第24話 サバイバル訓練

 学校の行事、軍事訓練。

 サバイバル訓練だ。

 食料無しに森に入って3日間生き延びる。

 塩は携帯して良いルールだからだいぶ優しい。


 従者は連れてって良い規則だ。

 貴族とか何にもできない奴がいるからな。

 俺もほとんど何も出来ない。

 前世でもサバイバル訓練はしなかったし、ブタキムもそんな知識はない。

 フラッチェが一番詳しいだろうな。


「まずは拠点を作る。洞窟を拠点にするときはモンスターに気を付ける。それと蝙蝠にもね。ダニの雨が降るから」

「木のうろはどうだ?」

「ひとひとり寝れるうろなんてないわよ。座って寝れるなら別だけど。3人いるなら木の枝でテントを作るのが良いわね。モンスターには一ひねりだけど」


「木の枝でいこう」


 木に登り、ナイフで枝を落とす。

 それを組み合わせて仮のテントとした。


「次は水ね」

「川を探すのか?」

「ええ、ただ川は危険が沢山ある。肉食モンスターの狩場だから」


 川に到着。

 水筒に水を汲む。


「【性魔法】浄化」


 性魔法便利だな。

 特殊な魔法でなければ大抵使える。


「しっ」


 フラッチェが警告を発した。

 身をひそめると、トラのモンスターが現れた。

 赤いからブラッディタイガーだな。


 俺はディータにゴーサインを出した。


「【性魔法】、水収集、冷却」


 ブラッディタイガーは水に包まれ、そして氷の棺に納められた。


「俺からひとつ。物に重さを感じるのはなぜか知っているか?」

「知らないわ」

「知りません」


「重力という物が働いているからだ。これがあるから大地に立っていられる」

「分かったわ。【性魔法】重力軽減」


 俺はブラッディタイガーが入った氷の棺を押した。

 軽くなっているのですいすい進む。


「解体は水がある方が良いわ」


 すまん常識を知らないからな。

 ディータが解凍して、ブラッディタイガーの解体が始まった。

 皮を捨てるのは勿体ないが、今回は肉だけで良い。


 再び肉だけを凍らせてそれを押して拠点まで運ぶ。

 もう狩りの必要はないな。

 塩味のブラッディタイガーの肉は不味い。

 もとの素材も美味い肉とは言えないようだ。


 余った肉は性魔法で乾燥して、干し肉とした。

 性魔法万歳。


 夜、モンスターの吠え声が絶え間なく聞こえる。

 俺達は誰も見張りには立たない。

 邪気を展開してバリヤーにしたのだ。

 触れば腐るとなったら大抵の奴は手を出してこないだろう。


 吠え声も1時間も聞いていたら慣れた。

 ぐっすり眠って朝を迎えられた。


 ブラッディタイガーの肉は嫌だ。

 フラッチェが何か食べている。

 シャクシャクという音が聞こえたのだ。


「ずるいぞ」

「あまり美味しくないわよ」

「贅沢は言わない。肉以外の物も食べたい」


 フラッチェが差し出した雑草の茎は長さが1メートルはあって太さは3センチぐらいある。


「シャクシャク草よ」

「まんまだな」


 皮をむいて食べるらしい。

 味はほんのり酸っぱい塩味。

 なんというか、食べたことのない味だな。

 意外に柔らかくてシャキシャキしている。


 美味くはないが、これしか食べる物が無かったら我慢できると思う。


 ディータも文句を言わずに食べている。

 口がさっぱりして肉の食事が進んだ。


 やることがない。


「不味いわね。一雨来るわ」


 フラッチェが雲を見てそう言った。

 びしょ濡れは体力を奪う。

 性魔法で土の家を作るのも手だな。

 それで行こう。


「【性魔法】土の家」


 ディータが土の家を作った。

 形はかまくらそっくり。

 雨だと土を削るかも知れないな。

 フラッチェが土の家の上に葉っぱを敷いた。

 俺とディーダも真似したが、どれだけ効果があるやら。


「一応乾燥も掛けてくれるか」

「駄目よ、土の家が割れちゃう。それより乾いている枝を集めるの」


 そんな落とし穴があるとは、フラッチェは賢いな。

 きっと経験しているのだろう。


 枝を集めると雨がポツリと落ちてきた。

 そして豪雨になった。


 土の家が削られるのが分かる。

 周りに掘った溝に泥水が流れているから。

 生き埋めにならないように気を付けないと。


 なんとか土の家は持ったようだ。

 そして、ゾンビみたいな奴らが現れた。

 騎士学園の生徒だ。

 食い物にもありつけず、夜も眠れず、雨に打たれてヘロヘロ状態だ。


 焚火ぐらいしろよ。

 俺も鬼じゃない。


「停まれ、金貨1枚で焚火と干し肉を提供しよう。奪うなどと考えるな。こっちとの体力差を考えろ」

「分かった」


 性魔法で火を点けて焚火を楽しむ。

 干し肉も炙るとまた美味い気がする。

 不思議なものだ。


「虫はどうやって追い払ったんだ?」


 ヘロヘロだった生徒が聞いてきた。


「黒気だ。薄くても虫ぐらいは殺せる」

「黒気というとネジル教徒のか。この地獄から逃れられるなら、教徒にでもなんでもなる」


 生徒を教徒にしてやった。

 邪気を嬉しそうに出す生徒。


「分かっていると思うが善行しろよ」

「ああ、手始めに虫に悩んでいるやつらを助けよう。助け合わないとな。すまなかった。仲間を襲うなど騎士の行為ではない」

「未遂だろ」

「そうだが。謝りたい」

「謝罪を受け入れよう」


 ヘロヘロの生徒がいくぶん生気を取り戻して、去って行った。

 それから小遣い稼ぎをしながら、サバイバル訓練を終えた。

 もう肉はもういい。

 玉子掛けご飯が食べたい。


 玉子掛けご飯なら金貨1枚払ってもいい。

 帰って食べた玉子掛けご飯のなんと美味しい事。

 とうぶん玉子掛けご飯だけで良い。

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