第5話 戦評定
俺は軍議に当たり主戦場としての場所で迎え撃ちたいと提案をする。
「皆に聞きたい佐礼谷を主戦場にもっていこうと思う」
俺の指した場所は盆地で周りを山で囲まれた場所だ。
「確かに、ここなら包囲して弓を射るだけでも宇都宮に痛手を与えることが出来ましょう。ですがここまで全員が歩いていくには山道は幅が狭くないですかい?」
忽那氏から賛成しつつも意見が出る。
「それに海道沿いも無警戒と言うわけにはいきますまい?」
垣生氏からの意見が出れば二神氏から
「なら我が水軍が街道沿いを行き肱川から上陸して宇都宮の大洲城を強襲しましょうか?」
「今回はそこまでは無理だろう兵力的に少しでも宇都宮に、あてたいのだ今後を有利にしたいがこの1勝負で片が付くとも思ってないのでな」
と俺が補足する。
「なれば、二手に分かれますか?」大野
「いや、それは戦力の分散にならないか?」と大野氏の意見を否定すると
「そうだとも。漢なら真っ向勝負よ!」
ちょっと黙っててね?忽那さん(のうきんくん)
「兵力の数では勝っているが相手には勢いがあるから油断は出来んし無駄な犠牲は出したくない。」
「申し訳ありません我らが勝っていれば」
いちいち謝らんでいいわ!と思い首をふる。
そういえば二神氏の話使えんじゃね?
「二神氏は大洲でなく宇都宮を後ろから強襲して出てきたところを本体でたたく名付けてキツツキ戦法!どうだ?」
知恵では失敗したらしいが成功できれば絶大な威力のはず。
「失敗した時の被害が大きすぎるのと与える痛手も大きいですがよろしいので?」
と垣生氏が確認してくる。うんダメだね。なるべく危険は避けたい。(リスク管理は大事らしいからな)
「ダメか、他に良い案はあるか?」
と確認をしてみると平岡氏から意見が出た。
「はい。皆の意見を合わせれば出来ます。」
どういうこと?
「まず二神氏と忽那氏は水軍を率いて垣生氏もつれて双海村まで行ってください。」
「「おう!」」
「分かりました」
「双海村に着いたら二神氏は2晩すごしてください。忽那氏と垣生氏はここに上灘から合流できる街道がありますので、そこから合流してください。」
「おう?」二神
「おう!」忽那
「私と殿の部隊は山道から佐礼谷へ向かい
殿は陣を敷き私と忽那氏は左右の山に隠れます。殿と垣生氏が本隊として正面で構えてください。その時に上手く行きかう人々に街道と二手に分かれていると話をばら撒きます。そうすることで本体の少なさに騙されてくれたらいいのですが。あとは3方向より矢を射かければ良いのです。そうすれば多少の痛手で引いてくれるでしょう。いかがでしょうか?」
「平岡殿、私の役目は?」
「二神殿は偽装工作ですが?」
「戦には参加できぬか?」
「ですが垣生殿が話もしていますように警戒は誰かがしなくてはなりません。」
「ぐぬぬっ」
二神氏もそれだけじゃあ楽しくないよね
まあ何もしないよりかはマシな事でもお願いしようかな。
「ならば各村で農民を集め二神・忽那の舟に乗せ双海村で陣を敷いているように見せかけよう。万が一にも宇都宮が攻めてきたら二神氏が殿しんがりとなり農民を逃がしてくれ。あと二神氏は双海村の農民にも呼びかけ戦後処理を各村の農民と双海の農民とで佐礼谷の復興に尽力してほしい。」
「はっ、わかりました。」
とシブシブ納得した。次があれば先鋒にしてあげよう。
(あと流石に宇都宮も娘の為に中央突破まではやらんだろう。それくらいの常識は持ち合わせているはず)
「では二神は200忽那・垣生は各150を双海まで行き上灘で二神は陣を忽那と垣生は山越えして合流を俺と平岡は山道で各250を連れて佐礼谷で陣を敷く攻撃は太鼓で合わせる。皆、頼むぞ!」
「「「「「「はっ!!」」」」」」
と皆が帰る中、垣生盛周が話したいことがあると残る。
「それで要件はなんだ?」
「はい。村上清月に情報を流すのをさせても良いでしょうか?」
と盛周が答えた。
「ふむ。・・・今のところ商売は順調だし、これを最終試練として使うか、これでダメだったら援助は打ち切る良いな?」
「はい!安心してください彼ならやり遂げます。」
「そう願うよ。それでそれだけか?」
「もう1点は米の件ですが、殆どの者が肥えたのではなく呪いか何かで腫れたのだとかあれを食べると祟られるだの、適当なことを言うので困っていましたが中にはこんなに大きく育てたら来年は米や粟が出来ないのではないかと心配するものも居ました。それに関しては殿の言われる通り経験が足りないので、もう数回やって見せれば良いかと思います。」
そうだろうな今も奇人変人扱いだからなぁ。
「普及させるのに時間がかかるのは仕方ない。理解してやってもらうのでも時間がかかるようだしな」
「はっ。ただ有難いことに皆の中心人物の1人で邦三郎と言う者が率先して学び、やって見せてくれているのでもう2・3年も待てばある程度の普及、5年後には安定してほぼ皆新しいやり方になってると思います。あと千歯扱ぎは邦三郎の助言もあり完成させておきましたので次から使用できますので量産体制も考えておいてください。」
名前を聞いて千歯扱ぎがトラクターに進化していく過程を想像してちょっと吹きそうになった。
伊〇邦三郎が転移して来たとかじゃあないだろうな?
