第32話:方針・佐藤克也視点
イザナギとこの国の正統な王ハインリッヒが話し合ったその日の内に、僕たちは城に戻って普通に過ごそうと思っていた。
人質が送られてくると聞いていたけれど、思っていたよりも早く、僕が城に戻って直ぐに、人質が2人もやってきた。
神使がハインリッヒの孫であるシャルロッテとアレクサンダーを城に連れて来た。
シャルロッテは12歳で、ピンクの髪と瞳がきれいな女の子だ。
性格は分からないけれど、悪い子ではないと思う。
アレクサンダーも12歳で、金色の髪と赤い瞳がきれいな男の子だ。
この子も悪い子ではないと思う、たぶんだけど、良い姉弟の気がする。
2人は双子だと聞いたけれど、見た目は全然似ていない。
顔は似ている所があるけれど、色が全然違うので双子とは思えない。
イワナガヒメの話では、二卵性双生児だそうだ。
「克也様、勉強に来たシャルロッテとアレクサンダーの食事ですが、肉や魚を食べさせても良いのですか?」
「肉や魚を食べないのは僕の勝手だから、シャルロッテとアレクサンダーに食べるなと言うのはかわいそうだよ、好きな物を食べさせてあげて」
「承知いたしました、好きな物を好きなだけ食べて良いと伝えさせます」
「そういえば家臣も一緒についてきたんだよね?」
「はい、料理を作ったり身の回りの世話をしたりする従者は必要です。
従者がいないと、克也様の家臣や使用人が食事を作ったり身の回りの世話をしたりしないといけませんから、最低でも1人ずつ必要です」
「僕も病気の時は、何でも誰かにしてもらっていたけれど、元気な従姉たちは、自分の事は全部自分でやっていたよ?」
「克也様のいた日本では、電化製品が発達していました。
炊事洗濯掃除の家事を、全部電化商品が簡単にしてくれました。
ですがこの世界では、全部人の手でしなければいけません。
魔術を使える者の中には、魔術を日常生活に取り入れられる器用な者もいますが、大抵の者は魔術を戦いや仕事にしか使えないのです」
「僕ずっと病院だったから、普通の生活を知らないから、分からないよ」
「ご安心ください、日本に戻るまでに、普通の生活を知ってもらいます。
この世界の事を知っていただいて、楽しく暮らして頂いてから、この世界に来る直前に戻っていただきます」
「うん、ありがとう、この世界を楽しんでから日本に戻るよ。
またアンデッドを移住させたいんだけど、今日は無理かな?」
「今日はもう遅いのであきらめてください」
「明日の朝から行くのは無理かな?」
「シャルロッテとアレクサンダーがあいさつしたいと言ってくると思われます。
実質人質ですので、無視してもかまいませんし、後日にしても良いのですが、克也様はそのようなやり方は嫌いですよね?」
「うん、誰かを無視するのも後回しにするのも嫌だよ。
特に女の子を待たせるのは嫌だよ。
明日あいさつに来ると分かっていて、外には行けないよ。
でも、悪い神様よりも先にアンデットを助けてあげたい。
悪い神様にだまされる魔獣や魔族を助けてあげたい」
「では、会う時間を克也様が決められると良いですよ。
完全に決めてしまったら、ここに来たばかりのシャルロッテとアレクサンダーが困りますので、明日から3日間、朝早くと夜遅くに会う時間を決められるのです。
朝と晩ならいつでも良いと言って、選ばせてやるのです。
朝に会えばそれ以後は好きにできます。
夜遅くに約束すれば、その時間まで好きにできます」
「そっか、そうすればいいんだね、ありがとう」
「それでよろしいのでしたら、使者を送っておきます」
「うん、そうして、ありがとう」
「後はシュテファニーですが、会われますか?」
「僕の命を狙っているんだよね?」
「はい、最近は殺す機会をうかがっています」
「実行しようとしたら、殺すの?」
「……克也様が殺すのを嫌がっておられますので、生きて捕らえます」
「捕らえたら地下牢に入れるの?」
「はい、克也様を殺そうとした者を許す訳にはいきません。
八つ裂きにせずに生きて捕らえるだけでも慈悲を与え過ぎです」
「……僕が日本に戻る時に殺されちゃうんだよね?」
「次代の統治者しだいですが、普通は殺されます。
私たちがいなくなった国は、周囲の国や権力者に狙われます。
利用されるのが分かっている前王家の人間を生かしておくのは、とても危険です」
「僕を襲わなかったら、今のままでいられるんだよね?」
「はい、克也様を襲わない限り、私たちは異世界人の事など気にしません。
少なくとも克也様が日本に帰られるまでは、好きな物を食べ自由に暮らせます」
「僕が会わなければ、僕を襲う事はできないよね?」
「はい、謁見の願いがあっても、拒否すれば会う事は無くなります。
ですがよろしいのですか、レベル上げを手伝う約束を破る事になりますよ」
「大爺ちゃんや大婆ちゃんに、約束を破らないように言われているから……
約束を守って会わない方法はないかな、何か良い方法はないかな?」
「克也様とは別にレベル上げさせればいいでしょう。
どうせ浄化の邪魔をするだけです、克也様が側にいる必要はありません。
神使の誰かにやらせれば問題ありません」
「そっか、僕でなくても良いのか、レベル上げの手伝いさえできれば良いのか!」
「ただ、王家の再興を願っているシュテファニーと側近たちは、克也様の正室の座を狙っていますので、必ず一緒にレベル上げしたいと言ってきます。
その時に、情に流される事無くキッパリと断ってください」
「良く分からないけれど、断ったら良いんだね?」
「はい、断られればだいじょうぶです」
「失礼したします、シャルロッテ殿とアレクサンダー殿が謁見願の使者を送って来られました、どういたしましょうか?」
僕の部屋を守る護衛がドアの外から声をかけて来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます