第12話 筋肉週間
騎士学園の行事、筋肉週間。
別名、筋トレ祭り。
レベルが封印されている俺はかなりきつい。
「ふん、ふん、スキルやレベルも大切だが、筋肉は裏切らない。筋トレしたぶんだけ攻撃力が上がる」
「はい、先生」
剣術の先生が、大きな岩を担いで筋トレしながら言った。
さて、俺もやるかな。
「ぐぎぎ」
腕立ての一回も出来ないとは情けない。
「腕立てが出来ないのか。そういう時は片膝を地面に付くと良い」
「はい、先生」
片膝を付くとスイスイと腕立てができた。
だがすぐに怠くなる。
だが、供与スキルに死角なし。
木に疲労を供与すれば永遠に筋トレができる。
「【供与】、疲労」
木が萎れたりするが構うものか。
ブタキムから脂肪をはぎ取ったこの体は貧弱だったが、この筋トレでみるみる筋肉が付いた。
筋肉週間の成績は、力の伸び率で決まる。
俺は2倍を記録して、ここまでは最優秀の成績を収めた。
「お前、最初の計測の時に手を抜いたな。そうに違いない」
リードが絡んできた。
めんどくさい奴だ。
「リード君、それはできないのだよ。鑑定魔法で確認しているからな」
「くっ、先生がそうおっしゃるなら」
リードの奴、他人の足を引っ張るのではなくて自分を磨けよ。
でないと、みんなからそっぽを向かれるぞ。
筋肉週間のフィナーレを飾るのは討伐。
スキルを使わずに素の力だけでモンスターを狩って成長を実感する。
みんなメイスを手に討伐に向かった。
俺は、ゴブリンを速攻で叩き潰してノルマは終わった。
「きゃあ」
悲鳴が上がる。
何事かとみると黒いオーガがいた。
邪神教団はろくなことをしない。
オーガは黒い液体の塊を吐いた。
その塊はライラに向かっている。
俺はライラを庇って黒い液体を浴びた。
黒煙が上がる。
背中がスース―しやがる。
見ると肉が溶け背骨が見えてた。
生命力に溢れている俺だからこのぐらいで済んだが、ライラに当たっていたらきっと即死だっただろう。
「ブタキム、何で庇ったの?」
「お前は、俺の女だ。それは永遠に変わらない。それに。【供与】、ダメージ。こうすれば元通りだ」
黒いオーガよ。
「【供与】封印」
俺はメイスでオーガの首をもぎ取った。
先生達が集まってくる。
「先生、スキルを使ってしまいました。討伐の加点はなしにして下さい」
「先生、ブタキムは私を庇ったんです。加点は認めてあげて下さい」
「そうか、ブタキム、実に男らしいぞ。女の子を庇って失格になる。規則だから加点はなしだが、先生は見直した」
「くっ、上手い事やりやがって。これ見よがしに先生に取り入って」
さも悔しそうな顔をしてリードが現れた。
その顔は歪みまくっている。
なんというか、見るのも嫌な顔だ。
「リード、黒いオーガは秘密結社ジャスティスの配下なんだろう。ライラが傷ついても良いのか」
「それは……」
ブレブレなんだよ。
ジャスティスと決別するとか、ライラに謝るとか、やることはあるだろう。
正義が聞いてあきれる。
もっともジャスティスは邪神教だと思う。
「あれはリードがやったの?」
「いや、ライラ違うんだ」
「何が違うの?」
「それは……」
「お得意の正義とやらを振りかざせよ。大事の前の小事だとか言ってな」
「ブタキムは黙ってろ」
「どうなの。ブタキムも変わったけど。リード、あなたも変わったのね」
「違う」
「ブタキム、あなたが今まで私にしたことは許せないけど。ありがとう、お礼を言うわ。でないと命を助けて貰って感謝も出来ない人間に落ちるから」
「ふっ、また夜が寂しくなったら、俺の所に来い」
「あなたも変わったわ。前なら有無も言わさずにさらってレイプしてたのに」
そんなことやってたのか。
うん、記憶にあるな。
やっぱりブタキムは死んだ方が良かった。
体は生きているけど魂が死んでブタキムの罪の半分は消えたと思いたい。
あとの半分は俺が贖罪してやるよ。
「ブタキム、覚えてろ」
リードは殺人も躊躇しなくなってから悪い方に変わったな。
ブタキムの罪とばかりに言えない気もしてきた。
元から歪んでたのかもな。
邪神教徒がリードに邪気を使ったかも知れないが、そういう願望がないとその方向には行かない。
誰かをおとしめたいという欲求があったのかもな。
こうなってはもはやどうにもならないだろう。
ライラが死ぬところだったのを謝罪なしだぞ。
それはかなり悪辣だ。
騎士学園に戻ると、筋肉週間の成績が張り出されていた。
俺は2位。
別に悔しくない。
ライラを守れたからな。
「あの、好きです付き合って下さい」
告白された。
「俺はブタキムだぞ」
「はい、ライラさんを庇う所を見てました。恰好良かったです」
「すまんな、間に合っている」
「やっぱり、ディータさんとフラッチェさんが好きなんですね。フラッチェさんは特に胸が大きいですから」
「あんなのは脂肪の塊だ」
「ええ、分かってます。見飽きたんですよね」
「まあな。だが女の価値は胸だけではない」
「やっぱり好きなんだ。うぇーん」
「そういうことだ」
ブタキムって痩せたらもてるんだな。
貴族だから、元の素材は悪くない。
それに今は筋肉も付いて、細マッチョだ。
見た目だけなら満点だな。
ブタキムの悪行を知っているのに告白か。
ちょい悪青年路線を目指そうかな。
まあ、モテても仕方ないが。
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