第45話 ライラ陥落

「私、決めたわ。良心に反しない限りどんなことでもやる」


 ライラが来てそんなことを言った。


「何かあったのか?」

「パーティメンバーが襲われた。私と付き合うなと言われたそうよ。悔しくて。パーティメンバーの全員が抜けないと言ってくれたけど、犯人を捕まえるまで活動中止よ」

「それで強くなるために俺の所に来たというわけか」

「ええ。考えたらもう処女じゃないんだから、エッチな行為にも耐えて見せる。でないと襲われたパーティメンバーに申し訳が立たなくて」


 そうか、ライラをレイプしたのはブタキムだけど、責任を取ってやらないとな。

 ライラが性魔法を会得したら、レベル60などあっと言う間だろう。


「分かった」


 フラッチェとディータが見守る中、施術は始まった。


「【供与】、魔力棒」

「お腹の中がポカポカする。思ってたのと違うわ」

「これから凄いんだよ」


 魔力棒の魔力を流動する。


「あっ、これは。ちょっとやめて。怖い」


 途中ではやめられない。

 ライラの嬌声と絶叫を背に部屋を後にする。

 あとはフラッチェ達が何とかしてくれるだろう。

 絶叫が止まったので、魔力棒をやめる。


 そして1時間後、ライラが部屋から出て来た。


「あれって、凄いのね。こんなに気持ちいいものだとは知らなかったわ。あなたとの行為は耐えがたい苦痛だった。あなたとの行為が地獄だったとしたら、あれは天国ね」

「そうみたいだな」

「リードがあなたのスキルを反転したことと関係あるのかしら。もしかして性格も反転している」

「かもな」


 そうか、性格が反転したことにすれば良いのか。

 そうすれば性格が変わったのを悪魔憑きと言われない。


「私は強くなったんでしょ。ドラゴンを倒したいわ。それもエルダードラゴン」

「やるか」


 シャリアンヌも来たので、5人で空を飛ぶ。


「こうやって移動してたのね。道理で色々な場所にすぐに現れるはずよ」

「まあな」


 エルダードラゴンの住んでいる山には2時間ほどで着いた。


「この移動方法は癖になりそう」

「あれは平気か?」


 あれとは加減した魔力棒だ。

 常に魔力を補給するために、ライラにも処置している。


「ええ。苦痛ではないわ。気持ちいいなら歓迎」


 ライラは凄い開き直ったな。

 力を得るために貞淑は捨てたというわけか。


 エルダードラゴンの巣穴に到着した。


「教えた通りにやれば問題ない」

「ええ、行くわよ【性魔法】、二酸化炭素収集」


 巣穴に二酸化炭素が満ちるまで1時間ぐらいみておけば良いか。

 暇だな。


 ライラは性魔法に集中している。

 シャリアンヌ達は、シートを広げ、お茶とサンドイッチを並べた。


「これでハーレムは4人ですわね。正妻はわたくしとして、他の方の順位はどうするのですか」

「そういうのはあんまり好きじゃないわ」

「ディータは最下位で構いません、奴隷なので」


「順位付けなどするな。平等に愛してやる」


 ハーレムはガチで針のむしろと言うが。

 性魔法がある限り大抵の問題はうやむやにできそうだ。


「あなたがそうおっしゃるのなら」

「それがいいわね」

「畏れ多いです。でもご主人様が言うなら」


 そんな話をしているうちに1時間が経った。


「そろそろ良いだろう。ライラ、ご苦労様。ディータ、頼む」

「はい。【性魔法】空気タンク」


 二酸化炭素の中を進むので魔法で空気タンクを作って進む。

 エルダードラゴンは死んでいた。


 4人もいれば、エルダードラゴンの死骸を浮かせて持って帰ることも造作ない。

 王都ではネジル教徒が待ち構えていた。

 300人ほどでエルダードラゴンの解体をする。


 エルダードラゴンの素材は金貨8412枚にもなった。

 一人1682枚だ。


「もらって良いの」

「本当はライラが総取りしても良いんだが、まあパーティってことで」

「レベルが70を超えたんだけど。二酸化炭素って凄いのね。ブタキムはこんな知識をどこで?」


 ほらきた。

 上手く騙さないとな。


「反転しただろ。あれの副作用だ。愚鈍な奴が反転して賢くなったんだ」

「へぇ、そうなの。信じるわ。性格だって反転しているから。以前のブタキムなら性魔法を覚えさせる時に襲い掛かってきたでしょう」

「まあな」


 さあ、ドラゴン戦の打ち上げだ。

 金は腐るほどあるからな。


 今回は寿司にした。

 ネジル教徒の寿司職人が目の前で握ってくれる。


「玉子焼きですわ」

「ええと、どれが美味いの」

「ライラさん、初心者なら玉子焼き。通なら白身かしら。私は赤身をお願い」

「じゃあ白身」

「ディータはサラダ」


「俺はお任せで。適当に10貫ぐらい」


 通はお任せだよ。

 こうすると一番良いネタを握ってくれるし、職人が順番も考えてくれる。

 値段は言い値になるけど、今日は貸しきりだ。

 気にしない。

 もっとも、ぼったくられても払えるけどな。


 寿司ネタが、赤身、白身、玉子焼き、クラーケン、ウナギ、サラダの軍艦巻きぐらいしかない。

 ウニといくらと貝とエビがないと、いくらみたいな魚の卵はありそうだな。

 ウニはどうなんだろう。

 貝とエビはいるに違いない。


 流通と冷凍保存技術が問題か。


「ブタキム様、箸が停まってますわよ」

「ちょっと考えてた」

「わたくし箸を極めようと思います。手づかみは美しくありませんわ」


 手づかみはこの世界の宴会でも行われている。

 ナイフとフォークも使うけどね。

 さて箸だ。


 箸文化を広めるのは良いが、これを俺がどこで知ったかという説明が必要だ。

 反転の副作用は厳しいか。


「箸は挟む虫からヒントを得たんだ。反転の後遺症で賢くなって考えついた」

「そうでしたの。でもブタキム様の所作は優雅ですわ」

「練習したんだよ。豆を掴んで皿から皿に移すという奴をだ」

「わたくしも試してみます」


 ふう、いつかボロが出るような気もする。

 だが箸のない生活なんて考えられない。

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