保存される。
内容を読めるのは本人のみであり、本と言っても内容は魔法文字で通常のページは白紙のように見える。
表紙には持ち主の名前、個人レベル、冒険者ランクが記入されており、これは別の人でも読むことができる。
「たしかに。……ふむ。おお、高レベr……えっ⁈ A級の冒険者様でありましたか!! 二つ名をお伺いしても⁈」
「ん~、ごめんなさいね。自分で名乗るには恥ずかしいのよ」
「む! 申し訳ありません!! 自分が冒険者にあこがれているだけですので、失礼をば」
「大丈夫よ」
「ありがとうございます。では、こちらに。こちらの水晶玉は見られたことが多くあるかと存じますが、説明させていただきます。ここの青い水晶玉は触れられた方が一般的に罪を犯していないか、また犯した罪が何なのかが現れるものです。こちらに触れていただき、問題がなければ、こちらの紙に本日の日付とお名前をご記入いただきたく」
「ええ。わかったわ」
水晶玉に触れる。
少し点滅したあと、緑色に光り消える。
「ありがとうございます。問題ございません」
そして、日付と名前を記入する。
「ありがとうございます。署名がいただけましたので、入場されて大丈夫です。では改めて、『死霧魔界戦線』グランデリアへようこそいらっしゃいました」
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