第13話:カレーライス・佐藤克也視点

「やあああああ!」


 白くて大きな犬のお供、イワナガヒメが魔獣を言って聞かせてくれた。

 僕も手伝ったけれど、僕は非力で役に立たなかった。

 僕の力では、豆をぶつけても魔獣が言う事を聞いてくれない。


 だから、強くなるために一生懸命にスライムをたおす。

 イノシシに似た魔獣と違って、スライムはたおしても胸が痛くならない。

 心臓が痛いのとは違うけれど、魔獣をたおそうとすると胸が痛くなる。


「克也様、見事でございます」


 僕がスライムをたおす度にイワナガヒメがほめてくれる。

 たくさんほめてくれるのがうれしくて、たくさんたおそうと思う。

 スライムをたおすと小さい魔石が手に入るのも楽しい。


 ただ、スライム以外の魔獣をたおせない。

 イノシシに似た魔獣だけでなく、ネズミに似た魔獣もたおせない。

 シカに似た魔獣も牛に似た魔獣も全部たおせない、スライム以外たおせない。


「克也様、そろそろ食事になされませんか?」


 スライムしかたおせなくて、だんだん怖くなっていると、いつも優しいイワナガヒメがご飯を食べるように言ってくれた。


「うん、ありがとう、ご飯食べる」


 僕がそう言うと、スライムをたおしていた草原にご飯を用意してくれた。

 病院に入院している時にタブレットで観ていた、ピクニックと同じだった。

 青い物を草原の上に広げて、ご飯が食べられるようにしてくれた。


 「克也様が肉で良いと言われたので、ビーフカレーにしました。

 お口に合わなければ他にも用意しておりますで、がまんせずに言ってください」


 イワナガヒメがそう言って、銀色の少し深い皿に入れたカレーを出してくれる。

 病院で食べる時に皿は、白くて丈夫な物だった。

 僕が落としても割れないような、プラスチックのお皿だった。


 でもこの世界に来てから使うお皿は、銀色の金属のお皿が多かった。

 白いお皿はトウジキと言うようで、落とすと割れると言われた。

 お城に人がとても高いと言ったので、怖くなってしまった。


「大丈夫でございますよ、この世界の人間には高い物ですが、私たちにすればいくらでも作れる安い物です、安心して使ってください」


 イワナガヒメがそう言ってくれたけど、怖いままだった。

 お皿を割って、罰で殺された人がいると聞かされたら、怖くなる。

 この世界は人よりもお皿の方が大事なのだと怖くなった。


「克也様が愚かな王と悪い貴族を退治されたので、人の命よりもお皿の方が大切な、間違った法が正されました、安心されてください。

 もうお皿を割ったくらいで人が殺される事はありません、だいじょうぶですよ」


 イワナガヒメがそう言ってくれたから、割れるお皿を使おうと思った。

 でも、使おうとしたけれど、やっぱり怖くなって、直ぐに食べられなかった。

 そうしたら、イワナガヒメがお皿を変えてくれた。


 落としても割れない銀色の皿に変えてくれた。

 その日から僕が使う皿は全部銀色になった。


 スープを飲む時の深い皿も、肉を食べる時に浅くて大きな皿も銀色になった。

 今日カレーを食べる銀色の皿は、少し深くて中くらいの大きさだ。


「今日のカレーも美味しいよ。

 辛すぎなくて、肉もとても柔らかくて、ニンジンが入っていなくて美味しいよ」


「それはようございました、たくさんお替りされてください。

 カレーと一緒にサラダを食べてくださるとうれしいです」


「うん、お替りするよ、サラダも食べるよ。

 でも、サラダはマヨネーズをたくさんかけてね。

 マヨネーズのないサラダは好きじゃないよ」


「分かっております、安心してください。

 克也様が好きな味のマヨネーズをかけております」


 イワナガヒメがそういうので、できれば残したかったサラダも食べた。

 カレーの中に野菜が入っているから、サラダは食べなくてもいいよね。

 そう言いたかったけれど、言えなくなってしまった。


 野菜が苦手な僕のために、食べやすいように作ってくれている。

 僕が強く言ったら、食べなくても良いと言ってくれる。

 そう言ってくれるのが分かっているから、言えなくなっちゃった。


「2皿目はオムレツをそえましょうか?

 オムレツよりも目玉焼きの方が良いですか?

 牛肉をたくさんいれても良いですし、ジャガイモを多くしても良いですよ?」


「オムレツと目玉焼きの両方が食べたいけど、ダメかな?

 卵を食べ過ぎたらいけないんだよね?」


「そんな事はありません、大丈夫です。

 克也様はたくさん動かれていますので、卵の4つや5つ食べても大丈夫です」


「良いの、だったらオムレツと目玉焼の両方を乗せて。

 牛肉も多くして、ジャガイモは少ない方が良いな。

 あ、ジャガイモがいらないとは言っていないよ、1皿目と一緒で良いよ」


「はい、分かっております、ジャガイモも入れさせていただきます」


「おいしい、もの凄く美味しいよ!」


「それは良かったです、サラダはどうですか?」


「うん、サラダも美味しいよ、好きなマヨネーズだから食べられるよ。

 でも、やっぱり野菜のサラダはあんまり好きじゃないかな。 

 身体の為に食べるけど、たくさんは食べたくないよ」


「はい、サラダは少し食べれば良いようにくふうさせていただきますね」

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