第一章 第14話「肉体の進化と精神の堕落」

 魔道鑑定施設に連れて行かれた僕とノア様。

 

 まず僕のステータスを鑑定する事になった。

「レン君、私は外で待ってますね」と彼女は言う。僕は頷き扉を開け奥の魔方陣の中央の水晶の前に立つ……

 そして職員は僕にステータス測定する水晶に手を置くように指示をする。

 僕は手を置き暫くすると僕のステータスが表示された。


『名前:レン・ヨルク』

『年齢:18歳』

『性別:男』

『種族:人間族』

『レベル:2』

『HP:27/28』

『MP:18/18』

『攻撃力:3』

『防御力:5』

『魔力:19』

『素早さ:2』

・ユニークスキル 【細菌・ウイルス耐性】 【免疫強化】

・ジョブ【付与魔導士】


 僕は奴隷になった時『魔力:0』だったはずだ。何故僕に魔力が付いたのか?


 「あの奴隷の過去の鑑定結果を持ってきてくれ。」

 グエル隊長がそう言うと鑑定施設の職員が書類を持ってくる。

 


『名前:なし』

『年齢:18歳』

『性別:男』

『種族:人間族』

『レベル:1』

『HP:2/20』

『MP:0/0』

『攻撃力:2』

『防御力:4』

『魔力:0』

『素早さ:1』

 ユニークスキル 【細菌・ウイルス耐性】 【免疫強化】

 あの時僕が盗賊から保護されて不法移民として奴隷になった時の鑑定結果だ。


 グエル隊長はあの時と今の僕のステータスを見比べる。

 「冒険者となりレベルが上がったのは分かるが、魔力が付き【付与魔導士】のジョブも付いてる」

 「君はあれから魔導士として訓練を受けたのか?それでも【付与魔導士】は魔法学校で2年は訓練を受けて成れるジョブだ。」

 「あの時の鑑定は不十分でミスがあったというのか?」

 グエル隊長が訝しげにそう話す。


そして次はノア様の番になる。彼女は魔力測定器に手を置き暫くすると数値が表示された。

「なんと!」職員の声が施設内に響く。


『名前:ノア・ヨルク』

『年齢:不明』

『性別:女』

『種族:不明』

『レベル:不明』

『HP:140/148』

『MP:不明』

『攻撃力:35』

『防御力:42』

『魔力:不明』

『素早さ:56』

・ユニークスキル 不明


 「不明が多いのは隠蔽スキルか?攻撃力や防御力等はランクDの冒険者に相応する能力だが…。」

 グエル隊長がノア様に話す。

 「ノア殿は魔法はお使いになられるのか?」


 ノア様は机に向かいメモにペンを走らせグエル隊長に渡す

 『回復魔法と水系統の魔法が使えます。』

 「これ以上隠蔽スキルを詮索するのは御法度だ、了解した。」グエル隊長が言う。


 「ギルドの依頼の仕事の帰りだったな、疲れてるのに御足労を掛けた。ご協力感謝する。」


 「この世界のすべての者は魔法を使える者、使えない者の2つに分けられる。10歳くらいでほぼ魔力があるかないかは決まる。しかしごく稀に20歳を超える年齢でも魔力が備わる者もいる。」

 「君は極めてレアなパターンの人間かもな」


 グエル隊長は最後にそう言うと若い兵士に何かヒソヒソ話をしながら部屋を出て行った


 僕らも魔道鑑定施設を出て帰路に就く。辺りは夜も更けて真っ暗だ。

 今日は長い一日になった。

 夜更けなのでノア様は僕の腕をギュッと掴んで歩く。

 「僕に魔力が備わったのなら今まで足を引っ張る事しか出来なかった僕も戦力になるかもしれません。」

 

 「レン君はゆっくり冒険者に慣れていけばいいですよ、あまり焦らないで下さい」

 ノア様は少し興奮して話す僕をたしなめた。


 「今日は疲れましたね……」そう言いながら家の扉を開ける・・・

 家に入ると鞄の奥からピョコっと異世界リスが出てくる。

「キュ!」と鳴きながら僕の肩に乗る。

ノア様は「レン君、この子の名前は?」と言う……

『いざ、連れて帰ってみたものの、名前を考えていなかった…、この異世界リスは”バナナリス”に似ているな…』

「”ナリス”っというのはどうでしょうか?」と僕が言うと彼女は「可愛い名前ですね。きっとこの子も気に入ると思いますよ」と笑顔で言う。

『この笑顔を見るだけで幸せだ』と思いながら僕も笑う・・・ 。

今日は夕食は干物の残りと簡単なスープだけにした。


 そして夜になり僕らはベットに入る……すると異世界リスの”ナリス”も付いてくる。

「ピギュ!」と鳴くので頭を撫でてやる。鞄に入るよう促すと安心したのかそのまま鞄の中で眠ってしまったようだ。


 そして僕らはベットで抱き合った、疲れてお互いあまり身体を拭いてないので少し匂いがある

 しかしそれは不快ではない。

 

