第40話 なんだかんだ蘇生
「竜胆、俺はな、食べ物を粗末にする奴が一番嫌いなんだ!!!」
「ご、ごめんなさい!……い、いやっ、人の心臓は食べ物じゃないだろ!?!?」
「はぁ!? そんな好き嫌いばっかしてるからお前ら強くなれないんだ! 血肉に変えられるものは全部食べるんだよ!! ほら!!」
「いやだから無理……おええええっ!?!?!?」
もう一度竜胆の口に心臓を突っ込むと、竜胆は一度頑張って噛もうとしたが、再び心臓を自分の
「もう!!!」
俺は悔しさのあまり子供のように地団駄を踏んでしまった。
”なんですか、これ(困惑)”
”これはひどい”
”偽善者ニキの悪いとこが出てるなこれwww”
”まぁ、今二階堂は魔物だから、食人にはならないし(震え声)”
”そういう問題か?”
”てかこれ普通に何よりの加害じゃね? 竜胆訴えたら勝てるぞ”
”竜胆もなんで頑張って食べようとしてんのよ……?”
”¥78800 竜胆の嘔吐を見せてくれてありがとう”
”¥78800 新たな自分を見つけられました。インドに行く必要なんてなかったんだな。ありがとう”
”¥78800 その新たな自分、もしかしたら見つけないほうがよかったやつかも……”
”おい、そんなこと言ってる場合じゃねぇ! 二階堂まだ生きてんだぞ!!”
”でもめっちゃ苦しんでね!?”
”そりゃ(自分の心臓咀嚼されたら)そうよ”
”あれ、さくらちゃんどこ行った!?”
”逃げやがったのか……!?”
”おい、地上に出たんじゃねぇか!?”
”いや、俺見てたけど、ダンジョンの奥の方に逃げてったぞ”
”それなら最悪の結果ではないか……今後のために捕獲できたら最高だったけど”
「……彼は、死んだ、のか?」
竜胆は、恐る恐る、二階堂の方を伺う。二階堂はというと、一度デカい悲鳴をあげた後、ぴくりとも動かなくなっていた。
「いや、まだ心臓自体は潰れていないから死んじゃいないんじゃないか? お前の咀嚼でかなりダメージを負ったんだろ」
「……それなら、なんとか治せないか?」
「えぇ?」
意外な言葉に首を傾げると、竜胆は慌てた様子で続けた。
「いや、その、二階堂くんのため、ではなくてだな……君のため、というか」
「んん?」
「……君に、殺してほしくないんだ」
「え、ああ……いや、あいつはすでに魔物だから、殺してもなんら問題ないと思うぞ?」
「でも、元は人間じゃないか……」
”おいおい、何を言い出してんだ”
”竜胆、それは流石に……”
”その優しさが誰かを傷つける可能性をもうちょっと考えたほうがいい”
”ほんまそれ。生かした二階堂が誰かを殺した時、竜胆は責任とれんのかよ”
「いや、そうだな、すまない、忘れてくれ」
俺が戸惑っていると、竜胆はあっさりと引き下がった。コメント欄を見ても、どう考えても俺の方が一般的だ。
しかし、こいつのおかげで、俺は反抗期を迎えていることを自覚できたわけだし、こいつの言葉を無視するのも勿体無いかもしれないな。
「あっ!」
その時、俺はものすごく肝心なことを思い出し、やはり竜胆の言葉は聞いて帆いたほうがいいんだなと再確認した。
「竜胆! 心臓貸せ!」
「え? あ、はい」
差し出された心臓を受け取ると、俺は苦しむ二階堂の元へと行き、胸に心臓を突っ込んだ。
「二階堂、しっかりしろ!!」
そして、覚えたての回復魔法を全力でかける。
”は?”
”え?”
”おい”
”偽善者ニキなにやってんの?”
”おい、回復魔法かけてないか?”
”はぁ!?”
”何してんだよ!?!?”
”おい、二階堂は人を殺そうとしたんだぞ!?!? なんで生かそうとしてんだよ!?!?!?”
”ひとまず魔物だしな。治す意味がわからん!!”
”¥78800 お願いやめて!”
”¥78800 偽善者ニキ!! ストップ!!”
”¥78800 マジでいくらでも払うからやめてくれ!!”
”¥78800 やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!!”
新たな人生の目的が明確になったことにより、今までの目的、つまりは金を稼ぐことと、比較することが容易になった。
結果、俺の第一目標は、金を稼ぐことに変わりなかった。やはりこの地上で、金を稼ぐことほど価値のある行為はないので、生き残る上で非常に重要な活動だからだ。
しかし、この度二位になった「ママへ反抗する」も、実際のところかなり拮抗している。三位の「いい感じにソーセージを焼く」と比べたら、相当差があるのだ。
つまり、ダンジョンで人を助け、金を稼ぐという行為は、俺の人生のトップ2の目的を同時に満たしてくれる、最高の天職ってことだ。
そう、二階堂は、その天職によって助け出した記念すべき一人目。竜胆と、今は顔すら思い出せないあの男は、客ですらなかったのでノーカンだ。
なのに、俺はまだ助けたことへの謝礼金をまだ払ってもらっていない。
せっかく天職についたってのに、その記念すべき初仕事が失敗に終わったとなっては、いわゆる黒歴史になっちゃうじゃないか!
「二階堂!! 金を払え!!!!」
俺は全力で回復魔法をかけながら叫ぶ。すると、戻した二階堂の心臓が、徐々に鼓動を始めるのを感じた。
「二階堂!!!」
俺は二階堂に往復ビンタを喰らわせる。首がボキンボキンと折れるが、その度回復魔法をかけているのでなんら問題ない。
「……う、うぅん」
すると二階堂は、呻き声を上げながら、薄目を開いた。俺はその瞼を手でぐいっと押し上げる。
「よし、二階堂、早速だが金を払え」
「……え?」
「え、じゃねぇよ!! 金を払えっつってんだ!! 助けてやっただろ!!!」
「……い、今それを言うか?!?!」
「当たり前だろ!! 払え!!!!」
俺が魔力に殺気を纏わせ威嚇すると、二階堂は「ヒェッ!?」と悲鳴を上げ、ブルブルと震え出した。
「わわわわわわかった、払う、払うから、もう勘弁してくれっ!」
「勘弁してくれ!? なんだその態度!! 俺はお前を何度も助けたんだぞ!! 感謝の言葉はどうした!!!!」
「あ、ああああああありがとうございます!!! 払わせていただきます!!!!」
「よし!!!」
俺はスッキリしたので、二階堂の瞼を離してやる。
そして続け様に、こんな提案をした。
「お前、俺と配信チャンネルをヤらないか?」
「……はぁ!?」
”は?”
”は?”
”は?”
”は?”
”は?”
”は?”
”は?”
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます