第23話:閑話・聖なる魔術・シュテファニー王女視点
「光を司る太陽の女神アマテラス、健康や長寿を司る生命の女神アマテラス。
迷えるアンデットを成仏させて天国に迎え入れたまえ、レストインピース」
勇者王陛下が聖なる呪文でアンデッドを天国に導かれます。
私たちの周りに群がっていた100を超えるアンデットが一瞬で成仏します。
下級のゾンビやスケルトンとはいえ、信じられない力です。
父王たちが無理矢理この世界に召喚したのが勇者王陛下です。
違う世界の方なので、信じる神が違うのも当然です。
当然ですが、あまりにも考え方が違い過ぎます。
私たちが信じる神様は、アンデッドを救おうなどとは考えません。
恨みの神を信じるようになったモノ、自分と敵対するモノを許されません。
浄化という言葉自体が、アンデットを不浄なモノ汚いモノと考えている証拠です。
救って天国に導こうなどとは考えず、きれいに無くしてしまおうという考えです。
当然のことですが、アンデットは滅ぼされないように抵抗します。
「光を司る太陽の女神アマテラス、健康や長寿を司る生命の女神アマテラス。
迷えるアンデットを成仏させて天国に迎え入れたまえ、レストインピース」
またしても勇者王陛下が聖なる呪文でアンデッドを天国に導かれました。
100を超えるアンデッドが一緒で成仏されます。
ですが今回は5体ほど成仏を拒むアンデッドがいました。
「天国では暮らせない者たち、恨みを捨てきれない哀しき者たち。
彼らの想いをそのまま受け入れる大きな心を持つイザナミノミコト。
アンデッドが恨みを持ったまま暮らせる、ヨミの国の女王ヨモツオオカミでもあるイザナミノミコト。
このままの彼らを受け入れてあげてください、お願いいたします、エントリ」
勇者王陛下が流れるように次の成仏方法を唱えられました。
それが呪文なのか祝詞なのか、私には分かりません。
分かりませんが、激しい恨みで抵抗していたアンデッドが消えたのは確かです。
「シュテファニーも遠慮せずに成仏呪文を唱えたら良いよ。
成仏させてあげないとレベルが上がらないよ」
どうやら祝詞ではなく呪文のようです。
たしかに、私が教わった祝詞はとても長かったです。
「ありがとうございます、勇者王陛下。
また勇者王陛下にお願いしなければいけないくらいアンデットが集まるまで、成仏呪文と浄化呪文の練習させていただきます」
情けない話ですが、100体以上のアンデット集まってしまうまで、私の練習をさせてもらっています。
私が王族の名誉を回復するためのアンデット成仏ですから、私を優先してくださっているのですが、全くできていません。
「光を司る太陽の女神アマテラス、健康や長寿を司る生命の女神アマテラス。
迷えるアンデットを成仏させて天国に迎え入れたまえ、レストインピース」
勇者王陛下と同じ異世界の神様にお願いしているのですが、私の願いは聞き届けていただけません。
私は勇者王陛下を無理矢理この世界に召喚した王の娘です。
勇者王陛下の世界の神様に嫌われているのでしょう。
「絶対の力を持たれる唯一の神様、私にアンデットを浄化する力を与えたまえ。
けがれた存在であるアンデットを浄化して滅ぼす力を与えたまえ。
ピュリフィケーション!」
勇者王陛下やお供の方々に教わったように、アンデッドを救ってあげたいという気持ちで人族の唯一神に浄化をお願いしました。
勇者王陛下のように100体ものアンデッドを1度に成仏できるとは思いません。
そんな思い上がれるような事は何1つで来ていません。
1体のアンデットを浄化できれば良いと思って唱えたのですが……
「絶対の力を持たれる唯一の神様、私にアンデットを浄化する力を与えたまえ。
けがれた存在であるアンデットを浄化して滅ぼす力を与えたまえ。
ターンアンデッド!」
たった1体のゾンビも浄化できなかったので、呪文を変えてみました。
心からアンデッドを救いたいと想って、願いを込めて呪文を唱えました。
それなのに、アンデッドを浄化できませんでした。
1度や2度ではありません、ずっとです、ずっとなのです。
アンデッドダンジョンに来てからずっと、1度も浄化できていないのです。
1体のアンデットも浄化できていないのです!
勇者王陛下とお供に教えていただいた呪文と祝詞は全部唱えました。
ですが、全く効果がありませんでした。
これは予想できた事でしたから、それほど失望しませんでした。
しかしながら、我が国が信じ続けてきた、人族唯一の神に願った浄化魔術が、全く効果がないとは思ってもいませんでした。
私が知る限りの言葉を使って浄化魔術を唱えましたが、全く効果がありません。
勇者王陛下に500体以上のアンデットを成仏させていただいているのに、その間1体のアンデッドも浄化できないなんて、あまりにも情けないです。
ホフマン・ロートリンゲン王家は唯一神に見捨てられたのでしょうか?
勇者王陛下を支配下に置けなかった事で、見放されてしまったのでしょうか?
「絶対の力を持たれる唯一の神様、私にアンデットを浄化する力を与えたまえ。
けがれた存在であるアンデットを浄化して滅ぼす力を与えたまえ。
ピュリフィケーション!
ターンアンデッド!」
勇者王陛下の下につくと思ったのが悪かったのでしょうか?
必ず王権を取り返す、克也とお供の者たちを殺す。
そのための力を与えてくださいと願ったら、アンデッドを浄化できました。
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