第28話 無粋な乱入者

 騎士学園のダンスパーティ。

 ダンスパーティはいまだに慣れない。

 パートナーはシャリアンヌ。

 婚約者だから仕方ない。


「足を踏んだら、良いというまであれしなさい」

「気にいったようだな」

「心まで支配できると思わないことね。好きでもなんでもないんだから。大っ嫌い。気持ち悪くて仕方ないわ」

「ならやめるか」

「くっ、酷い男。勘違いしないで好きじゃないんだから。でもやらないと眠れないのよ。なに言わせるのよ」


 はいはい、1日1回すっきりね。


「分かったよ」

「その目は何?」

「ええと今日のは凄いぞ。魔力玉が混ざっている」


 シャリアンヌがゴクリと唾を飲む。


「お招きありがとう」

「お招き頂きありがとう、ございますですわ」

「楽しんでいってくれたまえ」


 学園長に挨拶。

 模擬ダンスパーティだからな。

 こういう所もちゃんとやる。

 シャリアンヌのろれつが少し怪しいのは魔力棒が入っているからだ。

 魔力が薄いから刺激は少ないが、感じているはずだ。

 本人がやりたがったのだから仕方ない。


 魔力量のアップってそんなに大切かな。

 たしかに才能のひとつの指標ではある。

 男は武術とかあるけど、女の子はないから、魔力量は確かに重要かもな。

 でもシャリアンヌは俺と婚約してる。

 いまさら魔力量を上げる必要もないと思うがな。


 リードとライラのカップルを見つけた。

 ライラの顔には笑顔がない。

 リードは笑顔だが、どこか嘘くさい笑顔だ。


 二人は一緒に1回だけ踊って、あとは別の人と踊ってた。

 喧嘩でもしたのかな。


 ダンスは別に問題なかった。

 足を3回踏んだだけだ。

 俺もシャリアンヌに5回ぐらい踏まれた。


 シャリアンヌはあれを入れながらだから、集中力がもたないのだろう。


「おらー!」


 ダンスパーティに不似合いな声が聞こえた。

 武器を持ったチンピラがぞろぞろと現れた。


 門を開放しているからって、門番は何をしてた。


 弓を持ったチンピラが矢を放つ。

 ライラに当たる。

 俺はとっさにライラを庇った。

 矢が背中に刺さるが問題ない。


「【供与】ダメージ」


 チンピラにダメージを供与する。

 俺に刺さった矢は抜けた。



「許せませんわ。【性魔法】水弾」


 シャリアンヌが魔法を行使する。

 水の塊がチンピラ達に飛んで行く。

 チンピラは水を被った。


「このアマ、やりやがったな」

「下民がわきまえなさい。【性魔法】電撃」


 チンピラが痺れた。

 いや死んでるかも。

 他のチンピラは騎士学園の生徒が討ち取っていた。

 空手でもチンピラに負けるなら騎士は名乗れない。


 ふらつくシャリアンヌ。


「大丈夫か」


 俺はシャリアンヌを支えた。


「何で助けたの」


 ライラがそんなことを言った。


「俺は自分の女は見捨てない。前にも言ったな」


 ふんと、シャリアンヌが鼻を鳴らした。


「あの、洪水になりましてよ」


 そしてそんなことを言った。


「水弾を撃ったからか」

「もう」


 足を踏まれた。

 ああ、下着が洪水ね。

 入れたままに慣れてないからな。

 それで激しく動いたから。


「バルコニーに行こう」

「やっぱりゲスね。ダンスしながら、婚約者に嫌らしいことをしたのね」


 ライラの軽蔑のまなざし。


「婚約者だからな構わないだろう」

「早く。気持ち悪いわ」

「ありがとう。一応お礼は言うわ。早く行きなさいよ」


 バルコニーで秘密のお着換えをした。

 スカートの中は暗い。

 パンツを脱がせて履かせるのに苦戦した。

 ノーパンじゃないんだな。

 ああ、魔力棒を固定するのに下着が必要なんだっけ。


「これで全てを許したなんて考えないことね。ぜんぜん好きじゃないんだから」


 知ってるよ。

 痩せたブタキムはシャリアンヌの好みだってな。

 会った時にそんなことを言ってたからな。

 昔のブタキムの記憶があるので折り合いがつかないのだろう。


 痺れたチンピラも掃除されて、ダンスパーティは続けられた。

 帰ってきてからも、パーティだ。


 3人とも踊り疲れたようだ。

 ぐったりしている。

 魔力玉付きは強烈みたいだ。

 シャリアンヌは何度も気絶したようだ。


 ディータと、フラッチェは慣れたのか気絶はしなかったが、ピクピク痙攣はしてた。

 気絶してフラフラしたシャリアンヌをメイドとフラッチェとディータが馬車に運び込んだ。

 お土産の塩クッキーをぼりぼりやりながら考えた。

 ここまで来たらライラも貰ってやるべきなんだろうな。


 本人の意向は確認するけども。

 なんと言って話そう。

 まだ俺を好きかは嫌いに決まっている。

 まあそのなんだ、責任を取らせてくれはどうかな。

 責任取るならお詫びに死んでぐらい言われそうだ。


 ブタキムなら有無も言わさず魔力棒を突っ込んでしまうのだろうな。

 いや俺もシャリアンヌに問答無用でやってしまったからブタキムとそんなに変わりないのかも。

 だけど、ライラは一度傷ついている。

 二度も傷つけたら最悪の結果になったりするかもな。


 悪役ムーブするなら、外堀を埋めるか。

 たしかライラの家は貧しかった。

 だからブタキムはレイプしたあとに金で口を封じた。

 同じ事をするのか?


 クズだな。

 男なら誠意でことに当たるべきだ。

 そう言えばライラと俺は話し合ったことがない。

 本音をぶつけ合えば進展がみられるかも。

 そのチャンスを窺おう。


 そういう方針でいくか。

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