第22話:成仏・佐藤克也視点
「克也様、この世に縛り付けられたかわいそうなアンデッドを、聖なる魔術や祝詞で成仏させてあげましょう」
僕も男の子だ、どれだけ怖くても、女の子の前では堂々としなければ!
「その通りだね、かわいそうなアンデットは成仏させてあげよう」
「では今1度、聖なる魔術と祝詞を復習しましょう。
この世界に縛り付けられている、かわいそうなアンデットを成仏させましょう。
苦しまずに天国か死者の世界行けるようにしましょう。
天国も死者の国もこばむアンデッドは、浄化する時に苦しまないように、強力な魔術を短時間だけ浴びせられるように復習しましょう」
「うん、分かった、かわいそうなアンデットを成仏させてあげるよ」
昨日シュテファニーがお願いに来た。
王家の名誉回復のために僕と一緒に魔獣退治に行きたいと言った。
お供たちが直ぐに許してくれるとは思っていなかった。
僕が何度もお願いしたら許してくれるとは思っていたけれど、こんなに早く、昨日のお願いだけで許してくれるとは思っていなかった。
ただ、許してはくれたけれど、厳しい条件を付けられてしまった。
普通の魔獣を改心させるのは危険だから、危険のない相手に限ると言われた。
危険のない相手と言われて、スライムだと思った。
以前はたおせたスライムだけど、今はたおせない。
クラゲがスライムの1種だと分かってからは、スライムもたおせなくなった。
スライムは頭が悪くて説得もできないと聞いていたから、どうするか心配だった。
「今回の相手はアンデットにします。
アンデットが相手なら、我々が傷つく事は絶対にありません。
聖なる力を備えた私たちに近づくと、アンデットは浄化されるのです。
浄化されるのが嫌なアンデットは、私たちから離れようとします。
私たちが聖なる守りをかけた人間にも近づけなくなります。
克也様に聖なる守りを重ね掛けしますので、攻撃されなくなります」
攻撃されないと言われても、お化けは怖いよ!
ゾンビに追いかけられるなんて、絶対に嫌だよ!
でも、そんな情けない所を女の子に見せられない!
「分かった、絶対に安心なのなら、だいじょうぶだね?
シュテファニーを連れて行ってもだいじょうぶだね?
シュテファニーにも聖なる守りをかけてあげるんだよね?」
「ご安心ください、克也様に恥はかかせません。
シュテファニーがアンデットに傷つけられないように、私たちが護ります。
聖なる守りを重ね掛けして、絶対に傷つけられないようにします」
「ありがとう、イワナガヒメたちがいてくれるから、僕は好きな事ができる。
魔獣を殺すことなく改心させられるのも、好きになった畑仕事ができるのも、男の子として女の子を助けてあげられるのも、全部イワナガヒメたちお陰だよ。
ありがとう、本当にありがとう」
「当然の事をしただけです、お礼など無用でございます。
それよりも聖なる魔術と祝詞の復習です。
しっかりと覚えていただかないと、成仏させに行けませんよ」
「うん、分かった、礼を言う時間が有るなら練習する」
イワナガヒメたちの言う通りに何度も練習した。
以前も祝詞の練習をしていたので、今度はあまり時間がかからなかった。
新しい言葉を覚えるのと、新しい節を覚えるのが難しかったけれど、息が続かなくて出なかった高い声を出せるようにした時とか、伸ばせなかった所を伸ばせるようにした時よりは、ずっと早く覚えられた。
「すばらしいです、これほど清らかな祝詞なら、アンデットの最高位にいるノーライフキングやゴッドアンセスタヴァンパイアやプロウジェニタヴァンパイアも成仏させられますよ」
イワナガヒメがほめてくれる。
「それほどでもないよ、みんなが教えてくれた通りにしているだけだよ。
これで最高位のアンデットを成仏させられるのなら、みんなならダンジョンにいるアンデットを全員成仏させられるよ」
「克也様、それは違いますよ。
音が正確なのも節が正確なのも大切ですが、何よりも大切なのは心です。
迷っているかわいそうなアンデットを成仏させてあげたい。
そう想う優しい心が何よりも大切なのです。
克也様の呪文や祝詞には、その優しい想いがこもっています。
だから最高位のアンデットも成仏させられるのです」
「ほめてくれてありがとう。
イワナガヒメが言ってくれた、アンデットを想う心を忘れないようにする。
不幸な状況のアンデットが成仏できるように、心を込めて祝詞を唱えるよ。
シュテファニーはどう、やれそう、祝詞は覚えられた?」
「申し訳ございません、祝詞は私には難しすぎます。
心をこめるようにしていますが、上手く発音できません。
聖なる魔術の方は上手く発音できるようになりました。
レベルが低いので2つしか使えませんが、アンデッドを成仏させる事ができれば、レベルが上がりますので、いずれは多くの聖なる魔術を使えるようになります。
どうか見捨てないでください、一緒に連れて行ってください」
「だいじょうぶだよ、置いて行ったりしないよ。
このアンデットダンジョンの成仏自体、シュテファニーの為にするんだ。
聖なる魔術が2つしか使えなくても、置いて行ったりしないよ、安心して」
「ありがとうございます、勇者王陛下のご厚意に感謝の言葉もありません」
「克也様、用意ができましたので、アンデットダンジョンに参りましょう」
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