第35話:閑話・教育・イワナガヒメ視点
「イワナガヒメは克也に甘過ぎるのではないか?」
身勝手なイザナギがケンカを売って来る。
そんな性格だからイザナミノミコトに愛想をつかされるのです。
「私のどこが甘過ぎるのですか?!」
「全部だ、全部が甘い。
克也は男だぞ、少しは危難に立つ経験をさせないと、1人前の男になれん!」
「貴男のような身勝手なのが1人前の男だと言うのなら、克也は1人前にならない方がいい、その方が立派な男になれます」
「なんだと、長生きと健康以外何の力もない国津神の分際で、天津神でも特に尊い我に逆らうのか?!」
「氏神として分霊された時から国津神も天津神もないわ!
むしろ主祭神として祭られている私の方が、熊野12権現の1柱として、配祀神として祀られているイザナギよりも格上です」
「何を、そんな事を言うのなら私は戻る、日本に戻って好きにする」
「さっさと日本に戻ればいいわ、克也を守る気のないお供など不要よ。
同じ考えの権現と神使を連れて日本に戻りなさい!」
「なんだその言い方は、国津神の分際で天津神にそんな口の利き方をして、ただですすむと思っているのか?!
神剣で斬れば、お前でも殺せるのだぞ!
長生きと健康しか能のないお前など、いつでも殺せるのだぞ!」
「殺せるものなら殺してもらいましょう!」
「いいかげんにしなさい、これ以上イワナガヒメにからむなら、私も黙っていませんよ、もう1度私と戦う覚悟があるのですか!」
イザナミノミコトが私の味方をしてくれました。
イザナミノミコトもイザナギには思う所があったのでしょう。
熊野12権現として祀られているので、大嫌いな相手でも争わずに協力していたのに、本性むきだして勝手を言うイザナギに腹を立てたのでしょう。
「母上がやると言われるなら、私も一緒に戦います」
イザナギに斬り殺されたヒノカグツチノカミが、母神のイザナミノミコトの味方に付くと宣言しました。
「愛しい我が子ヒノカグツチノカミよ、そう言ってくれるのは有難いですが、私にイザナギと争う気はないのですよ。
イザナギが熊野十二権現としての責任を果たしてくれたら良いのです。
配祀神として主祭神を助けてくれればいいのです。
私たちがここで争って力を失うような事になったら、何の為にこの世界に来たのか分からなくなってしまいますからね。
イザナギ、イワナガヒメのやり方に文句があるのなら日本に戻りなさい。
自分の考えを押し付けるのではありません」
「そうは言うが、克也を成長させるのも、大切な事なのではないか?
甘やかせすぎて、愚かな大人に育てても良いのか?
このままでは最近の人間のような、愚か者に育ってしまうぞ?
我らを祀る神主が、そんな愚か者でも良いのか?」
「愚か者に育ってほしいとは思わないですが、急ぐことはないでしょう。
あの子はずっと病院で暮らしていたのです。
日本でも珍しい育ち方をしているのです。
急いで厳しい育て方をしても、ついて行けません」
「イザナミノミコトの言われる事も分かりますが、我らがついているのです。
少々厳しくしたくらいで克也が潰れてしまうとは思えません」
イザナミノミコトが死んでからイザナギの身体から生まれた、黄泉の穢れを祓う時に生まれた、スサノオノミコトがイザナギに味方して言った。
「貴男と克也は全く違います。
生まれ持って強大な力を持つスサノオノミコトと克也は違います。
前にも言ったでしょう、これ以上何か言うなら日本に戻りなさい。
克也は私1人で守ります、貴方たちは日本に帰りなさい」
「イワナガヒメ、そこまで言ってはいけませんよ。
この世界の神にも強い者がいます。
竜種の中には、私たちでも勝てない者もいます。
貴女1人では克也を守りきれないかもしれません。
多少妥協してでも、12柱とその神使たちを味方にしておきなさい」
イザナミノミコトが親身になって言ってくれます。
イザナミノミコトにそこまで言われては、大嫌いになったイザナギや身勝手なスサノオノミコトが相手でも、少しは話を聞かなければなりません。
2人とだけ話すのは絶対に嫌なので、氏神全員で話し合いました。
熊野十二権現全員と話し合って、克也を教育する事になってしまいました。
嫌だったけれど、克也が良くいる子供のように育つのも嫌だったのです。
昔のような厳しい育て方は絶対にさせまぜんが、話し合っているうちに、少しは現実を体験させた方が良いかもしれないと思ってしまったのです。
ただ、克也の教育を他の神に任せるのは絶対に嫌でした。
完全に納得した方法ではないですが、やるのなら自分でしたかったのです。
克也に合わせて手加減できるのは私しかいないですから。
イザナミノミコトなら安心して任せられるし、アマテラスなら少しは任せられるのですがが、イザナギやスサノオノミコトには絶対に任せられない。
ヒノカグツチノカミは心根の優しい神ですが、本質的な身体が炎だから、お供の雉に変化しているとは言っても、克也の側にいさせるのが怖い。
納得できない嫌な教育方法であっても、私以外の神が克也の側につくくらいなら、克也の側にいられるのなら、私の口から克也に伝える、私の手で克也に施す。
愚かな私はそう思ってしまったのです
私なら、克也の体調や精神状態に合わせて手かげんできる。
イザナギやスサノオノミコトにそんな心遣いは期待できない。
だから私がやるしかない、そう思ってしまったのです。
熊野十二権現との話し合いで克也を教育すると決めましたが、厳し過ぎる教育で克也を苦しめる事だけはしない、絶対にしない、そう思っていたのですが……
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