第一章 第3話「仮面の少女の秘密 後編」
僕は座っているノア様の肩を掴んだ。彼女は突然の事で身体を震わせ硬直していたが、僕は構わず少し大きな声で質問した…
「ノア様、あなたは僕が耐毒性のユニークスキルを持ち魔族の肌や体液に対して害が無いと思ったから僕を買ったのですか?」と僕は聞いた。
するとノア様は首を縦に振り、少し恥ずかしそうに言った。
「そ、その通りです……。私はその貴方のユニークスキルが……」と。
僕は彼女の目を見て言った。
「ノア様、僕のユニークスキルは貴方のご希望に添えるか分かりません。」
僕は彼女の声で体調がおかしくなる、毒耐性スキルで本当に大丈夫なのか不安だった。
そして彼女は立ち上がり僕に向かって頭を下げた。そして少し書き記したメモを渡した。
”すいませんでした、私の勝手な都合に巻き込んでしまって。でも私は貴方を信じたいです”
僕はそのメモを置き、そして意を決して彼女に言った。
「ノア様、ご無礼でなければ手袋を外し私の腕を掴んで下さい」と……。
彼女は僕の発言に一瞬たじろいだが、手袋を脱ぎ始めた。
初めて間近で見る彼女の肌は真っ白で美しいものであった、手は冒険者をしているからか小さいのにどこか力強さも感じた。
ノア様またメモを取り出し”普通の人間なら私に触られただけで湿疹が出ます、その時はすぐに手を離します”と書き綴った。
僕は頷き、シャツを腕まで捲り上げ彼女に手を差し出した……。
彼女は「す、少し失礼します……」と呟き、恐る恐る僕の腕に触れた。そして彼女は腕に触りながら僕を上目遣いで見た
時が止まったかのように静寂が続いた。彼女は一度僕の腕から手を離した。
「大丈夫のようです……。僕の腕は何ともありません、痛くもなく赤くもなってないですね」と僕が言ったすぐ後、彼女は僕の腕を優しくさすった……。
僕がノア様の顔を見て目が合ったらパッとさすってた手を離し恥ずかしそうに俯いた
僕は心の中で少しほっとしていたのと同時に、もう一つの彼女の体液や唾がもし人間に付いたら害を及ぼす事について確かめないといけないと意を決した。
その方法は一つ……。彼女が僕に体液や唾を掛ければいいのだが、それはご主人様に似つかわしくない行為に思えた。
彼女に言った「ノア様、少し試したい事があります」と。ノア様はすぐに頷いた。
そして僕はノア様の前に立ち仮面を触った、彼女が怯えてるのは仮面越しでも十分伝わってくる
「すみません、ノア様。失礼します」と僕は言った後に、仮面に手を潜り込ませ彼女の唇に触れた。そして親指を少し唇に這わす。ノア様の唇が震えているのが分かった……。
そして覚悟を決めた、もし僕のユニークスキルがそうでなければ僕の指は千切れ落ちるかもしれない。だが今の僕は自分の唯一の能力しか信じれるものがない
今の僕は何もないただの奴隷。
ユニークスキル 【細菌・ウイルス耐性】 【免疫強化】
これだけが僕の取り柄だ!
彼女の口の中に親指を入れた時、触れた舌をノア様はすぐに引っ込めた。それでも僕は彼女の舌に触れた。そして彼女の舌に親指を這わしていく、彼女の唾液が指に絡んだ。僕は左手でノア様の肩を優しく掴む。彼女の唾液が溢れ出てくるのが指先から伝わった。
自分の口に指を入れられて「んっ、あっ…、」とノア様の少し艶めかしい声が僕の耳に届いた
「ノア様、手を一旦出します」と僕は言った。
彼女はその場で固まったままだ。
そして僕は自分の指を彼女に見せた……。
「指は溶けていませんし、湿疹等の症状もないですね。」
ノア様は恥ずかしそうに俯いてコクりと頭を下げた。
「失礼ですがノア様、最後の確認の為にこの指を少し長く舐めて頂いても大丈夫ですか?」と僕は言った。
沈黙が少し流れた。
ノア様は頷き彼女は耳に掛かってる仮面の紐を外した。そして僕は初めて彼女の素顔を見た…
今の18歳の僕より少し幼く見える顔、少し垂れ目で綺麗な目、美しい唇
多分これは一目惚れだったのだろうか?僕はこの時の事を何度も思い出すことになる。
恥ずかしくてピンク色に染めている可愛らしい頬、すべてが愛おしかった
ノア様は両手で僕の右手を取り、ゆっくりと僕の指を口に含んだ。彼女の舌の温かさを感じた後、彼女の歯の感触が指先に伝わった……。歯を立てないように僕の親指をたどたどしく舌ではわせる。唾液が親指の指先からゆっくりと落ちる。彼女の顔を見下ろすと赤らめた頬に泣きそうな表情、僕はフードの上から彼女の頭を優しく擦る。そして彼女は舌を丁寧に引いていく。
ノア様の僕の指を口からゆっくりと抜いていく時、透明な糸が綺麗に引いた……。彼女はその糸を見てからすぐに顔を伏せた。
すると彼女の目から大粒の涙が出てきた。そして彼女は僕の胸に顔を埋め泣き出した。
「ノア様……?」と僕は心配し声をかけたが彼女は泣き止まず、ただずっと僕の胸の中で泣いていた。僕は彼女をそっと抱きしめマントの上から背中を優しく何度も撫でた……。
ずっとノア様は孤独に生きてきたのだろう、わざと異臭を付けて人を近付けさせない様にして…。
他人から逃げていた僕みたいなニートとは違う、人を傷つけないように彼女は自分から他人を避けていた。
「ノア様大丈夫ですか……」と僕は聞いた。彼女は泣くのをやめたが僕の胸に顔を埋めたままだった。そしてノア様はゆっくりと僕の胸から離れ俯いた。
「す、すいません……。わ、私こんなみっともない姿をお見せして……」とノア様は言った。
僕はノア様にハンカチを渡した。すると彼女は涙を拭いた後、僕に頭を下げた。
そしてノア様はテーブルに置いてた仮面を取り顔にまた付け直し始めたので、僕は彼女の腕を掴んだ。
「もう二人きりの時は仮面を付けなくても大丈夫ですよ。」
ノア様はまた涙を溜めてピンク色に頬を染めた顔で僕を見つめていた。
「涙も体液なので試してみますね。」そう言って僕は彼女の頬に手を当て親指でそっと涙を払った…。
ずっと孤独だったノア様は今何を思っているんだろうか…
そんな事を考えると僕もどうしようもなく感情が溢れ、涙が出てきた。
そうしてしばらくお互い泣きじゃくった
この時、僕らはようやく心が近付いた気がした…
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