第34話 あと2本

Side:コラプ

 スライムも駄目だった。

 だがブタキムのカラクリの一端が分かった。


「未来予知を」


 予言スキル持ちに俺は尋ねた。


「【予言】。ブタキムの手口はやはり窒息です。なので今度はロックワームの大群を仕掛けると良いでしょう。土の中なら手を出せません。成功確率は40%です」

「やはり窒息か」

「ええ、どんな窒息かはまだ分かりませんが。スライムを凍らせたということはそのようです。それと確率を上げるために指を使うべしと出ています」


「よし、ロックワームのボスに指を使おう」

「それがよろしいかと」


 ロックワームは鉱山に生息している。

 ロックワームの被害で廃坑になった場所へ入った。

 忌避剤と邪気を使ったのでロックワームには襲われないでボスの下に辿り着けた。

 ボスはミスリルワーム。

 銀色の体が眩しい。

 いま黒く染めてやるぞ。


 邪気を開放、ミスリルワームを包んだ。

 ミスリルワームは漆黒に染まり黒光りする体になった。

 俺の指は残り2本となった。


 俺の命が消えようが構うものか。


「手下を連れて王都へ行け」


 俺は王都の方角を指示した。

 これで良い。


 さて、更に確立を上げるには、ロックワームの餌だな。

 元気な状態で王都近くまで行ってもらわないと。


 家畜を進路の所々に繋ぐ。

 たっぷり食えよ。

 そして暴れろ。


 冒険者も街道騎士もロックワームには気づいてない。


「家畜を買いたいって」

「そうだ」

「聞いてくれ。家畜が怯えるんだ。きっと地震の前触れに違いない。この怯えようなら凄いのが来るぞ」

「そうかもな」


 家畜が怯えたのはロックワームが近くにきたせいだ。


 騒動は構わない。

 騒ぎは起きれば起きるほど良い。

 それで死ぬ奴がでればなお良い。


 相場を操作することにした。


「穀物を買いだ。買えるだけ買いだ」

「そのように手配します」


 金を渡せば代理人が全てやってくれる。


「ここだけの話なんだが。家畜が怯えるらしい。村人の話では地震が来るそうだ」

「おう、その話は俺も聞いた」

「そこで俺は穀物を買い漁っている」

「それは儲かりそうだな。俺も乗らせてもらう」


 穀物を買い漁り、地震の噂をばら撒いた。

 村人が噂を肯定したので、相場は上がった。


 ブタキムが討伐成功なら、穀物を全部売る。

 その時は儲けた金で残念会だ。

 飲んで憂さを晴らそう。


 討伐失敗なら王都は滅茶苦茶だろうから、相場はさらに上がるだろう。

 上がるだけ上がったら売ろう。

 そしてその金で祝杯を上げるのだ。


Side:リード


 ライラが俺に対して素っ気ない。

 というか逃げている感じだ。

 もしや、あの強姦魔が僕のことを喋ったんではないのか。

 強姦魔は許せない。

 僕はネジル神殿を張り込んでチャンスを待った。


 強姦魔が出て来たので死角から短剣を刺した。

 そして人混みに紛れて様子を見る。

 強姦魔はやれやれといった感じで首を振ると、生肉を出してスキルを使った。

 くそっ、ネジル教徒の助祭と司祭が使うインチキスキルか。

 強姦魔は何事もないように立ち去った。


 くっ、心臓を一突きしないと駄目か。

 強姦魔の後を付ける。

 強姦魔は路地に入り俺の視界から消えた。


 慌てて追いかけると、強姦魔が待っていた。


「黒気の匂いがするので兄弟かともと思いましたが、やはりあなたでしたか。」

「黒気の匂いなどしない!」


「それで何の用ですか」

「お前は許せない」

「エゴ神は私をお許しになりましたよ。黒気も授けてくれましたし、助祭にもなれました」

「殺してやる」

「困りましたね。命を奉げよという教義はないのです。長生きして善行を積むのが教義です」


 黒い霧が発生して武器が全て塵になった。


「くっ、忌々しい力だ」

「神のお力です。私は貴方を許しましょう」

「ライラに僕のことを言ったか?」


「告げ口は悪徳です。そんなことをしませんよ」

「くっ、覚えてろよ。次に会ったら殺す」


 あの男を殺してもたぎらない。

 そんな気がした。

 おそらくあの男は恨みもせずに死んでいくだろう。

 恐れも何もなしに。


 それじゃ駄目なんだよ。

 涙でぐしゃぐしゃになって命乞いして貰わないと。


 くそっ、面白くない。

 地下室に入る。


「この極悪人、お前をこれから殺す。お前は何をやった」

「何もしてません。解き放って下さい。お願いします」

「悪人はみなそう言うんだ。さあ言ってみろ」

「本当です」


 僕は男の足を刺した。


「どうだ」

「やめて、何をするんですか」


 そうだよこの顔だよ。

 こういう顔して貰わないと。

 そう言えば強姦魔が襲った時のライラの顔は良かったな。

 そそるし、たぎったよ。


 僕はもう片方の足を刺した。


「言います。私は詐欺師です。ひとをたくさん騙しました。私のせいで死んだ人もいます。これで許してくれるんですよね」


 やっぱりな悪人じゃないか。

 許すわけなどない。

 僕はゆっくり男の胸に剣を突き入れた。

 男はぐしゃぐしゃになった顔で死んだ。


 股間が膨れ上がる。

 こうでないと。

 強姦魔は駄目だ。

 善人になったからそそらないのかな。

 きっとそうだ。


 上に戻り豚肉料理を食べる。

 ブタキムのことを考えるとネジル教徒は皆殺しにしたい。

 だけど、ネジル教徒はブタキムに騙されているだけで善人だ。


 たぎらないのなら、その価値は低い。

 やっぱりブタキムのぐしゃぐしゃになった顔が見たい。

 そして殺したい。

――――――――――――――――――――――――

 本日は一日に2回投稿です。

 これが2本目です。

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