第15話評定
三人での会議がまとまると翌日に主だった者たちが集まった。
河野道宣
家老
重見通継・垣生盛周・大野友直・村上通康
奉行職
大野直昌・垣生盛国・戒能道運・平岡房実・町田経堯・南通忠
家臣団
忽那通乗・忽那通著・二神重直・二神弥五郎・戒能伊織・和田道勝
曽根高昌・武田信充・正岡経政・今岡伯耆守・土居通利・黒川通堯
「皆の者、兄上はもうしばらくで来るのでしばし待たれよ」
河野道宣は全体にそう告げると盛国に話しかけた。
「垣生殿は御子息が二本刀と言われるほどになり将来は安泰ですな。これからも兄上をよろしくお願いします」
「いやいや、まだまだ若輩者ですので道宣様も機会があれば是非とも指導してやってくだされ」
重見・大野・村上
「重見殿と大野殿は種子島を任されたとか羨ましい限りです。今度、どのような物か伺っても良いだろうか?」
「まだまだ修練を始めたばかりで数もそろってはおりませんので戦力とは言えません」
「友直殿のおっしゃる通りですが村上様が良ければいつでも歓迎しますので修練の様子を見においでください」
「それはありがたい。よろしく頼む」
町田・大野直昌
「兄上殿が二本刀と呼ばれて利直殿も鼻が高いだろうな。しかも大野領ではシイタケの栽培にも成功して順調なことで羨ましい」
「父も麒麟児だと喜んでいます。シイタケ栽培など私も半信半疑でしたので驚きでした。それに盛国殿の広めた田植えによる収量の増加があってこそです」
戒能道運・南・平岡
「戒能殿もそうお考えですか。私もそう思います」
「うむ。今こそ宇都宮を打倒して領地を広げるのだ。安芸では毛利と言う勢力が力を付けていると聞く、それらに対抗するには今の領地だけでは足りないだろう。」
「戒能殿と南殿の意見も分かりますが侵略になりますと慎重に事は運ぶべきかと思います」
「平岡殿は砥部焼でも儲けておるからいいのだろうが戒能家にも何か欲しい物よ」
忽那道乗・道著・二神重直・弥五郎
「父上と二神殿にある小早改が量産されれば海に怖い物は無し海の勢力図を書き換えれますな」
「だが資源は有限だからな、木は育つのに10年かかるのを考えれば増産は難しいだろうな」
「確かに木はスグには育ちませんが船を作れぬというほどとは思えません。それは何故でしょうか?」
「殿はそれ以外にも色々と考えておいでだろうからな」
「いかにも、道乗殿の言われる通り。特に内政面で力を入れておられるから外から人も来ておるし町の拡大も必要になるし船作りの職人には漁船を作らすのが先だろうな」
「地引網も順調ですので人が増えるのは活気が出てよいですね」
戒能伊織・和田・黒川
「戒能伊織殿ですな。お初にお目にかかる。和田家を引き継いだ和田道勝ともうします。過去の事は水に流して頂ければ幸いです。よろしく頼みます」
「こちらこそ若輩の身ですが、お力になれることがあれば相談ください。」
「失礼します。黒川通堯です。殿から東の備えを任されておりますがお二方の領地がなくば生命線を絶たれるような物です。これからもより良い関係をよろしくお願いします」
曽根・武田
「では曽根殿の領地で作られた木蝋でしたか。あれは良い品ですな私の領内でも広く使っております」
「あれも殿のお考えで製法まで記された通りにつくったものです。お陰で領民も潤って商売も坂になり始めました」
「何か特産品でもあれば安芸から落ちのびた我等、武田家に領地を与えてくださった恩を河野家に返すことが出来るのですがな」
今岡・正岡
「今岡殿の領地の菊間の鬼瓦ですが職人を誘致して増やされてはどうでしょうか?越智郡でも有名で外から来た人も魔除けに鬼瓦にしております」
「確かに、職人は忙しくしておりますので弟子を新たにとるように伝えてみましょう」
など各々が雑談をしていた。
それからしばらくして晴通は部屋へと入り腰掛ける。
「これより評定を行う。今回のように大人数を一度に集めることはそうそうないだろう。皆の意見を聞かせて欲しい」
真っ先に戒能道運が意見を述べる
「恐れながら、宇都宮領への侵攻を提案いたします。以前の佐礼谷の合戦でもわかった通り宇都宮の兵は弱兵です。今の河野家に恐れるものはありません」
その提案に村上・南・武田・曽根・土居は賛成した。
大野友直は反対した。
「戒能殿、それは時期尚早というものです。」
「何故、時期尚早なのですかな?」
「まず2点あげるとしたら大義がない事と大友殿からの仲裁が入るだろうという事です。」
「大義などあなたの弟である直之殿の引き渡しをしない時点で十分でしょう。それに大友殿の仲裁が入っても有利に進めることが出来るのだから良いではないか」
