第24話:わがまま・佐藤克也視点
「克也様、お城に戻る時間でございます」
「もう少し、もう少しだけ成仏させたい、ダメ?」
「ダメではございませんが、本当によろしいのですか?」
「え、何かあるの?」
「克也様は女の子、シュテファニー王女を手助けしたかったのですよね?
シュテファニー王女はずいぶんと疲れておられますが?」
「あ、ごめんなさい、怖かったアンデッドを成仏させられて、夢中になっていた。
シュテファニーの手助けをしたいと言っていたのに、自分の事だけ考えていた」
「熱中するのは悪い事ではありません。
特に今回は、辛く悲しい状況になったアンデットを成仏させているのです。
できるだけ早く、多くのアンデットを成仏させてあげるのは良い事です。
ただ、克也様にとって大切な方を間違われないでください」
「うん、ありがとう、無理させてごめんね、シュテファニー」
「……いえ、こちらこそ足手まといになってしまい、申し訳ございません」
「今日はもうお城に戻ろう、明日またくれば良いだけだよ」
「はい、ありがとうございます」
僕は男の子として女の子を助けるのを優先した。
本当はもっとアンデッドを成仏させたかったけれど、ガマンした。
ガマンしてお城に帰って、お供が作ってくれた料理を食べた。
以前は、13人のお供の中で、手が使える猿の子が作ってくれていた。
でも今は、お供のお供が作ってくれるようになった。
ただ、お供のお供で手が使えるのは猿の子だけなので、いつも猿の子が僕の食べるご飯を作ってくれる。
僕が魚も肉も卵も食べられなくなったので、野菜と乳だけで作ってくれる。
この世界には大豆を使ったしょう油がなかったので、僕のために作ってくれた。
ミソもなかったので、僕が野菜を美味しく食べられように作ってくれた。
僕は野菜のサラダが苦手だった。
そのままでは食べられなくて、マヨネーズつけないと食べられなかった。
でも、マヨネーズは卵を使っているから、今は野菜のサラダを食べられない。
勝手な事を言う僕が野菜サラダを食べられるように、野菜をミソであえてくれる。
甘いミソや辛いミソ、僕が美味しく食べられるミソを探してくれている。
僕もがんばって美味しく食べようと思っているんだけれど……
「克也様、そんなに気にしなくても良いのですよ。
私たちは料理が大好きなので、新しい料理を考えて作るのが楽しいのです。
克也様に美味しく食べていただける料理を作るのが楽しいのです。
今日は卵の代わりに豆乳を使ったマヨネーズを作ってみました。
これまでのマヨネーズのように、美味しくサラダ食べられるか試してください」
「ありがとう、ごめんね、わがままばっかり言って」
「克也様のは、わがままではありません。
好きではない、好みではなかったミソドレッシングのサラダも、少しも残される事無く全部食べられておられます。
完食されているのですから、あやまらなくて良いのです」
「それは、食べ残すのは悪い事だと教わったから。
でも、はしをつけていないのは、お供が食べてくれたんだ。
食べ残してはいないけれど、ズルしたような気がする……」
「だいじょうぶでございますよ、食べ切れない分を家族が食べるのは普通の事です。
ズルをした訳ではありません、安心してください。
さあ、ズルではないと分かったのです、私たちの料理を試食してください。
安心してください、試食していただく料理は、ほんの少しにしております。
卵の代わりに豆乳を使っています。
白ごま油、塩、リンゴ酢、メイプルシロップ、マスタード、白ミソで味を調えていますが、その割合で味が変わってしまいます。
克也様の好きだったマヨネーズにあわせて味を調えていますが、卵を使ったマヨネーズでも好きな物と好きではない物がありましたよね?
克也様の正直な感想を教えていただきたいのです」
「……美味しいけど……美味しいけど……ごめんなさい、ちょっとちがう」
「申し訳ありませんが、マヨネーズ作りに、1からお付き合い願いますか?」
「いいけど、もうあまり食べられないよ?」
「はい、無理にたくさん食べていただく気はありません。
克也様の好みを確かめたいだけです。
さきほどのマヨネーズは甘過ぎましたか、すっぱ過ぎましたか?」
「少し甘い気がした、すっぱいのはもっとあった方が好き」
「分かりました、1番基本の、余計なモノを入れていないマヨネーズを食べていただきますので、感想を教えてください」
「うん、分かった」
「こちらは大豆油が100ミリリットル、豆乳が50ミリリット、リンゴ酢10ミリリットル、キビ砂糖小さじ1杯、塩小さじ1/2杯です。
食べて感想を教えてください」
「うん、分かった……甘い気がする、すっぱいのはもう少し、塩辛いのはこれくらいが好きだよ」
「次はリンゴ酢を増やしてキビ砂糖を減らして作ります」
「もう良いの、もっと試食するんじゃないの?」
「段々お腹が一杯になってきたのではありませんか?」
「……うん、ごめん」
「謝らないでください、無理なお願いをしたのは私たちの方です。
寝室にご案内させていただきます、ついて来て下さい」
「……わがまま言って良い?」
「なんでしょうか、私にできる事なら何でもやらせていただきます」
「寝る前にもう少し運動がしたい……アンデッドを成仏させたい」
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