第15話 神様の不在

「「「ここは?」」」


 扉の中は、殺風景な光景が広がった。

 至るところが純白に包まれた真っ白い空間。

 神が住まう聖域サンクチュアリィを、通称〝神の間〟という。


「姉者!」


 ルシフェルが視線を向けたその先には、上位三隊の熾天使、階級第一位のセラフィムがいた。


「お前は?」


 ルシフェルを見たセラフィムは驚いた顔を見せる。

 セラフィムは、神の間にいる為か、狂った様子がなかった。


 銀色の体。

 金色に輝く羽。

 その姿は、セイが最初に見た天使と同じであった。


「お前たち! いったいどうやって此処に来た!? 此処は神の間であるぞ! 此処は神の他に、私しか存在を許されない場所だ!」

「へ? 此処にはアナタが呼んでくれたんじゃないの?」


 ミコトはポカンとする。


「人間と死神、それと堕天使にカバネまで侵入するとは! 無礼者が! 私が手討ちにしてくれる!」


 セラフィムの周囲に、光り輝く、無数の剣が浮かび上がる。


「ま、待ってくれ、姉者! 私たちの話を聞いてくれ!」

「下賤な者たちの言うことなど聞かぬ! 私のソード・ハリケーンで無に還してくれるわ!」


 そして、無数の剣がセイたちに放たれようとしたその時、


「カ、カミサマ! さっきとオナじように、ボクたちをタスけてください!」


 セイは再び、神様に祈り始める。

 すると、


「おい、そこのお前。今、なんと言った?」


 突如セラフィムの様子がガラリと変わった。


「えっ? カミサマ助けてくださいって……」

「神は今、ご不在だ。それなのに、何故お前たちを救ってやれる……!」

「で、でも、ボクたち……!」

「姉者! 姉者も幽世が狂ってしまったことは知っているだろう!? 神は今、いったいどうしておられるのだ!?」

「今言ったであろう。神はご不在中だ……」

「何を馬鹿なことを言っておられる! 神が不在中などと、そんなデタラメ信じられるか!」

「嘘など言っていない! 本当のことなのだ! 今までにこんなことなど一度もなかった! 私自身、今でも何が起きているのか、よく分かっておらぬのだ!」


 セラフィムは焦った様子で、ルシフェルにまくし立てる。


「幽世が狂ってしまったのは、神がおかしくなってしまったからだ! 何かが神を狂わせてしまった!」


 驚愕の事実を知り、四人は、慌てふためき狼狽える。


「神様の居場所に心当たりはあるの?」


 メイが不安げに尋ねる。


「すまんが、何も分からぬのだ……」


 セラフィムから返ってきた言葉は、メイに絶望をもたらせた。

 セイとミコトは、開いた口が塞がらないというやつだった。


「このままでは、幽世も現世も大混乱が起きてしまう……!」


 半ばパニック状態で、セラフィムは言った。

 セイたちは、思わず愕然とする。

 階級第一位の天使が慌てふためくこの状況に、セイたちはただただ絶望するしかなかった。


 そんな中、

 カバネが口を開く。


「もうそろそろわたくしでいる時間も終わりのようですわね」

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