「弟の事は申し訳ない。だが今の時点だと宇都宮を併呑することはかなわない。また多くの兵を動かすとなると長期戦になる。そうなると大友殿だけでなく土佐一条家も加味する必要も出てこよう」
そこまで話したところで晴通が割って入る
「我も友直の言を良しとする。だが戒能家の言を軽く見たわけではない。国内にそういう声が上がっているのも承知している。だが今は辛抱してくれ」
そこまで言われると戒能道運も引っ込むしかなくなる。
「ほかに意見は無かろうか?」
という晴通に今度は正岡が答える
「私からも1点、殿の改革のお陰で今の越智郡は九州・堺の途中の船着き場として栄え始めております。ここで港の整備を行ってはいかがでしょうか」
「私も賛成です。今の伊予国は売れる物がありますので船は来ますが今の港では足りません。また候補地として波止浜の開発を勧めます」
と村上・今岡・忽那・二神・武田と賛成の意見が続いた。
「だが港なら興居島を開発したのでもよいのではないのか?」
「いや、興居島まで船をつけても遠回りになるだけでそこまでして潮待ちや風待ちでは来ないだろう。村上殿の言われるように波止浜を更に大きく開発した方が良いと思う」
「ほかに反対はいないか?ないようだな?では開発は村上の責任の下で正岡が指揮を取れ」
「承知しました」
「次の意見は?」
「黒川通尭でございます。東への備えとして足軽と鉄砲の配備をお願いします」
「それに関しては我に考えがある。一両具足と言う制度しくことにする。」
「一両具足ですか?」
「ああ、事前に何かあった時は兵として招集する者を決めておくのだそこで狼煙などの合図を見たらすぐに参集するというものだ。その兵は年間10石で雇い10日に1回訓練に参加する事また戦場での乱暴狼藉は死罪とする。さらに鎧兜一式を提供するので常に持ち歩くのだ。そうすればかなり参集時間が早くなるので早期の対応が可能となるし装備も統一されているので部隊としても使いやすい。また今は守勢で構わないのだ連弩を回すのでそれで対応してくれ」
「畏まりました」
そこまで話したところで垣生盛国が手を上げる
「殿よろしいでしょうか?」
「ふむ。申してみよ」
盛国
「はっ。治水の整備を提案します。伊予川を筆頭に川の治水工事をするのです。そうする事によって新田だけでなく収量も増加します。」
それにいち早く意見を述べたのは垣生盛周であった
「伊予川の治水など、どうするというのだ。あの暴れ川を沈める方法があるのか?」
盛国
「あります。ただ簡単な工事ではないので伊予川だけでも1000名を動員して5年はみないと難しいかと思います」
村上
「それまで何もないとは考えにくい。小さな川の治水なら可能だと思うがそれではダメなのか?」
盛国
「それでは安全な新田が手に入りません。それに今後の河野家に必要な事なのです。」
土居
「どのように必要と言うのかね?」
盛国
「戒能殿が言われるように他の領土に侵攻した時に乱暴狼藉をしなくても良いという心のゆとりを持たす為です。衣・食・住、足りて礼節をしると言う言葉があります。人は着るもの・食べ物・住むところがそろって初めて礼節を取るという言葉です。なので河野の兵に乱暴狼藉をさせない侵攻をすれば一揆の心配もなく進むことが出来ます。」
武田
「今の収量でも以前に比べてかなり良い生活になっておるが盛国殿はまだだとお考えですか?」
盛国
「はい現状で侵略をしないのであれば問題はないと思います。ですが領地を広げるとお考えなら更に収量を上げる必要があると考えております。」
晴通
「ふむ、盛国の言を入れる。工夫を3石で3000名雇え。1000名は盛国が伊予川の治水を勧めよその周辺の川の治水は町田・南にそれぞれ300づつの工夫で作業に当たれ。今岡と武田は200づつの工夫で越智郡を中心とした治水に当たれ。忽那は300名の工夫で興居島を軍港として開発せよ。残りの工夫700名は波止浜の開発にあてる。それに伴い来年より5年間は7公3民とする。」
重見
「殿!税の引き上げまでしなくとも治水工事は出来ましょう。お考え直しを」
晴通
「確かに治水は出来るだろうが軍備が出来ぬではないか。足軽は1000名まで増員する。足軽の500は友直が指揮を取れ。残りの500は我の指揮とする。一両具足は2500名として500名づつ重見・忽那・戒能・平岡・黒川とする。スグに仕掛けることはないが平和ボケせぬように鍛錬を怠るなよ。よいな?」
「「「「「「はっ」」」」」」
「解散とする」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます