第17話 正体
幽世が正常に戻った後、セイとメイとミコトの三人は、魔導列車に乗車していた。
ルシフェルとは神の間で別れ、今は三人で、狭間世界を走行中だ。
今、メイとセイは、無言で顔を見合わせている。
最初に口を開いたのはメイからであった。
「セイ、貴方には生きることも死ぬことも許されている。これから、貴方はどうしたい?」
「……ボクは」
セイには既に生前の記憶が蘇っていた。
自分が何者で、メイとどういう関係だったのかも、今はみんな知っている。
少し間を置いて、セイはこう言った。
「ボクは、ゲンセにカエっても、タブン、シはマヌガれないとオモう……。でも……」
「でも……?」
「ボクはゲンセにカエりたい。ナゼなら、ボクにはやらなきゃイけないことがあるから」
時が止まったかのような静寂。
しばらくして、メイが涙を流した。
「ごめんなさい。どうかあの人たちを救ってください……」
セイはにこやかに、それを了承する。
ミコトには何が何やらさっぱりだった。
「ボクはキミにスクわれた。だから、コンドはボクがキミをスクわなきゃ」
そして、セイは魔導列車に乗って、現世へと帰って行った。
セイが目を覚ますと、そこは〝犬小屋〟であった。
彼女は今、飼い主から食事を与えられず、餓死寸前であった。
「くぅうん……」
声を出したい。
そう思い、喉を振り絞るが、声が出ない。
それもそのはず、セイは食事どころか、水分すらまともに与えられていなかった。
お腹の肉は背中の皮とくっ付きそうで、息をするのも最早苦しい。
そんな中、飼い主の家の中では、強盗が押し入っていた。
セイの飼い主、言い換えれば、メイの両親は、今まさに強盗に殺される寸前であった。
強盗はメイの両親を殺そうと、今その凶刃を振り下ろそうとしている。
しかし、突如としてガラスを突き破る音がした。
ガラスを突き破った者の正体はセイであった。
「……ウゥウウウ!!」
か細い声を上げながら、セイは強盗の足に思いっ切り噛み付いた。
食い込む牙。
飛び散る鮮血。
強盗はたまらず、足を引きずって、その場から逃走した。
最後の命を燃やしたセイは、メイの両親に看取られ、その生涯をここに閉じた。
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