 濃厚なキスも慣れてきた。 そして僕たちは裸になった・・・。


 「レン君・・・。」と言いながら僕の唇にキスをしてきた・・・

 暫くして彼女は唇を離し抱きしめてくる。


「ノア様……」僕は息が切れていた。彼女の顔も少し赤くなっている。

「レン君・・・。」いつになく積極的なノア様に僕は気持ちを抑えられない。


 「ノア様すみません、僕は…」

 「魔族は排卵をコントロール出来るので大丈夫です」ノア様は僕の胸に顔を埋め恥ずかしそうに話してくれる。

 彼女の頭をポンポンとする。ノア様がどうしようもなく愛おしい。


 僕らはまた一つになる。


 そして僕らは裸のまま眠りについた……。


 翌朝目が覚めるとノア様も起きていた。

「おはようございます……」と挨拶すると彼女は嬉しそうに僕に抱き着いてくる・・・。

 そんな可愛いご主人様の頭を撫でながら2人で起きる

 そして軽い朝食を取った・・・


 「今日依頼をこなすと遂に冒険者の仲間入りですね。」いつになく明るいノア様に朝から癒される。

 その後、僕らはお湯を鍋にはり、少しずつ水を入れて冷ましながらタオルで昨日の汗を一緒に拭く事にした。昨日は疲れてちゃんと身体の汚れを落とさずに行為にふけってしまった。昨日の情交は激しかったので朝から少し臭いがする。


 僕らは服を脱がせ合うと裸になりタオルでお互いに拭きあいっこする。

 ノア様の脇や股を丹念に拭いている僕を見た彼女はクスッと笑った後、僕の首を丁寧に拭いてくれる。


 その後水場に移動してぬるい湯をお互いかけ流す。改めて朝見る彼女の身体はとても綺麗だった。そして僕は彼女にキスをする・・・。

 ノア様は僕の猛り立つものから目を背けるが、僕はノア様の手を引きお互いの裸のままベッドに向かう。

 「レン君、お互い身体を綺麗にした後ですし…。」とノア様は消えいりそうな声でつぶやいて初めて僕の気持ちをたしなめた。


 「あ、あのすみません。」僕の謝罪にノア様は申し訳なさそうに俯く。


 その時、僕は昨日のステータス鑑定の事が頭をよぎった。


 図書館で読んだ『人間族と魔族の交配』という本

 あの本に書かれていた”肉体的な契り”で人間の体内に魔族の体液が入った事により”自己耐性”と”抗体”が出来るという記述。


 そして僕が魔力を持てたという事実。


 「ノア様、僕は奴隷になった時の鑑定で魔力0から短期間で魔力が増幅しました。【付与魔術師】というジョブも持ってると昨日鑑定されました。」

 「ノア様はどう思います?」


 ノア様は少し考えてから口を開いた。

「も、もしかして私との”肉体的な契り”で魔力が付与された…?」

 

 「僕はそう思います。ノア様との契りしか考えられません。」


 それはもう僕らの情交を止めるものが何もかも失われた瞬間だった。

 僕らは声による魔障への耐性と言う”言い訳”の他に、更に魔力付与という”建前”をも持ち合わせた。

 

 『決してただの快楽の為でない。』それはノア様も抵抗できない自己欺瞞だった。

 

 その日僕らはろくに飯も食わずに、何度も何度も体力が続く限り肌を重ねた。

 翌日も外出は二人で食材を買いに行くだけで、ずっとベッドで色情に支配され抱き合っていた


 異世界リスの”ナリス”は時折鞄から頭を出し様子を伺うが飼い主の二人がずっとベッドで抱き合ってるので家の外に出て日向ぼっこする。


 その次の日も僕らは情欲に溺れ自堕落な生活が続く


 そして僕らの退廃した共依存はその日、終わりを迎えることになる……


 僕は胃液すら吐くような苦痛で床をのたうち回り、痙攣してうめき声を上げていた……



 

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異世界行っても無能な弱者男性、仮面の魔族ハーフの奴隷になる 【R15版】 代仙ハク @DaisenHaku

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