第8話 騎士団見学

 今日の学校の行事は、騎士団見学。

 騎士学園の4分の1は騎士団に入る。

 女子だと結婚したりする。

 他の就職先は、守備兵の幹部とかだな。


 騎士学園卒業は日本でいえば防衛大学みたいなものだ。

 そう考えるとかなりエリート。

 リードが虐められても辞めなかった理由もそこら辺にある。

 出世したいなら騎士学園卒業の肩書は大事だ。


 今日、見学するのは北騎士団。

 王国の騎士団はいくつかあるが、平民上りは大抵、東西南北の4つの騎士団に入る。


 近衛騎士団なんかだと100%貴族だ。

 精鋭部隊のグリフォン騎士団とドラゴン騎士団は9割貴族だ。


 教会が抱える聖騎士団は信徒なら入れるがここは特別。

 その他には王族や貴族が私費で抱える小さな騎士団がある。

 こちらはオーナーによって事情はまちまちだ。


 とにかく東西南北この4つの騎士団は、街道の安全を警備する騎士団だ。

 他の騎士団と比べると格が低い。


 街道騎士だとか、警備騎士とか、馬なし騎士とか呼ばれて蔑まれている。

 この騎士団、ほぼ平民なので幹部以外は馬を持ってない。

 まあ、そのひとつの北騎士団の見学だ。


 訓練風景を見学する。

 ブタキムは努力が嫌いだから、剣術はほとんどやってない。

 レベルが500を越えていたから力任せで負けることがない。

 ちなみに、レベル10を超えると見習い卒業で。

 レベル20を超える一人前。

 レベル30を超えると熟練。

 レベル40を超えると達人。

 レベル50を超えると英雄。

 レベル60を超えると伝説。


 こんな感じだ。

 強奪でレベルを500超まで上げたブタキムは人外だった。

 いまの俺のレベルは封印されて無ければ神だろうな。


「英雄と名高いブタキム様に模範組手をしてほしいのですが」

「挑戦は受ける。胸を貸そう」


 石舞台の上に上がった。


「ルールはスキルなし。では、構えて。始め」


 木剣に魔力を込めて振る。

 飛んで行った魔力を対戦相手の騎士は避ける。

 いい反応だ。


「そりゃそりゃ」


 うん、段々と近づかれるな。

 そして、一撃食らいそうになった。


「はっ」


 魔力を爆発させるように放出する。

 騎士は魔力で押され、後退った。


「そりゃそりゃ」


 また、同じ展開。

 騎士は、なすすべがない。

 魔力を木剣に纏わせて、俺の魔力を切り裂くぐらいできそうなものだが。

 もっとも俺の本気の魔力を斬り裂ける奴はいないだろうな。


「この勝負、引き分け」


 相手の騎士は嬉しそうだ。

 まあ、前のブタキムならレベルごり押しで一閃だろうからな。


 何となく引き分けはつまらん。

 悪魔付きと呼ばれないためにも傍若無人に振る舞うべきだ。


「つまらん。モンスターに民が襲われていても引き分けですますのか。被害者に引き分けです褒めて下さいとでもいうのか」

「言わせておけば」


 血の気の多い騎士が石舞台に上がってきた。

 それで良い。


「さあ、始めの合図を」

「構えて、始め」


 木剣に魔力を込めて伸ばしていく。

 そして無造作に振った。

 魔力の剣は対戦相手の騎士を打ち、騎士は吹っ飛ばされゴロゴロと転がった。


「……」


 見物してた騎士と学園の生徒は声も出ない。

 やり過ぎたか。


「喝采せよ」


 まばらに拍手が起こる。


「あんな手品では僕はやられない」


 石舞台を降りた俺にリードがそう声を掛けた。


「いま、やるなら相手をしてやるぞ」

「今はその時じゃない」

「チャンスの神様は前髪しかないそうだ。後ろからは掴めない」

「ほざいてろ」


 ディータがタオルと飲み物を持ってきた。


「ご主人様、お見事です。ディータも鼻が高いです」

「あんなの児戯だ」


 たぶん、最大出力で魔力を振るったら、山が割れ、海も割れるだろうな。

 後始末が大変だし、1発しか放てないと、かわされた時に隙がでかい。

 それに伸ばすのに時間が掛かるんだよな。

 必殺技の前段階を待ってくれる敵ばかりじゃない。


 魔法系スキルでも生えないかな。

 そうすれば楽なんだが。


 見学の後は授業は終りなので冒険者ギルドに行く。

 フラッチェを見つけた。


「おう」

「ゴブリン討伐おめでとう」

「ありがとよ。魔力で効率よく殴る技ってないかな」

「はぁ、何言っているの。そんなの魔力がいくらあっても足りないわ。普通、刃に魔力を込めてほんの少し威力をあげたり、ゴーストとかを切り裂くのよ。それも1回やったら、魔力切れ」

「俺は魔力がほとんど無限だから」

「呆れた。そんな魔力馬鹿はいないわ。そんな戦法は初めて聞いた」


 おう、そんな感じか。

 ブタキムの記憶にないわけだ。


「魔力タンクとして生きるのが正解か」

「無尽蔵に魔力があるなら他の人に使ってもらった方が効率良いわね。私とパーティを組んでみる?」

「従者になるならな」

「騎士様の従者。やるやる。大出世じゃない。従者で何年か我慢すれば、騎士見習いで、その次は騎士様だからね。その時は口添えしてくれるのよね」

「もちろんだ」


 フラッチェを連れて騎士学園に戻る。

 そうだディータも従者にしよう。


「従者登録したい」


 学園の事務局で、書類を書き始めた。


「フラッチェとディータのスキルは?」

「私は、身体強化と鷹目」

「性魔法です」


 ちょっと待て。

 ディータは何だって。


「聖女が持つ、聖魔法?」

「いいえ、サキュバスが持つ、性魔法です」


 禁忌スキルではないが、忌み嫌われるスキルだ。

 これが判明したから奴隷に売られたのか。


「ディータの問題は置いといて、フラッチェは射手やれよ。鷹目が勿体ないだろう」

「嫌。今は胸があるから無理」


 そう言って胸を突き出して誇示するフラッチェ。

 うん、仕方ないか。

 待てよ。

 魔力で銃は作れないか。


 色々と試すか。

 修練場で俺は拳銃の形の魔力を作った。

 そして爆発させて、魔力の弾を撃とうとしたら暴発。

 俺の服だけでなく、フラッチェとディータの服も吹き飛んだ。


「きゃっ」

「見たいならこんなことしなくてもいいですのに」


 ディータは胸も隠さない。


「貴様、爆発音がして来てみれば、裸で何をやっている」

「最低」


 リードとライラがやってきて軽蔑のまなざし。


「ディータにスキルを聞いたら、サキュバスが使う性魔法だと聞いたので試そうとしただけだ。ちょっと失敗したがな。おれのアレが濃すぎて、ディータの魔法が暴発した。分かるだろ、盛大にいったからな」

「くっ、いくら性魔法だからと言ってこんな場所で」


「ディータとフラッチェ、シャワー室に隠れてろ」

「仕方ないわね」

「はい、畏まりました」


 俺は堂々と全裸で部屋に戻った。

 2人の着替えを持って、修練場に戻る。


 俺はもう銃はやめておこう。

 最低出力だったのにな。

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