第23話 家族の絆
そうして、時日は流れる。
今日はお弁当を持って、三人でピクニックの日だ。
時間の概念があまりない幽世だが、一応朝と夜はあるので、三人はそれで時日を把握していた。
この世界に来て、どれほどの時間が流れたか――、三人は既にもう分からなくなっていたが、たった一つだけ――はっきりと分かることがあった。
それは、三人のあいだに生まれた〝家族の絆〟である。
今、三人は手を繋いでいるが、その光景は、まるで本当の家族のようであった。
「セイママ……! ミコトママ……!」
リリーがセイとミコトの名前を呼ぶ。
少し前から、彼女は――、二人をママと呼ぶようになっていた。
二人はママと呼ばれることに、最初は照れていたが、今ではもうすっかりと受け入れてしまっている。
「コラ、リリー! あんまりはしゃがない!」
ミコトははしゃぐリリーを
「アハハハ! コドモはゲンキなホウがいいよ、ミコト」
落ち込んだように、しゅんとしていたリリーだったが、セイに『キにしないキにしない』と言われ、さっきまでの元気を取り戻す。
「セイママ……、好き……!」
「ありがとう、リリー」
「もう! アナタって、ホントリリーに甘いんだから!」
「だって、カワイいんだから、シカタないじゃない」
「そんなことだから、リリーがこんなお転婆娘に育っちゃったのよ!」
「まぁまぁ、そうカッカしないで。それよりも、ホラ。モクテキのバショにツいたよ」
三人が行き着いた先、
そこは見晴らしの良い原っぱだった。
中心には一本の巨木がそびえ立っている。
今回のピクニックは、此処でおにぎりを食べることが目的だ。
リリーは大喜びで、巨木の下まで駆け出すと、セイとミコトを大きく手招きした。
「早く……! 早く……!」
「今、行くわ。ちょっと待ってなさい」
「リリーはホントゲンキだなぁ」
子供の元気には敵わない。
ここにきて、一人ごちるセイであったが、ミコトも横で、『右に同じ』と言った。
しばらくして、巨木の下まで行くと、ミコトは、持っていた風呂敷から、おにぎりを取り出す。
三人は『いただきます』を言うと、仲良く同時に、おにぎりを頬張り始めるのであった。
「こうして、三人で最初に食べたご飯もおにぎりだったよね……」
「そう言えば、そうね。あれから、長い時間が経ったわ」
「リリーとのヒビをオモいカエしてみると、いつもタえずワラっていたキがするよ。ジンセイがこんなにもタノしいものだったなんて、リリーとデアわなければ、タブンボクは、ずっとワからないままだったかもしれない」
「わたしも、セイママとミコトママと一緒にいれて、凄く幸せだよ……!」
そう言って、リリーは破顔一笑する。
「セイママもミコトママも大好き……!!」
「「これからもよろしくね、リリー」」
三人は幸せそうに笑い合うと、そのまま原っぱに寝転ぶのであった。
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