第25話 死神と死神

 リリーが輪廻の輪に加わって、しばらくした後、セイとミコトは、再び魔導列車に乗車していた。


「ねぇ、セイ。あたしが死んだ理由を聞きたい?」


 どこか悲しげな表情で、ミコトがポツリと呟く。

 ミコトの身体はわずかに震えていた。


 生前の記憶。

 それは恐らく苦悩の記憶だ。


 自死を選んだミコトにとって、生前のそれは、二度と思い出したくない、地獄のような辛い過去だったであろう。


 しかし、今ミコトは、自分の全てをセイに打ち明けようとしていた。


「…………!」


 恐怖に怯えながら、それを口にしようとするミコト。

 そんな彼女を、セイは、優しく抱き締める。


「ウツシヨでは、ミコトはタシかにシんだかもしれない。でも、カクリヨでは、こうしてボクのヨコでイきている。イマサラ、シんだリユウなんて、キきたくない。ボクにとって、ミコトはタイセツなヒトだ。スキなんてコトバではカタりツくせないヒトだ。そんなヒトのカナしいカオなんて、もうこれイジョウミたくない……!」


 セイはミコトを強く強く抱き締める。


「ミコト、キミはイマ、ボクのスベてだ……!」

「ありがとう、セイ。あたしの全ても、今やアナタだけよ……!」


 二人は互いに見つめ合うと、どちらからともなく、優しく口づけを交わした。


 ガタンゴトン。

 ガタンゴトン。


 あたりに小さく木霊する、穏やかで柔らかな走行音。

 天高く舞い上がった魔導列車は、二人を祝福するかのように、温かな薔薇色の輝きを発するのであった。

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