第13話 堕落のコラプ

「ふん、新邪神教を名乗ると言えばどんな奴かと思ったら聖傷もないではないか。本当に邪気が宿っているのか」


 街を歩いていたら、リードに接触してた邪神教の幹部と思われる奴が現れた。

 仮面を被って指が……。

 あれ1本欠損のはずが3本もないぞ。


「下がって。こいつは危険」

「私も同意見です」


「ディータもフラッチェも剣を収めろ。名を聞こう。俺はブタキムだ」

「堕落のコラプだ。邪気を本当に持っているのか?」


「邪気ならある」


 俺は邪気を出してやった。


「ふん、どうせ偽物に違いない。本物の邪気はこういう物を言うのだ」


 コラプから邪気が出て俺を包んだ。

 俺も邪気を出して対抗する。

 二つの邪気は反発した。


「本物だという証明になったな」


 コプラの指が1本落ちた。

 落ちた指はグズグズに腐っている。


「なぜ貴様は邪気を行使しても聖傷を負わない。邪神教の幹部を務めた者は1年で腐って死ぬのだぞ」


 そう言ってコプラは仮面を取った。

 仮面の下は皮膚が腐り、肉も一部腐って、骨が見えている。

 俺が何で死なないかなんて、知らんがな。

 邪神の心は分からない。


「自業自得なんじゃないか」

「我らの行いが間違っていようはずがない。きっと邪神様が幹部を招いているのだ。だから邪気の象徴である腐りで死ぬのだ」


 こいつらの教義って間違っているんじゃないか。

 正しいのは新邪神教。


 コプラは盛大に邪気を出すと消えた。

 後にはもう1本腐り果てた指が残されていた。


 俺の方の教義が間違っていても良い。

 幸せに生きる方が良いじゃないか。

 腐り果てて死ぬなんてまっぴらだ。


 邪神の心は分からない。

 だが人間の心は分かる。


 邪神様は邪気を浄化してくれる有難い神様。

 邪気は怨念で増える。

 怨念を減らして邪神様を手助けしよう。


 短いが新邪神教の経典とした。

 この経典が間違っていても良い。

 結果として人間が幸せになるのなら良いことだ。

 ぐへへ、悪の新邪神教の教祖として頑張るぞ。


 新邪神教、通称ネジル教の集会に参加する。


「神託を頂いたぞ。短いが経典ができた」


 さっき作った経典を発表する。


「おお、ありがたい」

「経典は写しを作って各自携帯させましょう」


「その場合、邪神様の名前は隠せ。エゴ様に変えろ。信者が出す邪気は表向きは黒気な」

「かしこまりました」


 邪気を浄化してくれる神様その名もエゴ様が誕生した。

 こうやって嘘っぱちを重ねよう。

 人間が良くなる方向に導くのだ。


 贖罪にはなっているだろうか。


「エゴ様の神像を作りたいのですが」

「うーん、女神で、黒から白へのグラデーション。頭は白で足は黒。片手には二枚貝を持っている」

「なんで二枚貝なんですか」

「浄化の象徴だからだ。二枚貝は水を綺麗にする」


 嘘が積み重なる。

 構うものか。

 天罰を下すなら俺だけにしろ。

 邪気が増えた気がする。

 でも体は腐ったりしない。


 エゴ神の神殿を作ることになった。

 今は金がないので一般家屋の一室だ。

 正面にエゴ神の神像が置かれた。

 スキルで作るので早いものだ。


 絨毯も黒から白のグラデーション。

 神像に近づくほど白くなる。


 なぜか、信者が小瓶を奉げている。


「小瓶は何だ?」

「聖水です。浄化の象徴なので」

「いいぞ神像の空いている手には聖水の小瓶を取り付けろ」

「はい」


 邪気って聖水との相性はどうなんだ。

 聖水を一本もらって邪気にさらす。

 聖水は腐った。

 まあね。

 そうなると思った。


 邪気から聖水を作れないかな。

 真っ黒な物質を腐らせる液が出来上がった。

 ええと、細菌を殺せないかな。


 生命力をプラスして、黒い水ができた。

 指に付けてみたが溶けたりはしない。

 舌で舐めてみる。

 味はしない。

 飲んでみた。

 別に異常はないな。


 手遅れのウイルス性の病気の人が連れて来られた。


「飲んでみてくれ。失敗したら、後に残された人が一生暮らせる金をだそう。拒否してくれても構わない」

「ゴホゴホ、飲みます」


 黒い水を病人が飲む。

 僅かに顔色が良くなったようだ。


「どうだ?」

「良くなった気がします。少なくとも悪くはなってません」


 エゴ神の聖水は作り出されて売られ始めた。

 エゴ神の聖水の効き目は抜群で、ウイルス性の病気のほとんどは治った。

 こうなるとエゴ神の名前は広まった。


 ネジル教の信者が増えた。

 新しい信者は神の名前はエゴとしか知らない。

 邪神ではない。


 この辺が落としどころか。

 信者から一段階上がる時に邪神の名前が告げられる。


 大抵は驚くが、邪気を浄化してくれる神なので、邪神教の神とは違うとみんな思うようだ。

 詭弁だが、別に構わない。

 神は語らない。

 語るのは人だ。

 騙るのも人だ。


「あのね」


 フラッチェの歯切れが悪い。


「何だ?」

「ディータのやっている魔力の棒。私もやってみたいの」


 おう、ドン引きだな。

 お年頃なんだろうな、性的なことに興味津々だ。


「構わないぞ。【供与】、魔力棒」


 フラッチェのベッドに魔力棒が生えた。

 フラッチェが腰を沈める。


「暖かい。気持ちはよくないけど。ううん、ポカポカして気持ち良いかも。ステータス。あっ、魔力の最大値が上がった」


 高濃度の魔力に晒されると、魔力の最大値が上がる。

 わりと知られた現象だ。

 だが、何となくエロい。


 方法がエロい。

 手で触れても良いんじゃないか。

 でも手でにぎにぎしてもエロい。

 どうやってもエロくなる気がする。

 まあこれで良いか。

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