第6話 王命
「王命である。ブタキム・ファットピッグはゴブリンに包囲された都市を解放すべし」
軍務大臣にそう言われた。
「謹んでお受けします。その任務を遂行にあたり魔法スキル持ちを20名お貸し頂きたい」
「よろしい。騎士団には私の方から言っておこう。魔法騎士を派遣することを約束する」
ゴブリン退治か、魔力タンクの俺がいて砲台が20もあれば楽勝だな。
俺は馬車で、他の魔法騎士は騎兵となって現地に急いだ。
「馬に疲れが見えるな。いったん停まれ」
「全軍停止」
俺は降りると。
「【供与】生命力」
それを全ての馬に施してやった。
元気になる馬。
あと少しだ頑張ってくれ。
「聞いた話では魔力を無限に近く供与できるとのこと。馬に疲労回復魔法を掛けましょうか」
「やってくれ」
疲労回復魔法持ちに魔力を供与する。
馬はさらに元気になった。
「魔力供与。凄いですね。これならゴブリンに勝てそうです」
現地に着くと、千を超えるゴブリンに街が包囲されていた。
「よし、街に入るぞ。そして城壁の上から狙い撃ちだ。街に入る時に気をつけろ」
「くさび型陣形」
「了解」
魔法を撃ちながら街へと近づく。
魔力供与があったので問題なく入れた。
「討伐隊の方ですか? 私は代官です。もう矢も尽きてどうしようもありません」
「安心しろ。俺様は無敵だ」
城壁の上から、魔法を撃つ簡単なお仕事。
俺は魔力供与するだけだ。
ゴブリンの数が半分になった時。
「グギャャャ!!」
3メートル近い黒いゴブリンが雄叫びを上げた。
そして黒い岩を投げる。
黒い岩は城壁に当たると黒い煙を発した。
不味い溶かされている。
このままだと城壁を破られて、人がたくさん死ぬ。
何か手はないか。
あれっ。
俺に封印が掛かってなきゃ、あのでかくて黒いゴブリン。
たぶんゴブリンキングだろうは瞬殺だよな。
封印を供与してみるか。
「【供与】封印」
城壁近くにいたゴブリンに供与してみた。
手ごたえはあったが力は戻ってない。
どういうことだ。
ああ、供与にも受け入れる側の容量ってのがあるのか。
ダメージは木に供与したけど、木って生命力の塊みたいなものだものな。
じゃあ駄目元で。
「【供与】封印」
ゴブリンキングに封印を供与してやった。
体が軽い。
そうそうこの感じ。
俺は城壁から飛び降りると、ゴブリンキングに向かってパンチを繰り出した。
魔力付きで。
ゴブリンの大軍が真っ二つになりゴブリンキングの体に風穴が開いた。
そうか、ゴブリンキングは封印で弱体化されているのか。
だからあっけなく死んだ。
さて戻ろう。
ザコゴブリンを虱潰しするのは御免だ。
城壁に飛び上がると、封印が元に戻った。
3分ぐらいかな。
まるで特撮ヒーローだ。
まあ良い。
強敵が現れたら3分間、相手は弱体化でこっちは無敵。
残党狩りは欠伸が出るぐらい退屈だった。
そして、包囲は解かれ、散った残党は守備兵が出陣して片付けるまでなった。
ここでの役目は終りだな。
そうそう、元ブタキムがなんで王命をたびたび受けていたのかというと、王女と結婚して王になることを夢見ていたらしい。
ぶれない奴だ。
欲望には忠実。
ハーレムが夢だったらしい。
ハーレムなんてギスギスするだけで楽しくないぞ。
元ブタキムのはがねメンタルなら、大丈夫と言いそうだが。
「ブタキム! ブタキム!」
そんな歓声が上がる。
まるでカップラーメンのCMだな。
豚キムチ味のカップラーメン。
昔、よく食べた。
歳を取ったら油のしつこさに受け付けなくなったが、この体ならそれが食える。
誰か手に入れてくれないかな。
異世界じゃ無理か。
みんなの好きな味、ブタキムが凱旋しますよ。
「お疲れ様です」
馬車に乗り込むとディータが労ってくれた。
奴隷じゃないが、優しくしてくれる女の子がいるとやる気が出るな。
今回の報奨金の一部をディータを飾り付ける金に回そう。
偽善ではないが散財は良い事だ。
景気が良くなる。
帰り道は急ぐ必要はなかったが超特急で帰った。
街の門の所にリードがいる。
「停めろ」
俺は馬車を降りるとリードに近寄った。
「なぜ死んでない。ジャスティスの計画がずさんだったとでもいうのか」
「くっくっくっ、封印のおかげで助かった」
「くっ、僕の封印が不味かったのか」
「そんなことより。あのゴブリンキングはジャスティスやらの差し金か?」
「さあな」
お前、分かっているのか。ゴブリンに犠牲になった人もいるんだぞと言いたいが、分かっているんだろうな。
正義を騙る奴は大事の前の小事とかよく言うからな。
散々悪い事をしてきたお前が、僕に説教するのかとか言い返して終わりになりそうだ。
たしかにブタキムは悪い。
世界征服なんか考えなければ、俺は邪竜を殺さなかっただろう。
ブタキムの悪事なんて虐めの延長だろう。
今回のこととは程度が違うが言ってもたぶん聞かない。
俺は諦めて、馬車に乗った。
もう関係修繕は無理なような気がする。
なら悪党らしく、正義を粉砕するさ。
どうやらそれしかないようだ。
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