第35話 ロックワーム
「王命である。ロックワームの大群が王都に迫っている。討伐を命じる」
毎度のことながら便利に使いやがって。
「かしこまりました。討伐の褒美は?」
「不敬であるぞ。褒美をねだるなど」
この役人は沸点が低いな。
前の役人は怒ったりしなかった。
いい加減、利用されるのは嫌だ。
「あるんですよね!」
ちょっと語気を強めてみた。
「聖天使勲章を授ける」
勲章かしけていやがる。
名誉なんか要らない。
まあ年金は貰えるけどな。
「討伐のうえには、ありがたく頂戴致します」
「ふんっ」
役人が帰った。
いや、こんだけ活躍しているのだから、王様が来いよと思わないでもない。
もとっとも今回も裏には邪神教徒がいるんだろうけど。
ロックワームは地面の下を進むんだろう。
さて、どう始末するか。
獲物を感知するのは振動だから、地面に振動を与えりゃ良い。
だけどモグラ叩きみたいで、めんどいな。
いっぺんにやる方法はないのか。
それに振動だと頭を出さない奴もいるはず。
取りこぼしが出るとイヤミを言われるかもな。
魚釣りの極意って知ってるか。
前世では俺は魚釣りの趣味はなかった。
だがニジマスの養殖場に行って釣り上げた。
いや凄いのなんのって、1秒もしないうちに掛かるんだぜ。
養殖場の人に聞いてみた。
なんでこんなに掛かるのって。
答えは腹を空かしているからだ。
釣らせる用のいけすのニジマスは餌を与えてないそうだ。
魚が空腹なら面白い様に掛かる。
これが極意。
俺は一日、絶食した。
「【供与】空腹感」
地面の下のロックワームはもれなく空腹になったはずだ。
試しに石を投げてみた。
石が地面に当たると、何匹ものロックワームが姿を現した。
「【性魔法】磁力、レールガン」
ロックワームは吹き飛び、その振動でさらにロックワームが姿を現した。
そこからは、レールガンを撃つだけの簡単なお仕事。
シャリアンヌ、フラッチェ、ディータの活躍で、一掃されたと思う。
「念のためだ地面を揺さぶれ」
「はい【性魔法】地面振動」
うん、残りはいないと思ったら、黒いロックワームが現れた。
こいつがボスか。
「【性魔法】磁力、レールガン」
「【鷹目】【性魔法】磁力、レールガン」
「【性魔法】磁力、レールガン」
3人のレールガンで黒いロックワームは穴だらけになった。
どうやら死んだらしい。
黒いロックワームの死骸に手を置いて邪気を吸い取る。
するとロックワームは銀色の7色の燐光を放った。
こいつ、ミスリルワームだったのか。
こりゃ大儲け。
ミスリルワームもレールガンには沈黙か。
だよな、対ドラゴン用魔法だからな。
のろしを上げるとネジル教徒が来て解体を始めた。
ロックワームの肉は食いたくないな。
でも前世でもミミズ肉をハンバーガーに入れたなんて都市伝説があった。
本当かどうかは知らないが。
食ったら美味いのかも知れない。
売り物にならないロックワームの肉をネジル教徒が焼く。
油が垂れて実に美味そうだ。
おまけに甘い醤油ダレを塗るもんだから、匂いがさらに凶悪になった。
ディータは構わずに食べている。
美味しくて楽しいですを連発している。
フラッチェも食べた。
冒険者だから前に食ったことがあるのかもな。
シャリアンヌと目を見合わせる。
ええい。
これはウナギ。
土の中にいるウナギ。
俺はロックワームの串焼きにかぶりついた。
美味い。
脂がのってウナギみたいだ。
ただ皮は剥がしてあるので、柔らかくて食べやすい。
皮は武具にするらしい。
シャリアンヌも俺が食べて安心したのか食べ始めた。
そして3人の何か期待する目。
うん、精力がついて発散したいのね。
帰って速攻で全身魔力タイツ&魔力棒をやってやった。
いつもの何倍も気持ちよかったらしい。
そして精の付く物を食べたせいで、一晩寝たら体力的にも復活してた。
フラッチェの朝の素振りなんかいつもより切れがあった。
「毎日、ロックワームの肉をたべたいですわ」
「シャリアンヌ、太るぞ」
「太ったら、誰かに痩せてほしい部分のぜい肉を供与致します」
「それもそうか」
でも、ロックワームは山にいて、持ってくるまでに鮮度が落ちるんだよな。
ウナギみたいな魚の干物ってあるのか。
ロックワームは干し肉にしたみたいだけど。
あのフワフワの肉が美味いんだよ。
新鮮でないとな。
「今度、暇になったら週末、ロックワーム狩りをしましょう」
フラッチェも食いたいみたいだ。
「良いアイデアですね」
「ロックワーム、美味しくて楽しいです」
こいつら、ただ単に肉が美味いってだけでなくて、その後のお楽しみも期待しているんだろうな。
健康で何より。
ネジル教徒だが、かなりの数が結婚した。
ロックワームの肉を食って我慢できなかったらしい。
邪気による避妊もしなかったんだな。
それだけ盛ってたってことだよな。
まあ良い。
ベビーラッシュも悪くない。
ただ結婚式に出てくれという依頼にはうんざりだ。
座って大人しくしているのはムズムズする。
なので、ほとんどは司祭を行かせた。
ただ貴族とかになるとそうはいかない。
できちゃった婚にはうんざりだ。
「花嫁は綺麗でしたわね。わたくしたちの時には盛大にやりましょう」
「まあな、金ならある」
披露宴は新郎新婦が主役だ。
特に花嫁のためだと言ってもいいかもな。
シャリアンヌのキラキラした目を見ると、質素に身内だけとは言えなくなる。
一生のうちに主役になれる場だからな。
しょうがないか。
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