第18話 セイとメイ

 再び目を覚ますと、そこは魔導列車の中だった。


「セイ、ありがとう! 本当にありがとう……!」


 メイは泣きながら、ありがとうを何度も繰り返す。

 ミコトは何も言わず、セイを抱き締めた。


「カミサマ! タブン、ミているよね?」


 ここにきて、セイは再び神に呼び掛ける。

 すると、何もない空間から、カバネの姿をした神が現れた。


「わたくしにはやっぱりこの姿が似合いますわね。うふふふ」


 神が現れたことにより、ミコトは引っ繰り返って驚く。


「ちょっ! ちょっと! あたしたちの前に姿を現しても大丈夫なの!?」

「少しなら大丈夫ですわ」


 重苦しい雰囲気の中、セイがゆっくりと口を開く。


「カミサマ、ボクをシニガミにしてください」

「えっ!?」


 それを聞いたメイは、目を丸くする。


「それは何故ですの?」

「ボクはホケンジョでサツショブンされるところをメイにスクわれた。だから、コンドはボクがメイをスクってあげたい」


 セイは決意の眼差しで神に告げる。


「ボクがシニガミになるから、メイのウまれカわりをリョウショウしてください」

「あなたは天国に行ける身。それでも死神になりたいというんですの?」


 間を置かず、即答で、『はい』と答えるセイ。

 神は深く考え出すと、しばらくしたのち、悲しそうな笑顔で、それを了承した。


「なに勝手に決めてるのよ! わたしは生まれ変わったりなんかしないわよ! わたしは自死を選んで、セイを苦しめた! それなのにわたしだけが生まれ変わって、セイが死神になるなんて! わたしは絶対に認めない!」


 納得が行かず、騒ぎ立てるメイに、セイはこう言った。


「メイ。キミはタシかにボクをスクってくれて、シアワせにしてくれた。だから、コンドはキミがシアワせになって」


 セイはメイに向かって破顔一笑する。

 神はメイを生まれ変わらせる為、その至上の力を行使した。


 メイの身体が段々と半透明になって行く。

 それは現世への生まれ変わりを意味していた。


 大泣きするメイの横で、ミコトがふて腐れたように、口を開く。


「まさかアナタに先を越されるなんてね。でも、安心して。セイの初めては、あたしが先を越すから」

「は? 貴方、いったい何を言ってるの!? セイ! ミコトには気を付けて!」


 突如として不穏な一言を発するミコト。


 が、


「セイのことはあたしに任せて」


 そこまで言って、ミコトは泣き笑いする。


「……ミコト! ありがとう! セイのことをよろしく頼むわね」


 さっきまでの喧嘩腰はどこへやら、メイもミコトに泣き笑いをしていた。


「神様、あの時は平手打ちして、ごめんなさい……」


 神は気にしていない様子で、にこやかに笑い、ひらひらと花のように手を振った。

 セイとメイは見つめ合う。


「あのね、セイ。貴方とわたしの名前には由来があるの……」

「それはナニ?」

「〝セイ〟と〝メイ〟は、二つで一つ。生命いのちの輝きがまたどこかで繋がりますように、よ」


 セイはメイを抱き締める。

 メイもセイを抱き締める。


 そして、メイは輪廻の輪へと加わって行く。


 やがて、メイの姿が完全に消えると、神はセイの方に視線を投げ掛けた。


「……またアえるよね?」

「うふふふ。ええ、わたくしはいつでもセイの傍にいますわよ。だって、それがわたくし〝カバネ〟でありますもの」


 神はセイにウインクをすると、『またね』と言って、姿を消した。


 セイとミコトは、手を繋ぐと、いつまでも、メイがいたところを眺めるのであった。

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