第一章 第13話「グエル隊長との再会」
暫くしてノア様は涙を拭き立ち上がり僕に言う「さぁ、行きましょう。」
彼女は僕の手を引き歩く……
東に向かい歩き30分が過ぎた頃、僕は見覚えのある木を見付ける「ここです!」僕はいつになく元気な声が出る。そしてあの僕がこの異世界で最初に目覚めた森の入口に着いた。
「今日の仕事は薬草の採取と周辺の調査でしたね」
異世界で目覚めた場所やノア様と出会った場所に来て本分を忘れていたので再確認するように話す。
ノア様は「はい。」と答え僕の手を取り森に入る……。
「レン君、この辺は……」
「そうです、僕は記憶を失い2週間ほどこの辺りで暮らしていました。」僕は笑顔で答える。そして僕らは森の奥へ入って行く……
暫くして小さな川がある場所に着く、その周辺には薬草が生い茂っている……。あの時の僕は薬草が何なのか全く分かっていなかった。
ノア様は家に薬草の図解を置いてるので今の僕は多少は分別がつく
僕たちは川の畔で休憩する事にした。「レン君、ここら辺はあまり魔獣はいないですね」
「2週間住んで小動物とヤギくらいしか見掛けませんでした。」
「では今日はこの川のあの上の森を探索してみましょう。薬草が見つかれば今日の仕事もすぐ終わりますよ!」
ノア様は笑顔で答える。「そうですね!レン君と一緒になら楽しいですね」
そうして僕らは森の奥の川を渡って森に入った。
暫くすると木の幹に生い茂っている薬草や、葉っぱや枯れ木で雑に作った寝床の跡がある。
ノア様は「ここは誰か住んでいるのでしょうか?」と言う……
僕は笑って答える。「いえ、これは僕の作った雑な寝床です。まだ残っていたんだ…。」
僕は懐かしみながら思う。『あの時はただ毎日生き延びる事だけだった…』
そして僕らは森の奥へと進む・・・ すると”ポツリポツリと雨が降り始める。
そして風も少し出てきたようだ。「ノア様、雨が強くならないうちに戻りましょう」と僕が提案する……
その時森の奥で小動物の鳴き声が聴こえた。それは悲鳴のようでもあった。
僕らは声のした方へ急いだ・・・
「ノア様、これは……」
「鷲か?でも耳が異様に尖って魔獣のようだ」
ノア様は走りだす。「ピギュ…」襲われてるリスが必死に逃げてるのが見えた。ノア様が間に入り鷲のような魔獣と対峙した。
『なんて速い鷲なんだ。』僕はそう思いながら彼女の戦闘を見守る……。
鷲の魔獣はノア様を攻撃しようと鋭い爪を振りかざし威嚇する。
その魔獣に対してノア様は短剣を足に狙いを定めて素早く切りつけた・・・「ギュァァ」鷲の魔獣は足を切られ動きを止める……。そしてノア様は追い討ちをかけるように何度も羽根を短剣で切り裂く・・・。
やがて魔獣は動かなくなった……、しかし彼女は警戒を解かずにゆっくり近付き止めをさした。
僕がノア様のそばに駆け寄る。彼女は険しい顔で「まだなにかいます!」と言う……
僕は警戒しながら辺りを見回す。すると……
「ピギュ!ピギュ!」 何かを訴えかけてくるリスが出てきた。『鷲の魔獣に襲われてたリスか?でもこのリスは…』
僕がこの異世界で最初に仲良くなったあのリスか?
