第8話:初冒険・佐藤克也視点
「イワナガヒメ、まだお城にいなければいけないの?」
誰よりも僕の側にいてくれる白くて大きな犬のお供に聞いてみた。
「お城の中は退屈ですか?」
「うん、退屈だよ、これじゃあ日本の病院と同じだよ。
せっかく異世界に来られたのに、外に出られないの?」
「出られますよ、克也様が望まれるのでしたら、どこにでも行けます」
「でも、この前は、出て行ったら王都の人たちが困ると言っていたよね?」
「あの時はまだ王都の外にたくさんの魔獣がいました。
魔獣を皆殺しにしないと、王都の人たちが外に出られませんでした。
ですが今は、お供の者たちが王都の外の魔獣を皆殺しにしました。
今なら出て行ってもだいじょうぶです、ご安心ください」
「この国を治めていた王様は悪い奴なんでしょうか?
僕が出て行ってもだいじょうぶ、王都に住む人たちが困らない?」
「克也様が王都の人たちを心配されるのでしたら、誰か残しましょう。
お供の1人を王都に残して、克也様の代わりに国を治めさせましょう」
「それで王都の人々が幸せになれるの?」
「はい、幸せになれます」
「だったら今直ぐ冒険に行きたい、アニメで観た勇者のように冒険したい!」
「はい、お供させていただきます」
白くて大きな犬の姿をしたお供、イワナガヒメがそう言ってくれるので、僕は安心して冒険に行く事ができた。
ゴリラのような大きな金色の猿が、城に残ってくれることになりました。
もの凄く強そうな子で、実際王都の外にいた魔獣を皆殺しにしてくれました。
そんなワクムスビが残ってくれると言うので、安心して冒険に行けました。
★★★★★★
「イワナガヒメ、あそこにいるのはスライムだよね、たおしても良いのかな?」
「スライムは数が多くて命の等級も低いですから、たおしてもだいじょうぶでございます、ご安心ください」
「やった!」
王都を出て直ぐに冒険を始めたかったけど、残念ながらできませんでした。
王都の周りにいた魔獣は、全部お供が殺していました。
見落としがいるかと思いましたが、絶対にいないと言われました
お供たちが断言するので信じました。
僕を異世界に連れて来てくれたお供を信じなくて、誰を信じるのですか?
悪い王様が連れてきたと言っていましたが、信じません。
お供の者たちに簡単に捕らえられるような王様に、異世界召喚はできません。
きっとお供の者たちがやってくれたのです、間違いありません。
心臓を治して痛みを無くしてくれたお供たちを信じるのは当然です!
僕はお供たちに案内されて魔境まで来たのです。
魔境には人々を苦しめる魔獣がいるのです。
僕がたおしてもいい、悪い魔獣がたくさんいるのです!
「やあああああ」
タブレットで観ていたアニメでは、1番弱い魔獣がスライムでした。
そんなスライムをたおすのにも、お供たちに守られながらです。
両親や祖父母に守られる小さな子供のようで、恥ずかしいです。
でも、実際僕は赤ちゃんと変わりません。
ずっと病院にいた僕は、タブレットで観た事しか知りません。
しかもここは日本ではなく異世界です。
お供たちの力で転生する事ができた、全く知らない異世界なのです。
お供たちが見守ると言うなら、黙って見守られるしかありません。
それに、見守られている恥かしさなんて、直ぐに忘れました。
生れて初めて自由に思いっきり身体が動かせるのです。
心臓が痛くなく、胸が苦しくもないのです。
僕が夢中になってしまうのもしかたがないでしょう?
目に付くスライムをひたすら追い回して、剣で斬り続けてしまいました!
ふと気が付くと、周りが薄暗くなっていました。
周りが薄暗くなったのは、僕の集中が切れたからかもしれません。
手足が重く痛くなってきたから、暗くなったのが分かったのかもしれません。
「克也様、おもしろかったですか?」
「おもしろかった、もの凄くおもしろかった!
熱中して時間が経つのを忘れていた。
手足が重くて痛いけれど、これが筋肉痛なの?」
「はい、それが筋肉痛でございます。
この世界に来る事で、丈夫な身体に創りかえられましたが、これだけ動かれたら、強くなるための痛みが身体中に起こります。
魔術を使って身体が痛まないようにできますが、どうなされますか?」
「筋肉痛になりたい、前の身体ではなれなかった、筋肉痛になりたい!」
「分かりました、そう申されるのでしたら、治癒魔術は使いません。
ですが、生まれて初めての筋肉痛でございます。
我慢できないくらい痛かったら言ってください、治癒魔術を使います」
「ありがとう、我慢できないくらい痛かったら言うよ」
「はい、遠慮せず申されてください。
筋肉痛の話はそれで好いとして、食事の方はいかがいたしましょうか?」
「いかがするって?」
「食べたい物を言ってくだされば、何でもご用意いたします」
「何でもいいよ、以前と違って何でもおいしいんだ。
日本の病院で食べていたご飯は全然美味しくなかったけれど、この世界に来てから食べるご飯は、どれも全部美味しいんだ。
イワナガヒメたちが作ってくれるご飯は何でも美味しいから、何でも好いよ」
「そう言っていただけるのは光栄ですが、何が食べたいか言ってくださる方が、作る方は楽なのです、何かありませんか?」
「何かって言われても、何も分からないよ」
「魚か肉か、どちらが良いか言ってくださるだけでも助かります」
「イワナガヒメたちが作ってくれるご飯は魚でも肉でも何でも美味しかったよ。
でも、僕が決めた方が良いのなら決めるよ。
そうだな、多い方、持っている魚と肉、多い方で作ってよ」
「分かりました、肉の方が多いので肉で作らせていただきます」
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