第7話 ダンスパーティ
祝勝のダンスパーティ。
エスコートはディータ。
踊ったブタキムの記憶はあるが上手くできる気がしない。
ディータと最初に踊る。
ディータは上手だ。
俺をリードしてくれる。
ディータは高級奴隷だったらしい。
ダンスも仕込まれているとはな。
「楽しいか?」
「はい」
「なら、楽しめ。楽しめる時間は意外に短い」
「はい」
ディータとのダンスが終わり、俺は壁の花になった。
ディーダに申し込む奴がいたので、笑顔で踊っておいでと送り出した。
「ブタキム、お前、ダンスが下手になったなぁ」
「リードか。余計なお世話だ。痩せて、体の感覚が掴めないだけだ」
「そうか。封印の影響かもと思ったが」
「あんなの屁でもない。事実、ゴブリンキングも一撃だったからな」
「くそっ」
「リード、こんな奴は無視して踊りましょう」
リードのパートナーはライラらしい。
「ブタキムの戦勝を祝うダンスパーティでへらへら笑いながら踊れるか」
「リード、どうしたの。あなたらしくない」
「ライラこそどうしたんだ。ブタキムにやられたことを忘れたのか」
「忘れてないわ。でも私も弱かった」
「僕が弱いとでもいうのか」
「俺の前で痴話げんかはやめろよ」
「くっ、気分が悪い」
リードとライラが去って行った。
俺の戦勝記念ダンスパーティが気にくわなきゃ欠席しろよ。
それとも欠席できない理由でもあったのか。
リードとライラは何曲か踊って、リードだけバルコニーに引っ込んだ。
結局、躍るんだ。
「あなた素敵な殿方ですね。お家はどこですの」
こいつは公女のシャリアンヌ。
記憶ではたしかブタキムを嫌っていた。
ブタキムのハーレム候補だったからな。
「ファットピッグです。公女様」
「そういえばどことなく似てますわね。あの見るもおぞましいブタキムに。ひょっとして従弟ですの」
「いいえ。ブタキム本人ですよ」
「まさか。どうやって痩せたのです。それに視線に嫌らしさがない。出来損ないの影武者だと言われたら納得ですわ」
視線に嫌らしさがないか。
こんなことでばれるとはな。
なんと言ってごまかそう。
「ああ、あそこで華麗に踊っているディータがお気に入りでして、もう毎晩可愛がってのお楽しみなので、すこし枯れ気味なんですよ」
「あなたが一人で我慢できるなんて信じないわ」
「ディータは高級奴隷なので、もうあっちの方が凄いのですよ」
「やっぱり最低な奴」
そう言ってシャリアンヌは去って行った。
中身が俺だと判ったらどうなるんだろうな。
ブタキムの記憶では、そういう場合は悪魔憑きになるらしい。
下手すると処刑、一番軽くて幽閉か。
ろくなものじゃないな。
やっぱり悪役ムーブはやめたら駄目だ。
せっかく生き返ったのだから死にたくない。
そう誰でも思うよな。
ディータが帰ってきた。
「楽しめたか」
「はい。でもご主人様と踊ったのが一番良かったです。ご主人様のダンスには愛が溢れてます」
「どんな所が?」
「足を踏まないようにと気をつけてましたよね。ぎこちなさが可愛くって」
そうだな。
そう思いながら踊った。
悪役ムーブするなら平気で足を踏まないといけないのか。
ディータ以外と踊る時は踏んでも良いと思いながら踊ろう。
リードがバルコニーから出て来た。
少し遅れてバルコニーから不気味な男が出て来た。
指が1本なくて、顔の半分が仮面だ。
軍人かな。
不気味と言って申し訳ない。
名誉の負傷なら仕方ないことだ。
何となく気になって俺はその男の後を付けた。
廊下で黒いもやが出て男を見失った。
黒いもやなんて自然発生はしない。
スキルか何かだろう。
だが黒いもやに不吉なものを感じた。
怨念の塊といった感じだ。
俺はもやに触らないように気を付けた。
やがてもやは散った。
死霊魔法かな。
たしか禁忌扱いされている。
あの男は要注意だな。
そんな気がした。
パーティ会場に戻りワインを頼む。
ワインで喉を潤すと、不浄な物が洗い流された感じがした。
パーティが終わり、騎士学園に戻ると、黒いもやで調べた。
司書にも聞いたが該当する物がない。
ゴーストだと灰色のもやなんだよな。
レイスとかになると青白い光だ。
唯一引っ掛かったのが虫使い。
虫っていう感じじゃなかったな。
虫もおぞましいけど、あれからは怨念を感じた。
「黒なら該当する記述がたくさんありますよ」
司書から言われた。
「例えばどんな?」
「そうですね。黒は死の色。穢れの色です。死神は黒で描かれます」
死の色か。
やはりアンデッドを連想する。
「死神が黒いもやになるとかそんなことはないか?」
「ないですね。死神が霧になるなんて話はありません」
「ありがとう。助かったよ」
「どういたしまして」
死の色か。
穢れねぇ。
そういう危ない奴なのかも知れない。
そんな奴がリードと接触してた可能性がある。
あいつ、馬鹿なのか。
善人か悪人かぐらいは軽く判断しろよ。
まあ無理か。
俺は前世の人生経験がある。
色んな人と会ったからな。
良い奴も悪い奴も。
人を見る目はそれなりだと思っている。
新入社員の面接をやったことも一度じゃない。
リードはもう駄目かな。
元ブタキムの責任があることなので、俺も責任を感じる。
だが、俺達は15歳の成人を越えている。
自分でしでかしたことは、自分で責任を取らないとな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます