第46話 毒
Side:コラプ
クラーケンは失敗した。
あんな大規模な電撃を展開して、ぺちゃんこにするとは思わなかったな。
ブタキムの女達がやったらしいが、統率しているのはブタキム。
普通なら反乱を起こされて、仲たがいしているところ。
男女の関係だと聞いたが、女達にギスギスした空気はないようだ。
かなり上手くやっていると思う。
敵ながらあっぱれだ。
密偵から報告があった。
ブタキムに使ったスキル効果反転は、かなり色々な物を反転するらしい。
レストランを貸し切って、寿司パーティなるものを開いていたのに密偵が入り込んで色々と聞いたのだ。
性格、知性、もろもろが反転しているらしい。
あれにそんな副作用があったとは聞いてない。
もっとも、何千と作って成功したのはあれひとつだけだからな。
今の報告を聞く限り失敗だな。
ブタキムをスキル反転の魔道具で強くしてしまったようだ。
だが、こうして情報が入れば予言スキルが正確になっていくに違いない。
「未来予知を」
予言スキル持ちに俺は尋ねた。
「【予言】。最後の邪気を与えるべきです。与える相手は、その時になれば分かります。邪神教徒を総動員して下さい。民を人質に取るのです。優しい今のブタキムなら、人質を取られたらなすすべがないでしょう。成功確率は120%です」
「おお、遂に。100%を超えた。ブタキム無き後の世界を見られないのが心残りだが、邪神教徒は不滅。きっと俺の遺志を誰か継いでくれるはず」
邪神教徒を呼び寄せた。
時が刻一刻と過ぎて行き、計画が出来上がっていく。
そうだ、リード君を俺の後釜にしよう。
あれを使えばきっと邪気に染まって、そして立派な幹部に生まれ変わるはずだ。
「リード君、楽しいかね」
「はい、罪人を殺すとすっとします」
「何か悩みごとでもあるのかね」
「ええ、仲間にしたい女の子がいるんですが、彼女がうんと言ってくれません」
ふむ、その彼女はライラではなかったかな。
ライラと言えば密偵から報告がある。
ブタキムの女に加わったと。
ブタキムの秘儀で強くなり、エルダードラゴンを単独で討伐したらしい。
この事実は使えるな。
「なるほど、ライラ君のことかね」
「ええ」
「きっと話せばわかってくれる。諦めたらいけないよ」
既にブタキムの手に落ちているとは悟らせないようにしなければ。
「はい」
「贈り物をすると良い。流行のアクセサリーがあるからどうだ」
「手紙と一緒に贈ろうかと思います」
リード君がアクセサリーを真剣に選んでいる。
これが引き金のひとつになるとも知らずに。
「君は忌避されているみたいだから、部下に持っていかせよう」
「お願いします」
密偵ともなれば他人の筆跡を真似るなど児戯にも等しい。
ライラの偽の返事がリード君に届いた。
目に見えて明るくなるリード君。
そう、君はそれで良い。
Side:リード
遂にライラからジャスティスに加わっても良いという返事を貰った。
ただ、パーティメンバーの怪我が癒えるまではということみたいだ。
パーティメンバーを襲ったのは失敗したかな。
ライラが頼る物がなくなればなびくと思ってしたことだったけど、裏目か。
だが時間が解決する。
ライラはブタキムの弱みを握るために動いているらしい。
そんな危険なことをしなくても良いのに。
しばらくは話し掛けないでほしいとも書いてあった。
潜入中じゃ仕方ないか。
遠目にライラを見る。
その手首には僕が選んだアクセサリーがあった。
着けてくれてるんだ。
ジャスティスのアジトに人が増えた。
大規模な作戦が実施されるのかな。
コプラさんは何も教えてくれないが、きっと情報漏洩を恐れているんだ。
いつもの日課の地下室での罪人殺し。
それを終えて、レベルアップを図ろうと思った。
怒りに身を任せるモンスターは殺してもいいんだったよな。
まだオーガに使ったモンスター興奮剤が残っている。
マキビシ、トラばさみなどを用意する。
それで、キルゾーンを作った。
ナーという羊ぐらいの草食のモンスターがいる。
ナーと鳴くのでこの名前だが、間抜けそうな名前の通り温厚で怒らない。
家畜にすると逃げ出すので、畜産には向かないが、商品価値のない雑草を好んで食べてくれるのでありがたがられている。
このモンスターに興奮剤を使う。
やつら間抜けだから、キルゾーンに突っ込んだ。
「ナー!!」
怒っているな。
殺して良いモンスターだ。
さあ全滅させるぞ。
全身が返り血で真っ赤になるぼどナーを狩った。
くっ、まだレベル19かよ。
この地域のナーを全滅させよう。
殺したナーの体には毒を仕込んだ。
モンスターは良い奴。
じゃあその死骸を食う奴は悪いモンスターじゃないかなと思う。
だよな。
毒を食らってモンスターが死んでいく。
ジャスティスの毒は優秀だな。
疑いもせずにモンスターが食らって死んでいく。
ふはは、レベルがガンガン上がるぞ。
何でみんなこの方法を使わないのかな。
ああ、獲れた肉が食えなくなるからか。
瞬く間に、レベル46だ。
今日はもう十分か。
帰って酒場で一杯やっていると、騒がしい。
「どこかの馬鹿が毒で土地を汚染しやがった」
「何だと、じゃあもうここら一帯で狩りはできないな」
「大丈夫だよ。ネジル教徒が浄化の魔道具と黒気で清めたから」
「それなら安心だ。腐れば毒も分解される」
土地が少し汚染されたぐらいで大騒ぎだな。
悪いモンスターが減ったのを喜べよ。
正義に犠牲はつきものだろう。
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