「お前あの時のリスか?」僕が問いかけると「キュ?」 と首を傾げ草むらに逃げてしまった。
「レン君知ってるリスなの?」
「この森で唯一の友達だったリスに似ていたので」
僕らはそんな会話をしながら解体作業を始める。そして死んだ魔獣の羽を毟る・・・『この鷲は普通の鳥じゃないな……』
鷲の魔獣の羽根はそれはまるで羽毛のようにふわふわで美しいのだ。
「ノア様、これは素材として売れそうですね……」
そろそろ魔方陣の村に帰ろうとした時「ピギュ!ピギュ!」あの異世界リスが再び現れた。そして僕に小さなキノコを渡そうとしてくる。
「お前やっぱりあの時の…」 僕はキノコを受け取り異世界リスの顎を擦ってやる。
「キュキュ」異世界リスも気持ちよさそうだ。
そして僕らは森を出ようとすると異世界リスも一緒に付いてくる。
「この森から出たいのか?」森を抜けてもまだついてくる異世界リスに戸惑う。
「ノア様あのお願いが…、このリスを飼ってもよろしいでしょうか?」
僕は主人のノア様にお伺いを立てると頷いて了承された。僕はリスを肩に乗せる。
雨が降り続く中、僕たちは急いで村へ向かう・・・。そして村に着いた頃には雨は小雨に変わっていた。肩の異世界リスが身体を震わせ僕の頬に雨が掛かる。
そして僕はノア様と共に転移魔方陣で冒険者ギルドに帰り、鷲の魔獣の討伐素材と薬草採取の報酬を受け取る。
「レン君、これでもう一度の依頼達成で正式に冒険者ですね!」とノア様は笑顔で喜んでいる。僕も自然と顔がほころぶ・・・
僕はノア様が喜ぶ姿を見ながら思う。”運命の出会い”なんて陳腐な言葉だと思っていたが実際その通りだと痛感する。ノア様が僕を買い、そのおかげで今の幸せがある。
その時ノア様がギルドの職員に話しかけられる。ノア様は言葉を発したくないので、奴隷の僕に会話を任せる。「あの何でしょうか?」僕がそう言うと職員は軍の第二師団の隊長が僕らを呼び付けていると教えてくれた。
「師団の兵舎はここから西へまっすぐの道を40分歩いた所にあります、依頼のお仕事の後でお疲れで悪いのですが軍の要求ですので今からお願いできますか?」と申し訳なさそうに言う。
ノア様は「レン君、行きましょう」と言う。僕はノア様に付き添うようにギルドを出てそのまま西の兵舎へ向かう。兵舎はそんなに遠くなくすぐ着いた。僕たちは早速第一師団の兵舎に入り第二師団の場所を聞く……
すると若い兵士が走ってくる「冒険者のノア殿ですね?隊長がお待ちです!」と言われ僕らは若い兵士に付いて行く・・・。そして応接室の前まで来ると
「ノア殿、暫くここでお待ち下さい」若い兵士はノックをした後部屋に入る・・・。
「御足労掛けてすまない、私は第二師団の第一連隊の隊長をしているグルド。」
「先日我々は貴殿らがギルドへ報告した魔獣”オルトロス”の捜索の件について話したい」
僕は盗賊から助けてくれたグルド隊長と知り驚くと
「君はあの盗賊に捕らえられていた青年だな、良い奴隷主に買われて良かったな。」グルド隊長も僕の事を覚えていてくれていたみたいだ。
「さっそくだが本題に入る。」
「深手を負っていた君たちはどうやって”オルトロス”の襲撃から助かったのだ?」
「あの”オルトロス”は脚が猛毒で壊死していた。君たちがやったのか?」
矢継ぎ早にグルド隊長が質問してくるので僕らは圧倒された。
「あの…、ギルドに報告した通り僕らは何も覚えていなくて……。」
その時若い兵士が僕の発言を遮る。
「奴隷が喋るな!我々はノア殿に聞いている。」
グルド隊長は若い兵士をなだめて僕にこう聞いた。
「お前はユニークスキルが毒耐性だったな。」
「すまないが、君たちのステータスを鑑定させて貰えないか?」
「申し訳ないが、君たちに拒否権はない。」
そして僕らは街の政府の魔道鑑定施設に連れて行かれる。
あの時の僕は毒耐性のユニークスキルしかなかった。それなのに……
僕は魔力は0だったはずだ
『何故今の僕に魔力があるんだ?』
僕は奴隷として鑑定されたあの時から少しずつ変わり始めていた事に気付いてもいなかった…
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