「分かった木材のことなら大野氏が良いだろう完成品と制作したものを友直のところに持って行くといい書状も送っておく。」
「はい!ありがとうございます。」
「では戦の準備、ぬかるなよ。」
軍議も解散後、今度は弟の道宣との相談である。
「久しな。」
「はい。兄上も健勝で何なによりです。」
「して話なのだがな留守を任すがもし何かあった際は重見と来島を使え。本当は垣生氏か平岡を残したかったのだが作戦上、難しくてな。許せ。」
「大丈夫です。それより「使え」と言う事は兄上は懸念がおありで?」
「分かっていようが、やはり戒能の動きが気になるな人を侮る性質たちだからな。俺と主力がいないとなると何か動き出してもいい機会だ。念の為だが和田も気を付けておけ驕る癖がある。」
「はい。短い期間でしょうし何かできるとは思いませんが用心しておきましょう。」
一方、宇都宮
宇都宮豊綱うつのみや とよつなも評定を開いていた。
「河野は主力の大野を破られ重見は過去の反乱から今や落ち目で警戒するべき来島村上も内乱で信用がないと来ています。ですので頼みの綱は水軍の忽那になりましょう。水軍で双海まで渡り陸路で大洲城を目指すのです。」
と家臣の水沼左京
「ならば我らはどう動くとする?」
豊綱は周りの家臣を見渡しながら意見を求める。
「無理に通ることもあるまい。山道なら水軍も関係無い犬寄峠を越えて河野家に打撃を与えて和睦の条件として友直の資料をすべてをもらい受ければいい事、簡単ではないか」
というのは井上重秀
「ですが痛手を与えたとは言え大野家の戦力は無視できませぬ後顧の憂いを断つためにも先に大野家を叩きませぬか?」
大野直之は対大野を主張した
「ならば曽根に婿殿が言われる金を少し分け与えるので大野とにらみ合いをしてくれと頼んではどうでしょう?」
祖母井之重うばがい ゆきしげは進言した。
「妙案じゃな!大野への備えはそうしよう。良いな婿殿」
そういわれると直之はおとなしく引き下がる。
「さすがは義父でございます。これで金は宇都宮のものですな。今こそ湯月城まで攻め入って真の伊予の守護として河野を打倒しましょう」
「ふむ。それも悪くはないな」
「ですが水路で来るであろう河野家への対処はどうしますか?さすがに放置できませんが」
祖母井は改めて海路の軍への対処を確認する。
「それでしたら私が大洲城に残り。義父が戻るまでの時間稼ぎくらいはしてみせましょう」
「頼もしき言葉だ。さすがは婿殿、後のことは頼んだぞ。婿殿には300の兵を預ける。祖母井・水沼・井上・野村の1000の兵で進軍する。皆は、すぐに出陣の準備を始めよ。あと双海の上灘に物見をだすのを忘れるな。」
「義父、曽根殿にはだれが向かいましょうか?」
「祖母井は曽根殿への交渉を任せよう。その後、本体と合流するように」
「はっ」
結果としては上灘に大きな陣を敷いており水軍も来ているという情報が入った。
そのことに増々、勝利した気分で豊綱は意気揚々と進軍していった。
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